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40.待遇の確認
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食後にマティス達と話そうとしたら、さりげなく案内の女性に止められた。
しかしジョエル司祭には話を通してあるからと、マティス達の元へ向かう。
「皆! やっと話せるね、ここで話すのもなんだから、皆が泊まる部屋で話さない? 私が泊まる部屋だと神殿関係者じゃないと入れないとか、色々面倒そうだから」
隣で案内の女性が不満そうな顔をしている気配を感じるが、皆の扱いを確認するまでは引けないのだ。
「ああ、そうだな。それにしても、とても聖女らしい衣装じゃないか。黒髪が映えて綺麗だぞ」
「うんうん! そういう恰好は初めて見たけど、すごく似合ってる!」
「ん、似合う」
「あ、ありがとう……」
マティス達が衣装を褒めてくれた、食べこぼしとかしなくてよかったと、心の底から思う。
『お前達が神殿の者達に理不尽な対応をされていないか、サキは気にしているのだ。だから泊まる場所を確認させるように』
「わかった。……いや、わかりました」
「え!? マティス、どうして言葉遣いを……?」
「これまではアーサー様がフェンリルだとすぐにバレないようにという事で、弟達に話す時と同じにしていましたが、今後は立場が公的になるならばアーサー様だけでなくサキ様に対しても言葉遣いを改めますので。リアム、ユーゴ、お前達もだぞ」
「うん……」
「ん」
マティスの言葉に双子はしょんぼりしながら頷いた。
私の隣では案内の女性が満足そうに頷いている。
「え、やだよ! 私が嫌だ! そんなの寂しいよ、だって、私達はもう家族でしょ? 家族でそんな言葉遣いするなんておかしいよ」
『お前達、主がこう言っているので、これまで通り話すがよい。我に対してもそれでよいぞ』
「「うん!」」
「わかり……わかった」
即答する双子と違い、マティスは少々気まずそうだ。
もしかして、丁寧に対応するようご両親にしつけられていたのかもしれない。
だけどもう家族として認識しちゃったから、今更敬語は使われるのは嫌だ。
「あ、ここまでの道筋は覚えたので、案内はここまでで大丈夫ですよ」
団欒を邪魔されたくなくて、案内係の女性に暗にそれを伝える。
「いえ、これが私の役目ですので」
「そうですか……」
もしかして言動を見張るように言われているのかもしれない。
内心舌打ちをしつつ、マティス達が泊まる予定の宿泊棟へと向かった。
「この建物だよ。短い間だからアルフォンス達とまとめて大部屋にしてもらったんだ」
到着したのは、石造りの神殿と違い木造の年季の入っていそうな建物。
掃除はされているようだけど、階段を上るとギシギシと不安な音を立てる。
「上ってる途中で階段抜けたりしないよね?」
「はは、冒険者が泊まる安宿もこんなものだから大丈夫だ。不安なら手を繋ぐか?」
差し出されたマティスの手を握り、双子より少し固い肉球の感触を楽しむ。
階段を上がって少し進んだ先のドアでマティスは足を止めた。
「ここだ」
「キャァァァァ!!」
マティスがドアを開けた瞬間、私の叫び声が宿泊棟に響いた。
しかしジョエル司祭には話を通してあるからと、マティス達の元へ向かう。
「皆! やっと話せるね、ここで話すのもなんだから、皆が泊まる部屋で話さない? 私が泊まる部屋だと神殿関係者じゃないと入れないとか、色々面倒そうだから」
隣で案内の女性が不満そうな顔をしている気配を感じるが、皆の扱いを確認するまでは引けないのだ。
「ああ、そうだな。それにしても、とても聖女らしい衣装じゃないか。黒髪が映えて綺麗だぞ」
「うんうん! そういう恰好は初めて見たけど、すごく似合ってる!」
「ん、似合う」
「あ、ありがとう……」
マティス達が衣装を褒めてくれた、食べこぼしとかしなくてよかったと、心の底から思う。
『お前達が神殿の者達に理不尽な対応をされていないか、サキは気にしているのだ。だから泊まる場所を確認させるように』
「わかった。……いや、わかりました」
「え!? マティス、どうして言葉遣いを……?」
「これまではアーサー様がフェンリルだとすぐにバレないようにという事で、弟達に話す時と同じにしていましたが、今後は立場が公的になるならばアーサー様だけでなくサキ様に対しても言葉遣いを改めますので。リアム、ユーゴ、お前達もだぞ」
「うん……」
「ん」
マティスの言葉に双子はしょんぼりしながら頷いた。
私の隣では案内の女性が満足そうに頷いている。
「え、やだよ! 私が嫌だ! そんなの寂しいよ、だって、私達はもう家族でしょ? 家族でそんな言葉遣いするなんておかしいよ」
『お前達、主がこう言っているので、これまで通り話すがよい。我に対してもそれでよいぞ』
「「うん!」」
「わかり……わかった」
即答する双子と違い、マティスは少々気まずそうだ。
もしかして、丁寧に対応するようご両親にしつけられていたのかもしれない。
だけどもう家族として認識しちゃったから、今更敬語は使われるのは嫌だ。
「あ、ここまでの道筋は覚えたので、案内はここまでで大丈夫ですよ」
団欒を邪魔されたくなくて、案内係の女性に暗にそれを伝える。
「いえ、これが私の役目ですので」
「そうですか……」
もしかして言動を見張るように言われているのかもしれない。
内心舌打ちをしつつ、マティス達が泊まる予定の宿泊棟へと向かった。
「この建物だよ。短い間だからアルフォンス達とまとめて大部屋にしてもらったんだ」
到着したのは、石造りの神殿と違い木造の年季の入っていそうな建物。
掃除はされているようだけど、階段を上るとギシギシと不安な音を立てる。
「上ってる途中で階段抜けたりしないよね?」
「はは、冒険者が泊まる安宿もこんなものだから大丈夫だ。不安なら手を繋ぐか?」
差し出されたマティスの手を握り、双子より少し固い肉球の感触を楽しむ。
階段を上がって少し進んだ先のドアでマティスは足を止めた。
「ここだ」
「キャァァァァ!!」
マティスがドアを開けた瞬間、私の叫び声が宿泊棟に響いた。
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