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11.アーサーの中身

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 森の入り口近くにある集落に到着すると、猩猩オランウータン獣人の二人は色々聞けたとホクホク顔で帰って行った。
 私達はマティス達の家へと帰り、食事を作る事に。


 料理をしながら話を聞くと、ユーゴは家事が得意だから引き受けているのではなく、マティスとリアムに任せると家の中が腐海の森になりかねないとの事。
 一番マシなのがユーゴなので、仕方なくやっているそうだ。


 というわけで、片付けはともかく、掃除や洗濯は魔法で綺麗にできるというので料理は私も手伝うと申し出た。
 料理無双はできなくても、町で手に入れた調味料があれば、ある程度は作れそうだというのもある。


 恐らくそういう調味料の使い方とか教えてもらう前に、ご両親が亡くなったのだろう。
 私も一人暮らしが決まってから、慌てて色々教えてもらったクチだし。


 魔法が使えるようになったら、もっと家事を手伝おう。
 魔法が使えるようになったら……、魔法……使えるようになるのか……、うふふふふ。


 元々ファンタジーが凄く好きってわけでもなかったけど、実際魔法が使えるというのならテンションも上がるというもの。
 むしろもっとファンタジー物を読み漁っていたら、知識無双とかできたかもしれないのに!!


『どうしたあるじ、さっきから感情が揺らいでいるぞ。悪い感情ではないから問題ないが』


「サキ、料理作るの嫌……?」


 ユーゴが心配そうに聞いてきた。
 耳がペタンとなっているのが可愛い……、じゃなくて!


「違うよ! 料理自体はよく作ってたから大丈夫、これからの事とか色々考えていたからなの。仕事を見つけて、ちゃんと生活できるようにならないとね~って」


 実際いつまでも居候でいるわけにもいかないし、元の世界に戻れないなら将来的に結婚相手とか探すにしても、人族の暮らす町で生活しないと相手も見つからないだろうし。


『ならば冒険者として身を立てればよいでばないか、冒険者ギルドで我を従魔登録したであろう。主は今、世界最強のフェンリルを従えているのだぞ』


 ドヤァァァ、と胸を張る可愛らしい子狼にしか見えないアーサー。
 そういえば、アーサーが世界最強と自信を持って言えるような知識をなぜ持っているのか聞こうと思ってたんだ。


「アーサーは子供なのに、どうして自分が強いって思うの?」


『我がフェンリルだからだ』


 答えているようで、答えになっていない。


「…………えーと、聞き方が悪かったな? アーサーは子供に見えるのに、どうして色々知識があるの?」


『我は世界のことわりの知識を神より授けられ、加えてこれまで顕現けんげんしたフェンリルの知識を引き継いで・・・・・・・・いるのだ、記憶はない・・・・・がな』


「知識……? 記憶はない……?」


 ユーゴが首を傾げながら呟いた、知識と記憶の違いがわからないのだろう。


「誰かとお店でご飯を食べたとして、その料理の名前や作法を覚えていても、一緒に行った人は覚えてないって事かな?」


『そういう事だな』


 という事は見た目は子狼だけど、知識量は老人どころじゃないのでは!?
 そう思ったら可愛い見た目だけど、知的に見え……見え……ないね。
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