【完結】俺様フェンリルの飼い主になりました。異世界の命運は私次第!?

酒本 アズサ

文字の大きさ
上 下
56 / 109

56.国外脱出に向けて

しおりを挟む
 ゴトゴトと石畳の上を走る荷馬車、いつもと違うのは荷台がツボなどの壊れ物専用に変わっている。
 王都で貴族が使うような、向かい合わせの座席の馬車に買い替えようという話も出たが、人数的に荷馬車の方が融通ゆうずうがきくのでサスペンションのきいた高級荷台に交換したのだ。


 どうして買い替えたかというと、このまま国外へ出る事が決定したから。
 一度集落に戻ろうかという意見もあったけど、貴族や神殿の関係者が待ち構えている可能性があったので却下された。


 寝袋を敷いて更に快適になった荷台でやっているのは、私の魔法の訓練である。
 今習っているのは空間収納、フェンリルであるアーサーはその身ひとつでどこにでも順応できるから使わないので覚えてないが、やり方は知っているというので教わって練習しているのである。


「やっぱりオイラには無理だー!」


「僕も無理」


「空間収納は高位魔法に分類されるからね、普通はできなくて当然さ。適性と繊細な魔力操作が必要らしいから」


 アーサーの話している事がわかる双子も一緒に挑戦していたが、二人はどうやらギブアップしたらしい。
 オーギュストが諦めた二人を慰めている。
 私は何となく感覚がわかりかけていて……。


「あっ、入った!」


「「「「えっ!?」」」」


 私の言葉に荷台にいた皆が驚きの声を上げた。
 練習に使っていたタオルが収納できたのだ。


『ふふん、我と契約している上、創造神から茶をもらったと言っていたからな。今の主であればどんな高位魔法も使いこなせるだろう』


「ふぉぉ……! 私、チートを手に入れちゃった!? でも、あんまりたくさんは入らないみたい」


『当然だ。熟練度が上がらねば空間は広がらぬからな。使っていれば段々要領がつかめてくるはずだ』


「すごいね、サキ! 容量が大きくなったら、食料とか大きい町でまとめて買ったりできるんじゃない!? そうすれば変な村に泊まらずにすむね! オイラ達はともかく、サキは可愛いから心配だよ」


「変な村?」


「うん、たまに小さい村全体で人をさらって、奴隷商人に売るようなところもあるらしいから。アーサーがいれば感情がわかるし、そういうところに引っかかる事はないと思うけど知っておいてね」


「ん、町や村によって治安が全然違う」


「へぇ、わかった、気を付けるよ」


 というか、奴隷がいる事にびっくりだ。
 これまで奴隷らしき人を見た事がなかったし。


「サキなら攻撃魔法も使えるから大丈夫だろう。話していた魔力封じの魔法陣なんてものは、それこそ王城や由緒ある神殿にしか残ってないだろうから」


 少し二人の話を聞いて不安になったが、オーギュストの説明でちょっと安心できた。
 確かに魔力を封じられさえしなければ、私一人でも並みの冒険者や魔法使いなら撃退できそうだもんね。


「今日はあの町で宿泊しよう」


 御者席からマティスが声をかけてきた。
 前方を見るとモヨリ―よりも大きそうな町が見える。
 この国を出るまで一週間かかるらしいが、それまで何事もなければいいんだけど……。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

最強陛下の育児論〜5歳児の娘に振り回されているが、でもやっぱり可愛くて許してしまうのはどうしたらいいものか〜

楠ノ木雫
ファンタジー
 孤児院で暮らしていた女の子リンティの元へ、とある男達が訪ねてきた。その者達が所持していたものには、この国の紋章が刻まれていた。そう、この国の皇城から来た者達だった。その者達は、この国の皇女を捜しに来ていたようで、リンティを見た瞬間間違いなく彼女が皇女だと言い出した。  言い合いになってしまったが、リンティは皇城に行く事に。だが、この国の皇帝の二つ名が〝冷血の最強皇帝〟。そして、タイミング悪く首を撥ねている瞬間を目の当たりに。  こんな無慈悲の皇帝が自分の父。そんな事実が信じられないリンティ。だけど、あれ? 皇帝が、ぬいぐるみをプレゼントしてくれた?  リンティがこの城に来てから、どんどん皇帝がおかしくなっていく姿を目の当たりにする周りの者達も困惑。一体どうなっているのだろうか?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...