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9.護衛決定
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翌日、マナー講習を兼ねた昼食が終わり、フランソワとパスカルがセバスチャンと共に応接室で待っていた。
「アレクシアお嬢様、護衛をお決めになりましたか?」
「ええ、パスカルにお願いしたいと思います」
「「えぇっ!?」」
セバスチャンに問われてアレクシアはあっさりと答えた、その答えに護衛候補の2人は同時に驚きの声を上げる。
「アレクシアお嬢様、理由をお聞きしてもよろしいですか?」
納得がいかない、という気持ちを隠し切れていない表情でフランソワが聞いた。
「そうね……、もしお茶会のエスコートを選ぶんだとしたら間違いなくフランソワにお願いしたわ。だけど護衛としての適性はパスカルの方があると思ったからなの」
(エスコートは完璧やけど、見た目で態度変える護衛連れとったらこっちが気ぃつかうしな。ソフィーにも態度悪かったで、いざという時に連携取りづらいやろ。あと恩着せがましい言い方してきてイラッとさせられる時あるし)
「そうですか……、わかりました」
エスコートだったら選ばれていたという言葉にフランソワは納得したように頷いたが、パスカルは信じられないとばかりにオロオロしていた。
「お嬢様、本当に私でよろしいのですか?」
「ええ、パスカルだったら睨んだだけで悪い人達も逃げ出してしまいそうじゃない?」
「は、はぁ……」
クスクスと笑いながら揶揄うアレクシアに反論出来ずにパスカルは頭を掻く、そんなパスカルにフランソワがベシッと背中を叩いた。
「護衛に選ばれたんだからしっかりしろよ! お嬢様の事頼んだぞ」
「ああ、任せてくれ」
2人は拳をコツンと当てる、友情を確かめ合う様な光景にアレクシアは口元を綻ばせた。
(フランソワもちょっとナルシスト入っとって、自分の中の優先順位がはっきりしとる以外は悪い人やないやんな。ウィル兄様もそうやけど、イケメン認定されとる人は傲慢な傾向なんかもしれん)
「では護衛はパスカルという事で決定ですな、旦那様がお帰りになられたら報告しておきましょう。本日はお出掛けの予定はございますか?」
「いいえ、今日の昼食はマナーの授業だったからエミールに会ってないし、離れに様子を見に行くつもり」
「かしこまりました、では離れの者に伝えておきましょう。護衛が必要な時はお知らせ下さい」
「わかったわ、よろしくね」
「「失礼します」」
セバスチャンに続いてフランソワとパスカルも退室して行くのを見送り、メイドのエマと一緒に離れに向かう。
セバスチャンが伝えておいてくれたお陰で離れに着くと、エミールと母のクリステルがリビングで待っていた。
「エミール、アレク姉様が遊びにきたわよ」
「ありぇくねーしゃま! あしょぶ」
2歳になったエミールはかなり話せるようになってきたが、完璧には程遠い。
しかし身体を動かす事は好きなようで、今も全力で走って向かって来ている。
「うぐ……っ」
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「ええ……。ありがとう、大丈夫よ」
身長の関係で内臓を抉るようなタックルを受け、思わず令嬢らしからぬ声が漏れた。
エマがさり気なく背中を支えてくれていなければ、エミール共々倒れていたかもしれない。
加減を知らない幼児程恐ろしいものは無い、とアレクシアは思った。
しかし、にこにこと機嫌の良さげなエミールの笑顔を見てしまうと怒る気にもなれない。
アレクシアから見たらブサイクでも可愛い弟なのだ。
「エミールは今日も元気いっぱいね、何して遊びましょうか?」
「ありぇ」
エミールが指差す方を見ると、木彫りの人形が転がっていた。
人と動物、中には魔獣と呼ばれる長期に渡り魔素に晒された動物が変質して凶暴化した物も混ざっている。
初めてアレクシアが魔獣について学んだ時は、放射能で変質したという設定の有名な某怪獣映画を思い出した。
絨毯の上に座り、人形を手に取るとアレクシアは迫真の演技で魔獣から逃げる人を熱演する。
何故かエミールはこのシチュエーションが大好きなのだ。
「きゃー! 食べないでぇぇ」
「がぅがぁ~」
エミールはのんびりした口調とは裏腹に、結構な勢いで魔獣の人形をぶつけて来るので持ち方を気をつけないと手が大変な目に遭う。
現在クリステルにお願いして布製の人形を職人に注文しているところだが、出来上がるまではこの危険と隣り合わせな人形遊びをするしかないのだ。
持ち前の反射神経を駆使してエミールの人形遊びに付き合っていると、クリステルがポンと手を打ち合わせた。
「ああ、そうだわ、アレクシアのお茶会デビューの日が決まったわよ。前に言っていた公爵家のお茶会に最初に出席する事にしたから覚えておいてちょうだい」
「まぁ! では昨日買ったレティとお揃いの髪飾りをつけて行かないと、うふふ」
クリステルに言われて振り返ったアレクシアの細い目が輝いた、そう、手元から目を離してしまったのだ。
直後、木の塊である魔獣人形と自分が持っていた人形に手が挟まれてその日のエミールとの遊びは強制終了となった。
「アレクシアお嬢様、護衛をお決めになりましたか?」
「ええ、パスカルにお願いしたいと思います」
「「えぇっ!?」」
セバスチャンに問われてアレクシアはあっさりと答えた、その答えに護衛候補の2人は同時に驚きの声を上げる。
「アレクシアお嬢様、理由をお聞きしてもよろしいですか?」
納得がいかない、という気持ちを隠し切れていない表情でフランソワが聞いた。
「そうね……、もしお茶会のエスコートを選ぶんだとしたら間違いなくフランソワにお願いしたわ。だけど護衛としての適性はパスカルの方があると思ったからなの」
(エスコートは完璧やけど、見た目で態度変える護衛連れとったらこっちが気ぃつかうしな。ソフィーにも態度悪かったで、いざという時に連携取りづらいやろ。あと恩着せがましい言い方してきてイラッとさせられる時あるし)
「そうですか……、わかりました」
エスコートだったら選ばれていたという言葉にフランソワは納得したように頷いたが、パスカルは信じられないとばかりにオロオロしていた。
「お嬢様、本当に私でよろしいのですか?」
「ええ、パスカルだったら睨んだだけで悪い人達も逃げ出してしまいそうじゃない?」
「は、はぁ……」
クスクスと笑いながら揶揄うアレクシアに反論出来ずにパスカルは頭を掻く、そんなパスカルにフランソワがベシッと背中を叩いた。
「護衛に選ばれたんだからしっかりしろよ! お嬢様の事頼んだぞ」
「ああ、任せてくれ」
2人は拳をコツンと当てる、友情を確かめ合う様な光景にアレクシアは口元を綻ばせた。
(フランソワもちょっとナルシスト入っとって、自分の中の優先順位がはっきりしとる以外は悪い人やないやんな。ウィル兄様もそうやけど、イケメン認定されとる人は傲慢な傾向なんかもしれん)
「では護衛はパスカルという事で決定ですな、旦那様がお帰りになられたら報告しておきましょう。本日はお出掛けの予定はございますか?」
「いいえ、今日の昼食はマナーの授業だったからエミールに会ってないし、離れに様子を見に行くつもり」
「かしこまりました、では離れの者に伝えておきましょう。護衛が必要な時はお知らせ下さい」
「わかったわ、よろしくね」
「「失礼します」」
セバスチャンに続いてフランソワとパスカルも退室して行くのを見送り、メイドのエマと一緒に離れに向かう。
セバスチャンが伝えておいてくれたお陰で離れに着くと、エミールと母のクリステルがリビングで待っていた。
「エミール、アレク姉様が遊びにきたわよ」
「ありぇくねーしゃま! あしょぶ」
2歳になったエミールはかなり話せるようになってきたが、完璧には程遠い。
しかし身体を動かす事は好きなようで、今も全力で走って向かって来ている。
「うぐ……っ」
「お嬢様、大丈夫ですか?」
「ええ……。ありがとう、大丈夫よ」
身長の関係で内臓を抉るようなタックルを受け、思わず令嬢らしからぬ声が漏れた。
エマがさり気なく背中を支えてくれていなければ、エミール共々倒れていたかもしれない。
加減を知らない幼児程恐ろしいものは無い、とアレクシアは思った。
しかし、にこにこと機嫌の良さげなエミールの笑顔を見てしまうと怒る気にもなれない。
アレクシアから見たらブサイクでも可愛い弟なのだ。
「エミールは今日も元気いっぱいね、何して遊びましょうか?」
「ありぇ」
エミールが指差す方を見ると、木彫りの人形が転がっていた。
人と動物、中には魔獣と呼ばれる長期に渡り魔素に晒された動物が変質して凶暴化した物も混ざっている。
初めてアレクシアが魔獣について学んだ時は、放射能で変質したという設定の有名な某怪獣映画を思い出した。
絨毯の上に座り、人形を手に取るとアレクシアは迫真の演技で魔獣から逃げる人を熱演する。
何故かエミールはこのシチュエーションが大好きなのだ。
「きゃー! 食べないでぇぇ」
「がぅがぁ~」
エミールはのんびりした口調とは裏腹に、結構な勢いで魔獣の人形をぶつけて来るので持ち方を気をつけないと手が大変な目に遭う。
現在クリステルにお願いして布製の人形を職人に注文しているところだが、出来上がるまではこの危険と隣り合わせな人形遊びをするしかないのだ。
持ち前の反射神経を駆使してエミールの人形遊びに付き合っていると、クリステルがポンと手を打ち合わせた。
「ああ、そうだわ、アレクシアのお茶会デビューの日が決まったわよ。前に言っていた公爵家のお茶会に最初に出席する事にしたから覚えておいてちょうだい」
「まぁ! では昨日買ったレティとお揃いの髪飾りをつけて行かないと、うふふ」
クリステルに言われて振り返ったアレクシアの細い目が輝いた、そう、手元から目を離してしまったのだ。
直後、木の塊である魔獣人形と自分が持っていた人形に手が挟まれてその日のエミールとの遊びは強制終了となった。
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