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70.料理は火加減
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マティスは近くに馬車置き場があるというので行ってしまったが、残りのメンバーは全員お店に入った。
確かに中にいた客は、店主の父親世代の男性ばかりだった。
そしてテーブルに並んでいる料理が視界に入って二度見した。
明らかにヘタだ。
「え? どうしてこの腕前でお店を継ごうと思ったの?」
思わず心の声が漏れてしまった。
ぶっちゃけ子供が作った料理にしか見えない。
家庭科の調理実習の方が上手に作れているというものだ。
「なんだとっ!? そこの猩猩獣人だけじゃなく、お前までバカにするのか!?」
「いやいや、これがお店で出てきたら怒るレベルだからね!?」
「ふふっ、サキは酷い女だな。さすがの俺もそこまでは思ってなかったのに」
アルフォンスが前髪を掻き上げながら言った。
だって、テーブルにあるのはベーコンと目玉焼きにパン。
店内にパンの香りはしないから、恐らく他の店から購入したものだろう。
それはいいとして、問題はベーコンと目玉焼きだ。
まずベーコンは普通に焦げている、恐らく両面。
目玉焼きはフチが黒いから裏側は焦げているだろう、それなのに上は半透明というか、部分的に透明だ。
極めつけが人によっては最初から卵黄が破れていたと思われる。
なぜなら流れた状態で固まっているから。
「えぇ……、むしろ今お店に来てくれてる人達が優し過ぎるんだと思うよ。奥さんが作った方が絶対上手で美味しいでしょ?」
同意を求めて店内にいた五人の男性の方を見ると、なぜか泣き出した。
なんで!?
「あ~あ、親父の友達は皆結婚してないか、奥さんに逃げられてんだぞ。自分で作るのが嫌だからウチに来てるんだ」
まさかの理由だった。
「ああ~もう! わかったよ! せめて目玉焼きくらいまともに作れるように教えるから! 大体焼く時に火が強すぎるんだよ、だから表面だけ焦げて中に火が通ってないの!」
「えぇっ!? そうなのか!?」
むしろなぜそれくらい知らずに店を継ごうとしたのか不思議だ。
厨房に移動して、簡単に目玉焼きのレクチャーをする。
「表面が白くなるのが嫌なら、フタをせずじっくり弱火でね。白くなってもいいなら、中火で水を入れたらフタをして少ししたら火を止めて予熱で火を通すの。でもお店で出すなら白くならない方が見た目的に綺麗だよね。ベーコンも表面だけ焼き色付けたら弱火でいいし」
「おおぉ……!!」
最初に作った三人分をお皿に載せて出すと、店主だけでなく父親の友人達までもが完成品を見て感動している。
「こんな美しい目玉焼きは初めてだ!」
「あと二十年若ければ求婚したのに……!」
そんな褒め殺しをされていると、マティスが店に入って来た。
「いったいどうなっているんだ?」
首をかしげるマティスに、さっきまでのやり取りを説明した。
そしてオーギュストから補足説明が入る。
「この国全体で料理の見た目にこだわらない風潮があるからだろう。それに料理をするのが苦手な人が多いしな。さっき彼らに聞いたが、来なくなった常連は先代目当ての女性達ばかりだったらしい。だからこの国ではサキみたいな料理上手は気を付けないといけないよ」
ほんの数時間移動しただけでこんなに文化が違うとは。
どうやら異世界には私の知らない法則があるらしい。
なにはともあれ、店主がアルフォンスが言った事に納得してくれたので騒ぎにならずに済んだようだ。
後日、その店で私は『美しい目玉焼きの人』と何度も話題に上る事になるとは思わなかったけど。
◇ ◇ ◇
という事で、正解は目玉焼きでした!
確かに中にいた客は、店主の父親世代の男性ばかりだった。
そしてテーブルに並んでいる料理が視界に入って二度見した。
明らかにヘタだ。
「え? どうしてこの腕前でお店を継ごうと思ったの?」
思わず心の声が漏れてしまった。
ぶっちゃけ子供が作った料理にしか見えない。
家庭科の調理実習の方が上手に作れているというものだ。
「なんだとっ!? そこの猩猩獣人だけじゃなく、お前までバカにするのか!?」
「いやいや、これがお店で出てきたら怒るレベルだからね!?」
「ふふっ、サキは酷い女だな。さすがの俺もそこまでは思ってなかったのに」
アルフォンスが前髪を掻き上げながら言った。
だって、テーブルにあるのはベーコンと目玉焼きにパン。
店内にパンの香りはしないから、恐らく他の店から購入したものだろう。
それはいいとして、問題はベーコンと目玉焼きだ。
まずベーコンは普通に焦げている、恐らく両面。
目玉焼きはフチが黒いから裏側は焦げているだろう、それなのに上は半透明というか、部分的に透明だ。
極めつけが人によっては最初から卵黄が破れていたと思われる。
なぜなら流れた状態で固まっているから。
「えぇ……、むしろ今お店に来てくれてる人達が優し過ぎるんだと思うよ。奥さんが作った方が絶対上手で美味しいでしょ?」
同意を求めて店内にいた五人の男性の方を見ると、なぜか泣き出した。
なんで!?
「あ~あ、親父の友達は皆結婚してないか、奥さんに逃げられてんだぞ。自分で作るのが嫌だからウチに来てるんだ」
まさかの理由だった。
「ああ~もう! わかったよ! せめて目玉焼きくらいまともに作れるように教えるから! 大体焼く時に火が強すぎるんだよ、だから表面だけ焦げて中に火が通ってないの!」
「えぇっ!? そうなのか!?」
むしろなぜそれくらい知らずに店を継ごうとしたのか不思議だ。
厨房に移動して、簡単に目玉焼きのレクチャーをする。
「表面が白くなるのが嫌なら、フタをせずじっくり弱火でね。白くなってもいいなら、中火で水を入れたらフタをして少ししたら火を止めて予熱で火を通すの。でもお店で出すなら白くならない方が見た目的に綺麗だよね。ベーコンも表面だけ焼き色付けたら弱火でいいし」
「おおぉ……!!」
最初に作った三人分をお皿に載せて出すと、店主だけでなく父親の友人達までもが完成品を見て感動している。
「こんな美しい目玉焼きは初めてだ!」
「あと二十年若ければ求婚したのに……!」
そんな褒め殺しをされていると、マティスが店に入って来た。
「いったいどうなっているんだ?」
首をかしげるマティスに、さっきまでのやり取りを説明した。
そしてオーギュストから補足説明が入る。
「この国全体で料理の見た目にこだわらない風潮があるからだろう。それに料理をするのが苦手な人が多いしな。さっき彼らに聞いたが、来なくなった常連は先代目当ての女性達ばかりだったらしい。だからこの国ではサキみたいな料理上手は気を付けないといけないよ」
ほんの数時間移動しただけでこんなに文化が違うとは。
どうやら異世界には私の知らない法則があるらしい。
なにはともあれ、店主がアルフォンスが言った事に納得してくれたので騒ぎにならずに済んだようだ。
後日、その店で私は『美しい目玉焼きの人』と何度も話題に上る事になるとは思わなかったけど。
◇ ◇ ◇
という事で、正解は目玉焼きでした!
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