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42.すれ違い
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授業が始まる前の時間にアレクシアは一晩考えた作戦をリリアンとレティシアに伝えた。
昼食を食べ終わってすぐにオーギュストを呼んで、連れ出すという単純なものだが。
そして決戦である昼休み、いつものようにオーギュストが迎えに来て、食堂で食事を受け取っている時に異変に気づいた。
「オーギュ兄様、どうして1人分しか持ってないの?」
「あ、そういえば言ってなかったね。今日マックスはランチ会議に呼び出されてるんだ。王宮騎士団との御前試合の打ち合わせらしいよ。上位の3人だからセザールも行ってるはずさ」
「そ、そうですか……」
「確かにセザール兄様が食堂に居ないようですわ」
ガクリと項垂れるアレクシアの横で、辺りを見回してリリアンが言った。
不意に廊下の方が騒がしくなり、王族が向かって来ている事がわかったので反対の出入り口からオーギュストとアレクシアはそそくさと中庭へと移動した。
入れた気合が抜けてしまったアレクシアは、無意識の内にため息を吐きつつ食事をしている。
そんな妹の様子にオーギュストは苦笑いをしながら話しかけた。
「マックスが居なくてつまらないのかい? そんなにマックスが好きだとは思わなかったよ」
「ええぇ!? す、好きだって事どうして……!?」
オーギュストは人として好意を持っているという意味で聞いたつもりだったが、顔を真っ赤にして動揺する妹の姿に驚いた。
「え……? まさか……、マックスの事を恋愛の対象として好きなのかい!? 確かに良い奴だけど、よりによってマックスを!?」
驚きのあまり大きい声を出すオーギュストの口を、アレクシアは慌てて塞いだ。
アレクシアの柔らかな手の下でくぐもった声だったが、何を言ったかはアレクシアの耳にはハッキリ聞こえた。
「オーギュ兄様、よりによってとはどういう事ですか!? いくら親友とはいえ言って良い事と悪い事があるわ! 優しくて紳士で剣の腕も立つ素敵な殿方じゃない!」
眉を吊り上げて怒る妹の姿に、オーギュストは信じられないものを見る目を向けている。
マクシミリアンの親友としては嬉しい事この上無いが、王子達の婚約者候補に名前が上がっており、学園どころかこの国で1番の美少女と言って差し支え無い妹が選んだ相手だと思うと信じられなかった。
オーギュストは久々に触れたアレクシアの柔らかな手をそっと口から外して微笑む、日頃から容姿ではなくその人の人格と能力で判断するべきだと言っている妹の行動が本心からだとわかって嬉しくなったのだ。
「そういえばアレクは学院在学中に結婚相手を自分で探すって父様に言っていたね、その相手がマックスって事でいいのかい?」
「けっ……結婚!? そ、そりゃあそうなれば嬉しいけれど、マックスの気持ちもあるから勝手に決めつけたり出来ないでしょう? マックスが私の事どう思っているかもわからないのに……」
オーギュストは赤い顔で唇を尖らせてちょっと拗ねたようにブツブツ言うアレクシアの姿は、マクシミリアンが見たら悶えそうだなぁと思った。
血の繋がった妹なせいかとても可愛いとは思うが、恋心のようなものを抱いた事は1度も無い。
なので大切な妹が幸せになるのならば全力で応援するつもりだ。
「ん……? もし2人が結婚したらマックスが義弟になるという事か……、はは、何だか楽しみになってきた」
「オーギュ兄様! 気が早いわ! マックスの気持ちも聞いてないというのに……」
「こんなに見た目も中身も可愛いアレクを断る奴がいたら私は決闘を申し込むよ」
「そんな……! マックスの剣術の腕は学園で1番なのに!」
アレクシアは普段から自分を大切にしてくれているオーギュストならば本当にやりかねないと焦っているというのに、オーギュストは楽しそうに笑っている。
「俺の剣術の腕がどうしたって?」
「ぴゃぁっ」
いきなりマクシミリアンが現れ、アレクシアは驚いて文字通り飛び上がった。
「話し合いは終わったのかい?」
「ああ、大体は既に決まっていて、予定のすり合わせが殆どだったからな。ところでアレクはどうしたんだ?」
顔を両手で覆ってテーブルに突っ伏しているアレクシアを見て、マクシミリアンは首を傾げた。
「それはね~」「オーギュ兄様! ダメだからね!? 伝える時は私の口からちゃんと伝えたいの!」
焦ったアレクシアは体当たりするように、オーギュストの顔を胸元に抱き込んで口を封じた。
「何を俺に伝えるんだ?」
マクシミリアンは聞きながらも顔を赤く染めるアレクシアの姿に、婚約でも決まったのだろうかという考えが頭を過り、心臓がドクリと嫌な音を立てた。
直前に自分の剣の腕の話をしていた事などはとっくに頭から吹っ飛んでしまっている。
上目遣いでこちらを伺うアレクシアはとても愛らしいが、自分でも血の気が引いて行くのがわかった。
アレクシアは自分達のやりとりで伝えたいが殆どバレてしまったのではないかと思い、マクシミリアンの様子を伺ったら明らかに顔色が悪くなっていた。
(もしかして親友の妹から告白されて断ったらオーギュ兄様との仲がギクシャクするとか思っとるんやろか、今ここで断られたら立ち直れへん。せめて振られる覚悟してから気持ちだけ伝えよ……)
「今はまだ内緒。オーギュ兄様もわかった?」
オーギュストは頭を抱えられたまま何とか頷いてやっと解放された。
何故か表情が暗くなった親友と妹に首を傾げたが、時間になった為、食堂へ食器を片付けに行った。
3人が四阿を離れるとすぐ近くの植木の陰から人が出てきた事に気付かずに。
昼食を食べ終わってすぐにオーギュストを呼んで、連れ出すという単純なものだが。
そして決戦である昼休み、いつものようにオーギュストが迎えに来て、食堂で食事を受け取っている時に異変に気づいた。
「オーギュ兄様、どうして1人分しか持ってないの?」
「あ、そういえば言ってなかったね。今日マックスはランチ会議に呼び出されてるんだ。王宮騎士団との御前試合の打ち合わせらしいよ。上位の3人だからセザールも行ってるはずさ」
「そ、そうですか……」
「確かにセザール兄様が食堂に居ないようですわ」
ガクリと項垂れるアレクシアの横で、辺りを見回してリリアンが言った。
不意に廊下の方が騒がしくなり、王族が向かって来ている事がわかったので反対の出入り口からオーギュストとアレクシアはそそくさと中庭へと移動した。
入れた気合が抜けてしまったアレクシアは、無意識の内にため息を吐きつつ食事をしている。
そんな妹の様子にオーギュストは苦笑いをしながら話しかけた。
「マックスが居なくてつまらないのかい? そんなにマックスが好きだとは思わなかったよ」
「ええぇ!? す、好きだって事どうして……!?」
オーギュストは人として好意を持っているという意味で聞いたつもりだったが、顔を真っ赤にして動揺する妹の姿に驚いた。
「え……? まさか……、マックスの事を恋愛の対象として好きなのかい!? 確かに良い奴だけど、よりによってマックスを!?」
驚きのあまり大きい声を出すオーギュストの口を、アレクシアは慌てて塞いだ。
アレクシアの柔らかな手の下でくぐもった声だったが、何を言ったかはアレクシアの耳にはハッキリ聞こえた。
「オーギュ兄様、よりによってとはどういう事ですか!? いくら親友とはいえ言って良い事と悪い事があるわ! 優しくて紳士で剣の腕も立つ素敵な殿方じゃない!」
眉を吊り上げて怒る妹の姿に、オーギュストは信じられないものを見る目を向けている。
マクシミリアンの親友としては嬉しい事この上無いが、王子達の婚約者候補に名前が上がっており、学園どころかこの国で1番の美少女と言って差し支え無い妹が選んだ相手だと思うと信じられなかった。
オーギュストは久々に触れたアレクシアの柔らかな手をそっと口から外して微笑む、日頃から容姿ではなくその人の人格と能力で判断するべきだと言っている妹の行動が本心からだとわかって嬉しくなったのだ。
「そういえばアレクは学院在学中に結婚相手を自分で探すって父様に言っていたね、その相手がマックスって事でいいのかい?」
「けっ……結婚!? そ、そりゃあそうなれば嬉しいけれど、マックスの気持ちもあるから勝手に決めつけたり出来ないでしょう? マックスが私の事どう思っているかもわからないのに……」
オーギュストは赤い顔で唇を尖らせてちょっと拗ねたようにブツブツ言うアレクシアの姿は、マクシミリアンが見たら悶えそうだなぁと思った。
血の繋がった妹なせいかとても可愛いとは思うが、恋心のようなものを抱いた事は1度も無い。
なので大切な妹が幸せになるのならば全力で応援するつもりだ。
「ん……? もし2人が結婚したらマックスが義弟になるという事か……、はは、何だか楽しみになってきた」
「オーギュ兄様! 気が早いわ! マックスの気持ちも聞いてないというのに……」
「こんなに見た目も中身も可愛いアレクを断る奴がいたら私は決闘を申し込むよ」
「そんな……! マックスの剣術の腕は学園で1番なのに!」
アレクシアは普段から自分を大切にしてくれているオーギュストならば本当にやりかねないと焦っているというのに、オーギュストは楽しそうに笑っている。
「俺の剣術の腕がどうしたって?」
「ぴゃぁっ」
いきなりマクシミリアンが現れ、アレクシアは驚いて文字通り飛び上がった。
「話し合いは終わったのかい?」
「ああ、大体は既に決まっていて、予定のすり合わせが殆どだったからな。ところでアレクはどうしたんだ?」
顔を両手で覆ってテーブルに突っ伏しているアレクシアを見て、マクシミリアンは首を傾げた。
「それはね~」「オーギュ兄様! ダメだからね!? 伝える時は私の口からちゃんと伝えたいの!」
焦ったアレクシアは体当たりするように、オーギュストの顔を胸元に抱き込んで口を封じた。
「何を俺に伝えるんだ?」
マクシミリアンは聞きながらも顔を赤く染めるアレクシアの姿に、婚約でも決まったのだろうかという考えが頭を過り、心臓がドクリと嫌な音を立てた。
直前に自分の剣の腕の話をしていた事などはとっくに頭から吹っ飛んでしまっている。
上目遣いでこちらを伺うアレクシアはとても愛らしいが、自分でも血の気が引いて行くのがわかった。
アレクシアは自分達のやりとりで伝えたいが殆どバレてしまったのではないかと思い、マクシミリアンの様子を伺ったら明らかに顔色が悪くなっていた。
(もしかして親友の妹から告白されて断ったらオーギュ兄様との仲がギクシャクするとか思っとるんやろか、今ここで断られたら立ち直れへん。せめて振られる覚悟してから気持ちだけ伝えよ……)
「今はまだ内緒。オーギュ兄様もわかった?」
オーギュストは頭を抱えられたまま何とか頷いてやっと解放された。
何故か表情が暗くなった親友と妹に首を傾げたが、時間になった為、食堂へ食器を片付けに行った。
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