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16.アーサーにも報告を
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「随分遅かったじゃないか」
「あ、うん、ちょっと色々あって……。ごめんねマティス」
「無事なら問題ない」
町の入り口にある馬車置き場に到着すると、マティスがホッとしたように微笑んだ。
あの後ギルドで事情聴取を受けて、遅くなったからお菓子が買えないとションボリしていたら、リアムが私をおんぶして全力疾走でお店に向かってくれたのだ。
なので事情聴取と寄り道の分遅くなってしまった。
そして気になるのは、さっきからいつもより更に無口になってしまったユーゴ。
「ユーゴ、馬車に乗ろう? 大丈夫だよ、サキの態度は変わってないじゃないか」
私? 私がどうしたんだろう。
リアムがユーゴの手を引いて荷台に誘導する。
「リアム、ユーゴ、私がどうかしたの?」
「ん? 何かあったのか?」
私が双子に聞くと、マティスも気になったのか、御者席で振り向いた。
「ユーゴはさっき初めて暴力的な姿を見せただろ? それでサキが怖がっちゃったらどうしようって心配してるんだよ」
リアムが苦笑いしながらユーゴの頭を撫でた。
ユーゴは落ち込んでいるのか、なされるがままだ。ちょっと可愛い。
「そんなの! 私のためだったんだから怖がるわけないよ! そりゃあ……血塗れの姿にはさすがに驚いたけどね」
「あー……、もしかして……?」
「うん、サキがダミアンに路地裏に引っ張り込まれて殴られたんだ、それで」「なんだって!?」
リアムが説明していると、マティスはいきなり御者席で立ち上がった。
馬が驚いてしまい、いななくのを慌てて宥めている。
「ちょっと目を離して振り返ったらサキがいなくて焦ったよ。すぐに匂いで見つけられたけど、その時にはすでに頬を腫らしていたからユーゴが……ね?」
「ユーゴが制裁を加えたなら、まぁいいだろう。サキに手を上げるなんて万死に値する行為だからな、よくやったユーゴ。さ、出発するぞ」
マティスに褒められ、チラリと視線を上げるユーゴ。
馬車が動き出したので、あえてユーゴの隣に座った。
「ユーゴ、私達はもう家族なんでしょう? だから嫌ったり怖がったりなんかしないよ。きっとアーサーもよくやったって褒めてくれるだろうし」
ユーゴの右手を両手で包み、さりげなく掌にあるプニプニ肉球の感触を堪能する。
足の裏の肉球は歩くせいかちょっとゴワゴワしているけど、手の方は気持ちいいのだ。
「ん、ありがと」
「お礼を言うのは私の方だよ。帰ったら買ってきたお菓子を食べようね!」
アーサーが感情だけでなく、食べ物も普通に食べられる事を知ったので、お菓子はアーサーの分もある。
帰り道はリアムがあの大男……ダミアンの事や、ギルドでの事情聴取、ついでにあの衛兵がジャネットに気がありそうだという事まで報告した。
私が報告?
私は相変わらず舗装されていない道で話そうとすると、舌を噛みそうになるので家まで口を開けないのである。
帰宅すると、アーサーに一連の出来事を報告した。
『なんだと!? どうりで途中で妙な気分になったわけだ、次からは絶対に我を置いて行く事は許さん!! その男も我が塵も残さずこの世界から消してやろう、クククク……』
「だからちゃんとユーゴが仕返ししてくれたからいいんだって! あっ、ほら、せっかくだから買ってきたお菓子を食べようか! ね!」
『うむ、その菓子で主の感情がかなりよい状態になったぞ。食べれば更によくなるはず! 早く食すのだ!』
「はいはい」
前足をテチテチと鳴らして催促するアーサーに、苦笑いしながら準備をした。
アーサーの分も一緒に出すと、お菓子とお菓子を食べた私の感情のダブルの美味しいさに思わず遠吠えをして、集落の狼獣人達をざわつかせた事を追記しておく。
「あ、うん、ちょっと色々あって……。ごめんねマティス」
「無事なら問題ない」
町の入り口にある馬車置き場に到着すると、マティスがホッとしたように微笑んだ。
あの後ギルドで事情聴取を受けて、遅くなったからお菓子が買えないとションボリしていたら、リアムが私をおんぶして全力疾走でお店に向かってくれたのだ。
なので事情聴取と寄り道の分遅くなってしまった。
そして気になるのは、さっきからいつもより更に無口になってしまったユーゴ。
「ユーゴ、馬車に乗ろう? 大丈夫だよ、サキの態度は変わってないじゃないか」
私? 私がどうしたんだろう。
リアムがユーゴの手を引いて荷台に誘導する。
「リアム、ユーゴ、私がどうかしたの?」
「ん? 何かあったのか?」
私が双子に聞くと、マティスも気になったのか、御者席で振り向いた。
「ユーゴはさっき初めて暴力的な姿を見せただろ? それでサキが怖がっちゃったらどうしようって心配してるんだよ」
リアムが苦笑いしながらユーゴの頭を撫でた。
ユーゴは落ち込んでいるのか、なされるがままだ。ちょっと可愛い。
「そんなの! 私のためだったんだから怖がるわけないよ! そりゃあ……血塗れの姿にはさすがに驚いたけどね」
「あー……、もしかして……?」
「うん、サキがダミアンに路地裏に引っ張り込まれて殴られたんだ、それで」「なんだって!?」
リアムが説明していると、マティスはいきなり御者席で立ち上がった。
馬が驚いてしまい、いななくのを慌てて宥めている。
「ちょっと目を離して振り返ったらサキがいなくて焦ったよ。すぐに匂いで見つけられたけど、その時にはすでに頬を腫らしていたからユーゴが……ね?」
「ユーゴが制裁を加えたなら、まぁいいだろう。サキに手を上げるなんて万死に値する行為だからな、よくやったユーゴ。さ、出発するぞ」
マティスに褒められ、チラリと視線を上げるユーゴ。
馬車が動き出したので、あえてユーゴの隣に座った。
「ユーゴ、私達はもう家族なんでしょう? だから嫌ったり怖がったりなんかしないよ。きっとアーサーもよくやったって褒めてくれるだろうし」
ユーゴの右手を両手で包み、さりげなく掌にあるプニプニ肉球の感触を堪能する。
足の裏の肉球は歩くせいかちょっとゴワゴワしているけど、手の方は気持ちいいのだ。
「ん、ありがと」
「お礼を言うのは私の方だよ。帰ったら買ってきたお菓子を食べようね!」
アーサーが感情だけでなく、食べ物も普通に食べられる事を知ったので、お菓子はアーサーの分もある。
帰り道はリアムがあの大男……ダミアンの事や、ギルドでの事情聴取、ついでにあの衛兵がジャネットに気がありそうだという事まで報告した。
私が報告?
私は相変わらず舗装されていない道で話そうとすると、舌を噛みそうになるので家まで口を開けないのである。
帰宅すると、アーサーに一連の出来事を報告した。
『なんだと!? どうりで途中で妙な気分になったわけだ、次からは絶対に我を置いて行く事は許さん!! その男も我が塵も残さずこの世界から消してやろう、クククク……』
「だからちゃんとユーゴが仕返ししてくれたからいいんだって! あっ、ほら、せっかくだから買ってきたお菓子を食べようか! ね!」
『うむ、その菓子で主の感情がかなりよい状態になったぞ。食べれば更によくなるはず! 早く食すのだ!』
「はいはい」
前足をテチテチと鳴らして催促するアーサーに、苦笑いしながら準備をした。
アーサーの分も一緒に出すと、お菓子とお菓子を食べた私の感情のダブルの美味しいさに思わず遠吠えをして、集落の狼獣人達をざわつかせた事を追記しておく。
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