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25.round 2 fight !
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寮長であるエレーヌ・ド・スタール伯爵令嬢の挨拶が終わると、アレクシア達から視線を外さずにベアトリス嬢が寮長を押し退けんばかりに前に出た。
「皆様、わたくしはポンポンヌ侯爵が娘、ベアトリス・ド・ポンポンヌでございます。学園生となったからには身分を振り翳したりせず、きちんと先輩を立てなければなりません。ですよね、寮長?」
ニタリと嗤いながら寮長に視線を向けると、寮長のエレーヌは引きつった笑顔で頷いた。
(どこが先輩立てとるんじゃーい! 明らかに身分でマウント取っとるよな? 寮長の笑顔が完全に引きつっとるやないかーい! しかもレティのこの怯えよう……、ウチらの目ぇ盗んで虐めとったな……?)
アレクシアは脳内で手の甲でビシッとベアトリスにツッコミを入れた。
震えるレティシアの手をそっと握って微笑み掛けるとレティシアの身体から力が抜けたのがわかった。
ベアトリスの言葉を聞いて周りに居る在校生の令嬢達が騒ついている。
「1番身分を振り翳しているのはご自分でしょうに」
「彼女が先輩を立てた事がございました?」
「いつも二言目には侯爵家侯爵家と仰っていますのに、今年の新入生に公爵家のご令嬢がいらっしゃるから言い出したのでしょう」
「見た目だけは素敵なのに……」
去年までは女子寮の中では、ポンポンヌ侯爵家が1番の上位貴族だった為に好き放題していた事が察せられた。
再び寮長が門限や届け出などの注意事項を説明して解散となったが、アレクシア達がサロンから出ようとしたら声を掛けられた。
「アレクシア・ド・ラビュタン、お待ちなさい」
「はい?」
声を掛けて来たのは予想通りベアトリスだった、以前見た時よりもぶよぶよとした脂肪を蓄えているせいで圧迫感が凄い。
サロンから出て行く人の流れが止まり、友人と会話している体で周りの人達が聞き耳を立てているのがわかった。
「おほほ、ウイリアム様が卒業されてしまって残念だったわね。在学されてるお兄様はアレですし頼れる方が居なくてお可哀想……」
「なんやとコラ、もういっぺん言うてみぃ!」と胸倉を掴んでやりたいアレクシアだったが、嘲りを含んだ視線で見下すベアトリスに対し、余裕のある笑顔を貼り付けたままおっとりと頬に手を当てて口を開いた。
「もしやアレとおっしゃったのは勉学で学年1位、剣術でも5本の指に入るオーギュスト兄様の事でしょうか? 優秀な兄をアレ呼ばわりするとはベアトリス様は更に優秀なのですね」
アレクシアがそう言うとベアトリスはサッと顔色を変えた。
(ふっふっふ、アンタが絡んで来るのは想定内や、事前に情報は集めといたでもうひとつ爆弾落としたるわ)
「それに何か困った事があれば生徒会長に話を通してあるので頼るようにと兄に言われておりますし、ご安心下さい」
(私が困ったらアンタがセザール様と同時に狙っとる生徒会長に私が接近する事になるんやで~! 何か仕掛けようモンなら確実に相談するからな!!)
「っ生徒会長!? そ、そう……、それなら安心ね……。では失礼するわ」
言葉だけを聞くと普通の返しだが、ジワジワと顔が赤黒く変色してきて見ていると血管が切れるのではないかと心配になるレベルだった。
「うふふ、流石アレクね。見事な撃退だったわよ? 私が出るまでも無かったわね」
リリアンが揶揄い混じりに言ったのを発端に周りからも称賛の声が上がった。
そしてレティシアも尊敬の眼差しを向けている。
「凄い、あのベアトリス様が何も言い返せなかったわ」
「美しいだけじゃなく頭もよろしいのね」
「今年からはあの独裁が無くなるかもしれない」
「ベアトリス様よりはマシなようだけど、結構キツい事言い返していたわ」
「これからはあの方の我儘を抑えて頂けるかもしれないわ」
何やら周りに色々言われ居た堪れなくなったアレクシアは、早々に部屋に戻る事にした。
「皆様、お騒がせして申し訳ありません。失礼致します、おやすみなさい」
ニコリと微笑み、さりげなくレティシアとリリアンを促してサロンを出ると重いため息を吐いた。
アレクシアの心情を察している2人は、クスクス笑いながらも背中や肩をポンポンと優しく叩いて慰る。
「ベアトリス嬢がいるのはわかっていたけど、まさか入寮式早々絡んで来るとは思わなかったわね」
「でもアレクの鮮やかな返し、とても格好良かったわ。クロードにも教えてあげないと!」
「あはは……、2人が情報収集に協力してくれたお陰よ、ありがとう」
階段でレティシアと別れ、ドアの前でリリアンにおやすみの挨拶をして部屋に入ると、ニコルがお風呂の準備をしてくれていた。
他のメイドが居ない分、負担を減らす為にも渋るニコルを説得して寮では1人で入浴する事になっている。
のんびり1人でお湯に浸かっていると、思い浮かぶのは美しい銀髪のマクシミリアンの事。
明日はオーギュストと一緒に登校する約束をしているが、マクシミリアンを伴っていてくれないだろうかと期待を膨らませたり、そんな訳ないかと落ち込んでみたりと忙しく考えていたらのぼせそうになって就寝前にニコルに説教されるハメになるのだった。
「皆様、わたくしはポンポンヌ侯爵が娘、ベアトリス・ド・ポンポンヌでございます。学園生となったからには身分を振り翳したりせず、きちんと先輩を立てなければなりません。ですよね、寮長?」
ニタリと嗤いながら寮長に視線を向けると、寮長のエレーヌは引きつった笑顔で頷いた。
(どこが先輩立てとるんじゃーい! 明らかに身分でマウント取っとるよな? 寮長の笑顔が完全に引きつっとるやないかーい! しかもレティのこの怯えよう……、ウチらの目ぇ盗んで虐めとったな……?)
アレクシアは脳内で手の甲でビシッとベアトリスにツッコミを入れた。
震えるレティシアの手をそっと握って微笑み掛けるとレティシアの身体から力が抜けたのがわかった。
ベアトリスの言葉を聞いて周りに居る在校生の令嬢達が騒ついている。
「1番身分を振り翳しているのはご自分でしょうに」
「彼女が先輩を立てた事がございました?」
「いつも二言目には侯爵家侯爵家と仰っていますのに、今年の新入生に公爵家のご令嬢がいらっしゃるから言い出したのでしょう」
「見た目だけは素敵なのに……」
去年までは女子寮の中では、ポンポンヌ侯爵家が1番の上位貴族だった為に好き放題していた事が察せられた。
再び寮長が門限や届け出などの注意事項を説明して解散となったが、アレクシア達がサロンから出ようとしたら声を掛けられた。
「アレクシア・ド・ラビュタン、お待ちなさい」
「はい?」
声を掛けて来たのは予想通りベアトリスだった、以前見た時よりもぶよぶよとした脂肪を蓄えているせいで圧迫感が凄い。
サロンから出て行く人の流れが止まり、友人と会話している体で周りの人達が聞き耳を立てているのがわかった。
「おほほ、ウイリアム様が卒業されてしまって残念だったわね。在学されてるお兄様はアレですし頼れる方が居なくてお可哀想……」
「なんやとコラ、もういっぺん言うてみぃ!」と胸倉を掴んでやりたいアレクシアだったが、嘲りを含んだ視線で見下すベアトリスに対し、余裕のある笑顔を貼り付けたままおっとりと頬に手を当てて口を開いた。
「もしやアレとおっしゃったのは勉学で学年1位、剣術でも5本の指に入るオーギュスト兄様の事でしょうか? 優秀な兄をアレ呼ばわりするとはベアトリス様は更に優秀なのですね」
アレクシアがそう言うとベアトリスはサッと顔色を変えた。
(ふっふっふ、アンタが絡んで来るのは想定内や、事前に情報は集めといたでもうひとつ爆弾落としたるわ)
「それに何か困った事があれば生徒会長に話を通してあるので頼るようにと兄に言われておりますし、ご安心下さい」
(私が困ったらアンタがセザール様と同時に狙っとる生徒会長に私が接近する事になるんやで~! 何か仕掛けようモンなら確実に相談するからな!!)
「っ生徒会長!? そ、そう……、それなら安心ね……。では失礼するわ」
言葉だけを聞くと普通の返しだが、ジワジワと顔が赤黒く変色してきて見ていると血管が切れるのではないかと心配になるレベルだった。
「うふふ、流石アレクね。見事な撃退だったわよ? 私が出るまでも無かったわね」
リリアンが揶揄い混じりに言ったのを発端に周りからも称賛の声が上がった。
そしてレティシアも尊敬の眼差しを向けている。
「凄い、あのベアトリス様が何も言い返せなかったわ」
「美しいだけじゃなく頭もよろしいのね」
「今年からはあの独裁が無くなるかもしれない」
「ベアトリス様よりはマシなようだけど、結構キツい事言い返していたわ」
「これからはあの方の我儘を抑えて頂けるかもしれないわ」
何やら周りに色々言われ居た堪れなくなったアレクシアは、早々に部屋に戻る事にした。
「皆様、お騒がせして申し訳ありません。失礼致します、おやすみなさい」
ニコリと微笑み、さりげなくレティシアとリリアンを促してサロンを出ると重いため息を吐いた。
アレクシアの心情を察している2人は、クスクス笑いながらも背中や肩をポンポンと優しく叩いて慰る。
「ベアトリス嬢がいるのはわかっていたけど、まさか入寮式早々絡んで来るとは思わなかったわね」
「でもアレクの鮮やかな返し、とても格好良かったわ。クロードにも教えてあげないと!」
「あはは……、2人が情報収集に協力してくれたお陰よ、ありがとう」
階段でレティシアと別れ、ドアの前でリリアンにおやすみの挨拶をして部屋に入ると、ニコルがお風呂の準備をしてくれていた。
他のメイドが居ない分、負担を減らす為にも渋るニコルを説得して寮では1人で入浴する事になっている。
のんびり1人でお湯に浸かっていると、思い浮かぶのは美しい銀髪のマクシミリアンの事。
明日はオーギュストと一緒に登校する約束をしているが、マクシミリアンを伴っていてくれないだろうかと期待を膨らませたり、そんな訳ないかと落ち込んでみたりと忙しく考えていたらのぼせそうになって就寝前にニコルに説教されるハメになるのだった。
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