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46.お披露目

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 お披露目の日は、二度とごめんだと思っていた清めの泉に入らされ、その後マッサージで磨かれてゴテゴテと飾り付けられた。
 金糸に合わせてなのか、金の装飾がまるで緊箍児きんこじ……孫悟空の頭の輪のようにさいなんでくる。


 金って重いっていうけど、こんなに重いとは思わなかった!!
 首の筋トレかな?


 しかも頭だけじゃなく、付け襟ですかってくらいのネックレスまで。
 これじゃあ頭を下げたら二度と一人では上げられないと思います。
 もしかして、聖女という立場上、うっかり頭を下げさせないためのアイテムなのでは……。


『大変そうだな主。それではいつものように動けないのではないか?』


「そうだね、これで走れって言われたら即座に転びそうだよ」


「まぁまぁ、フェンリル様とお話しなさっているんですか? さすが聖女様ですね!」


 身支度を手伝ってくれている同い年くらいの女性が目をキラキラさせている。
 こういう時はどういう態度をとればいいかわからない、とりあえず愛想笑いで誤魔化しておこう。


 身支度が完成すると、手を取ってもらわないとまっすぐ歩けない状態だった。
 え、これであの大聖堂の中央まで一人で歩くの?


「どうしよう、ちゃんと歩けるか自信ないよ……」


『主、前にマティスに身体強化を教わったではないか。あれを使えば問題あるまい』


「あっ、そうか! アーサー頭いい! 『身体強化パワーブースト』……おぉ! 楽に歩ける!」


「まぁ! 身体強化は獣人が得意な魔法だと聞いていましたが、聖女様はフェンリル様と契約しているからでしょうか」


 身体強化でいきなりサクサク歩き始めた私に驚く女性。


「種族によって得意な魔法とかあるんですか?」


「そうですね、水や火種を出すような生活魔法は誰にでも使えますが、強力な魔法や属性魔法は適性がないと使えませんね。実際私は生活魔法しか使えません。攻撃魔法を使えていたら、私も冒険者になっていたかもしれませんね、うふふ」


 そっか、周りが冒険者ばかりだったから、魔法が使えるのが当たり前だと思っていたけど、考えてみたらマティス達がぶっ放す系の魔法を使っているところを見た事がない気がする。


 他にもいくつかこの世界の事を聞いていたら、大聖堂に到着してしまった。
 壇上だんじょう側の入り口に、満面の笑みのジョエル司祭が立っている。


「これはとても美しいですね、どこから見ても聖女です。君はここまででいいから皆の所へ行きなさい」


「はい、では失礼いたします」


 案内してくれた女性は、頭を下げると招待客がたくさんいる礼拝堂側の入口へ向かった。
 ジョエル司祭に差し出された手を取ると、大聖堂に足を踏み入れる。
 しばらくすると、神殿長が朗々と聖女とフェンリルを紹介すると宣言した。


「聖女様、では昨日の練習通りに」


「はい」


 身体強化のおかげで難なく中央まで歩き、壇上から礼拝堂側を見渡すと、最前列に王族、その後ろに貴族、更にその後ろには裕福な平民という感じで並んでいる。
 拍手と歓声が聞こえ、しばらく収まらないので右手を上げるとシンと静かになった。


「私がフェンリルの主として契約したサキです。昨日神の庭園にて神託を受けました。この国だけでなく、世界のためにも私達は静かに暮らします。みなもそのつもりでお願いします、ですが有事の際に必要であれば力を貸すと約束しましょう! アーサー……」


『うむ』


 身支度中に何度も練習をした宣言をし、大聖堂は再び歓声に包まれた……が。
 次の瞬間、アーサーが室内で・・・稲妻を発生させた。
 天井が高い大聖堂に光と稲妻が走る音が響き、悲鳴が上がる。


「これはフェンリルの力の一端である! この力は我々を守るであろう!」


 神殿長の言葉に、大聖堂は三度みたび歓声に包まれた。
 歓声が収まる前に、そそくさと退場する私とアーサー。
 廊下に出ると、べレニス助祭が笑顔で待っていた。


「お疲れ様です、聖女様。お疲れのところ申し訳ありませんが、王族の方の呼び出しがございますので、応接室へご案内いたします」


「……わかりました」


『嫌な予感しかせんな。いざとなれば我に任せよ』


 頼もしいアーサーの言葉に頷こうとしたけれど、頭が重かったので微笑んで応えた。
 妙に遠回りした後応接室に通されると、先ほど大聖堂にいたはずの王太子がいた。


「聖女と二人きりで話したい。お前たちは出ていろ」


「「はっ」」


 王太子の命令で出ていく騎士達。
 二人とアーサーだけになると、王太子が口を開く。


「どうだ、私のモノになる気になったか?」


 なんか昨日の妃より言い方が雑になっている。
 誰が頷くもんか。頭が重いからどうせ頷けないけど。


「何度聞かれても答えは同じです。申し訳ありませんが、お断りいたします」


 キッパリと断った瞬間、足元が赤く光る。
 視線を下に向けると、部屋の床いっぱいに魔法陣が浮かび上がっていた。
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