46 / 109
46.お披露目
しおりを挟む
お披露目の日は、二度とごめんだと思っていた清めの泉に入らされ、その後マッサージで磨かれてゴテゴテと飾り付けられた。
金糸に合わせてなのか、金の装飾がまるで緊箍児……孫悟空の頭の輪のように苛んでくる。
金って重いっていうけど、こんなに重いとは思わなかった!!
首の筋トレかな?
しかも頭だけじゃなく、付け襟ですかってくらいのネックレスまで。
これじゃあ頭を下げたら二度と一人では上げられないと思います。
もしかして、聖女という立場上、うっかり頭を下げさせないためのアイテムなのでは……。
『大変そうだな主。それではいつものように動けないのではないか?』
「そうだね、これで走れって言われたら即座に転びそうだよ」
「まぁまぁ、フェンリル様とお話しなさっているんですか? さすが聖女様ですね!」
身支度を手伝ってくれている同い年くらいの女性が目をキラキラさせている。
こういう時はどういう態度をとればいいかわからない、とりあえず愛想笑いで誤魔化しておこう。
身支度が完成すると、手を取ってもらわないとまっすぐ歩けない状態だった。
え、これであの大聖堂の中央まで一人で歩くの?
「どうしよう、ちゃんと歩けるか自信ないよ……」
『主、前にマティスに身体強化を教わったではないか。あれを使えば問題あるまい』
「あっ、そうか! アーサー頭いい! 『身体強化』……おぉ! 楽に歩ける!」
「まぁ! 身体強化は獣人が得意な魔法だと聞いていましたが、聖女様はフェンリル様と契約しているからでしょうか」
身体強化でいきなりサクサク歩き始めた私に驚く女性。
「種族によって得意な魔法とかあるんですか?」
「そうですね、水や火種を出すような生活魔法は誰にでも使えますが、強力な魔法や属性魔法は適性がないと使えませんね。実際私は生活魔法しか使えません。攻撃魔法を使えていたら、私も冒険者になっていたかもしれませんね、うふふ」
そっか、周りが冒険者ばかりだったから、魔法が使えるのが当たり前だと思っていたけど、考えてみたらマティス達がぶっ放す系の魔法を使っているところを見た事がない気がする。
他にもいくつかこの世界の事を聞いていたら、大聖堂に到着してしまった。
壇上側の入り口に、満面の笑みのジョエル司祭が立っている。
「これはとても美しいですね、どこから見ても聖女です。君はここまででいいから皆の所へ行きなさい」
「はい、では失礼いたします」
案内してくれた女性は、頭を下げると招待客がたくさんいる礼拝堂側の入口へ向かった。
ジョエル司祭に差し出された手を取ると、大聖堂に足を踏み入れる。
しばらくすると、神殿長が朗々と聖女とフェンリルを紹介すると宣言した。
「聖女様、では昨日の練習通りに」
「はい」
身体強化のおかげで難なく中央まで歩き、壇上から礼拝堂側を見渡すと、最前列に王族、その後ろに貴族、更にその後ろには裕福な平民という感じで並んでいる。
拍手と歓声が聞こえ、しばらく収まらないので右手を上げるとシンと静かになった。
「私がフェンリルの主として契約したサキです。昨日神の庭園にて神託を受けました。この国だけでなく、世界のためにも私達は静かに暮らします。皆もそのつもりでお願いします、ですが有事の際に必要であれば力を貸すと約束しましょう! アーサー……」
『うむ』
身支度中に何度も練習をした宣言をし、大聖堂は再び歓声に包まれた……が。
次の瞬間、アーサーが室内で稲妻を発生させた。
天井が高い大聖堂に光と稲妻が走る音が響き、悲鳴が上がる。
「これはフェンリルの力の一端である! この力は我々を守るであろう!」
神殿長の言葉に、大聖堂は三度歓声に包まれた。
歓声が収まる前に、そそくさと退場する私とアーサー。
廊下に出ると、べレニス助祭が笑顔で待っていた。
「お疲れ様です、聖女様。お疲れのところ申し訳ありませんが、王族の方の呼び出しがございますので、応接室へご案内いたします」
「……わかりました」
『嫌な予感しかせんな。いざとなれば我に任せよ』
頼もしいアーサーの言葉に頷こうとしたけれど、頭が重かったので微笑んで応えた。
妙に遠回りした後応接室に通されると、先ほど大聖堂にいたはずの王太子がいた。
「聖女と二人きりで話したい。お前たちは出ていろ」
「「はっ」」
王太子の命令で出ていく騎士達。
二人とアーサーだけになると、王太子が口を開く。
「どうだ、私のモノになる気になったか?」
なんか昨日の妃より言い方が雑になっている。
誰が頷くもんか。頭が重いからどうせ頷けないけど。
「何度聞かれても答えは同じです。申し訳ありませんが、お断りいたします」
キッパリと断った瞬間、足元が赤く光る。
視線を下に向けると、部屋の床いっぱいに魔法陣が浮かび上がっていた。
金糸に合わせてなのか、金の装飾がまるで緊箍児……孫悟空の頭の輪のように苛んでくる。
金って重いっていうけど、こんなに重いとは思わなかった!!
首の筋トレかな?
しかも頭だけじゃなく、付け襟ですかってくらいのネックレスまで。
これじゃあ頭を下げたら二度と一人では上げられないと思います。
もしかして、聖女という立場上、うっかり頭を下げさせないためのアイテムなのでは……。
『大変そうだな主。それではいつものように動けないのではないか?』
「そうだね、これで走れって言われたら即座に転びそうだよ」
「まぁまぁ、フェンリル様とお話しなさっているんですか? さすが聖女様ですね!」
身支度を手伝ってくれている同い年くらいの女性が目をキラキラさせている。
こういう時はどういう態度をとればいいかわからない、とりあえず愛想笑いで誤魔化しておこう。
身支度が完成すると、手を取ってもらわないとまっすぐ歩けない状態だった。
え、これであの大聖堂の中央まで一人で歩くの?
「どうしよう、ちゃんと歩けるか自信ないよ……」
『主、前にマティスに身体強化を教わったではないか。あれを使えば問題あるまい』
「あっ、そうか! アーサー頭いい! 『身体強化』……おぉ! 楽に歩ける!」
「まぁ! 身体強化は獣人が得意な魔法だと聞いていましたが、聖女様はフェンリル様と契約しているからでしょうか」
身体強化でいきなりサクサク歩き始めた私に驚く女性。
「種族によって得意な魔法とかあるんですか?」
「そうですね、水や火種を出すような生活魔法は誰にでも使えますが、強力な魔法や属性魔法は適性がないと使えませんね。実際私は生活魔法しか使えません。攻撃魔法を使えていたら、私も冒険者になっていたかもしれませんね、うふふ」
そっか、周りが冒険者ばかりだったから、魔法が使えるのが当たり前だと思っていたけど、考えてみたらマティス達がぶっ放す系の魔法を使っているところを見た事がない気がする。
他にもいくつかこの世界の事を聞いていたら、大聖堂に到着してしまった。
壇上側の入り口に、満面の笑みのジョエル司祭が立っている。
「これはとても美しいですね、どこから見ても聖女です。君はここまででいいから皆の所へ行きなさい」
「はい、では失礼いたします」
案内してくれた女性は、頭を下げると招待客がたくさんいる礼拝堂側の入口へ向かった。
ジョエル司祭に差し出された手を取ると、大聖堂に足を踏み入れる。
しばらくすると、神殿長が朗々と聖女とフェンリルを紹介すると宣言した。
「聖女様、では昨日の練習通りに」
「はい」
身体強化のおかげで難なく中央まで歩き、壇上から礼拝堂側を見渡すと、最前列に王族、その後ろに貴族、更にその後ろには裕福な平民という感じで並んでいる。
拍手と歓声が聞こえ、しばらく収まらないので右手を上げるとシンと静かになった。
「私がフェンリルの主として契約したサキです。昨日神の庭園にて神託を受けました。この国だけでなく、世界のためにも私達は静かに暮らします。皆もそのつもりでお願いします、ですが有事の際に必要であれば力を貸すと約束しましょう! アーサー……」
『うむ』
身支度中に何度も練習をした宣言をし、大聖堂は再び歓声に包まれた……が。
次の瞬間、アーサーが室内で稲妻を発生させた。
天井が高い大聖堂に光と稲妻が走る音が響き、悲鳴が上がる。
「これはフェンリルの力の一端である! この力は我々を守るであろう!」
神殿長の言葉に、大聖堂は三度歓声に包まれた。
歓声が収まる前に、そそくさと退場する私とアーサー。
廊下に出ると、べレニス助祭が笑顔で待っていた。
「お疲れ様です、聖女様。お疲れのところ申し訳ありませんが、王族の方の呼び出しがございますので、応接室へご案内いたします」
「……わかりました」
『嫌な予感しかせんな。いざとなれば我に任せよ』
頼もしいアーサーの言葉に頷こうとしたけれど、頭が重かったので微笑んで応えた。
妙に遠回りした後応接室に通されると、先ほど大聖堂にいたはずの王太子がいた。
「聖女と二人きりで話したい。お前たちは出ていろ」
「「はっ」」
王太子の命令で出ていく騎士達。
二人とアーサーだけになると、王太子が口を開く。
「どうだ、私のモノになる気になったか?」
なんか昨日の妃より言い方が雑になっている。
誰が頷くもんか。頭が重いからどうせ頷けないけど。
「何度聞かれても答えは同じです。申し訳ありませんが、お断りいたします」
キッパリと断った瞬間、足元が赤く光る。
視線を下に向けると、部屋の床いっぱいに魔法陣が浮かび上がっていた。
11
お気に入りに追加
935
あなたにおすすめの小説
ただ貴方の傍にいたい〜醜いイケメン騎士と異世界の稀人
花野はる
恋愛
日本で暮らす相川花純は、成人の思い出として、振袖姿を残そうと写真館へやって来た。
そこで着飾り、いざ撮影室へ足を踏み入れたら異世界へ転移した。
森の中で困っていると、仮面の騎士が助けてくれた。その騎士は騎士団の団長様で、すごく素敵なのに醜くて仮面を被っていると言う。
孤独な騎士と異世界でひとりぼっちになった花純の一途な恋愛ストーリー。
初投稿です。よろしくお願いします。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
パワハラで人間に絶望したサラリーマン人間を辞め異世界で猫の子に転生【賢者猫無双】(※タイトル変更-旧題「天邪鬼な賢者猫、異世界を掻き回す」)
田中寿郎
ファンタジー
俺は自由に生きるにゃ!もう誰かの顔色を伺いながら生きるのはやめにゃ!
何者にも縛られず自由に生きたい! パワハラで人間に絶望したサラリーマンが異世界で無敵の猫に転生し、人と関わらないスローライフを目指すが…。
自由を愛し、命令されると逆に反発したくなる天邪鬼な性格の賢者猫が世界を掻き回す。
不定期更新
※ちょっと特殊なハイブリット型の戯曲風(台本風)の書き方をしています。
視点の切り替えに記号を用いています
■名前で始まる段落:名前の人物の視点。視点の主のセリフには名前が入りません
◆場所または名前:第三者視点表記
●場所:場所(シーン)の切り替え(視点はそこまでの継続)
カクヨムで先行公開
https://kakuyomu.jp/works/16818023212593380057
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる