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27.サミュエルの目的

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「え? 何!? サミュエル、その人達は誰!?」


 今はマティスも双子も冒険者ギルドに行って、まだ帰ってきていない。
 白装束の人達のあまりの不気味さに、私は足元にいたアーサーを抱き上げた。


「すまないサキ、アーサーはフェンリルだろう? そのフェンリルと従魔契約したサキは神殿からすると聖女という扱いなんだ」


 いきなりの事で頭が追いつかない。
 私が聖女!? いや、そんな事より、サミュエルは神殿の回し者だったの!?


「……ずっと、嘘ついてたの? 最初から?」


『もしや魔力酔いもわざとだったのか!? そうであればこやつらをまとめて消し炭にしてやる』


 グルルと唸り声をあげるアーサー。
 その様子に白装束の人達が何やら手をかざして呪文らしきものを唱え始めた。


「待て!! サキ達に危害を加える事は私が許さん!! ……サキ、私はフェンリルを悪意ある者から保護するために、姿をいつわって調査をしにきたが、不覚にも魔力酔いで倒れてしまったんだ。実際サキが助けてくれなかったら、私は命を落としていた可能性が高かった。だからサキは恩人であることに間違いはない」


 そう言ったサミュエルの目は真剣そのもので、嘘をついているようには見えなかった。


『ふむ、少なくともこやつは嘘をついておらぬな』


 アーサーの言葉に内心ホッとする。
 ひと月近く一緒に過ごしてきたのに、全部演技だったら人間不信になるところだった。


 気付くと集落の狼獣人達が、私達を取り囲む白装束の人達の周りを更に囲んでいた。
 これで無理やり連れて行かれる事はないだろう。


「もし……、私がこのままここで過ごしたいって言ったらどうなるの? 無理やり連れて行かれる?」


『ふん、その時はこの者達がこの世から消えるだけだ』


 私の腕の中でアーサーが頼もしくも物騒な事を言っている。


「そんな事はしたくない。だが、今後どんなやつらがサキとアーサーを狙ってやってくるか……。常に気を張っているよりも、堂々と聖女とフェンリルだと公言してしまえば狙う者も減るだろう。だから一緒に来てほしい」


 あ、いなくなるんじゃなくて減るんだ。
 だけど、今はマティス達もいないし、すぐに決断はできない。
 困っていると、サミュエルが少し困ったように微笑んだ。


「今決めるのは難しいだろう。明日また来るから、それまでにマティス達にも話して決めてくれ。その時は私も本来の姿で来よう」


 サミュエルが手をサッと手を上げると、白装束の人達は静かにいなくなった。
 もしかしてサミュエルって男爵家の次男なんかじゃなくて、もっと偉い家の子だったんだろうか。


『主よ、どうする気だ? どちらにしても、我がいる限り主に害を与える者は近付けさせぬゆえ、安心するといい』


「うん、だけど……私達を狙う人達が来るんなら、ここにいたら迷惑かけちゃうよね」


 ジワリと胸に広がる焦燥感に、アーサーをギュッと抱き締める。
 その時、頭に大きな手が乗った。


「仲間が知らせてくれた。我々眷属けんぞくはフェンリル様をお守りするのが役目だ。フェンリル様が顕現した今、どこかへ移住する事になっても問題ないぞ」


 安心させるように優しく語るマティスの声に、私は心を決めた。
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