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65.三連休(三日目)
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『ギュリュゥゥゥ』
三連休の最終日、ジェスは訓練場で元の大きさに戻った。
目的は生え変わった鱗があるか確認するためだ。
ジェスに聞いたところ、気付いたら時々巣に鱗が落ちているだけで、あまり生え変わりを意識した事がないらしい。
「うひゃぁ、やっぱでかいなぁ~」
昨日あれから代替用の剣を使って訓練してやった時に、ジェスの生え変わりそうな鱗があるか確認すると言ったら訓練場で部下達が待っていた。
情報源は間違いなくこのシモンだろう、別に構わないんだが。
「少し浮き上がって見える鱗があれば、内側に新しい鱗があるところらしい。見つけたら教えてくれ、尻尾と翼には触るなよ」
返事と共に、十人ほどの部下達がジェスを取り囲んで鱗を確認している。
さっきのジェスの呪文の声を聞いたのか、宿舎に残っていた部下達もぞろぞろと訓練場内に入って来た。
「団長~、何やってんの? 大きいジェスは久しぶりに見たなぁ」
エリオット隊のカシアスも興味津々でジェスに近付く。
「ジェスの抜け落ちそうな鱗を探しているんだ、武器や防具の材料になるからな。浮き上がって見える鱗を見つけたら教えてくれ。ジェス、見やすいように伏せてくれるか?」
『わかった~!』
「ジェスが体勢を変えるぞ! 全員一時退避!」
俺の号令と共に迅速にその場を離れる部下達、案外いい訓練になっているのかもしれない。
ジェスが伏せの体勢になると、再び周りに集まって鱗を見る部下達。
「あっ、団長! これそうじゃないか!?」
ガスパールが声を上げたので見に行くと、確かに左腕の一箇所が他のところより浮き上がっているように見えた。
その箇所をコツコツとノックしながらジェスに声をかける。
「ジェス、取れそうな鱗があるから、ちょっと引っ張ってみていいか?」
『うん、いいよ。なんかそこモゾモゾしてる気がする』
「全員この箇所の状態を確認してくれ! もしこれが抜け落ちるなら、ここと同じ状態になっているところを探すんだ! ……さて、あとはこれが抜け落ちるかどうかだな」
両手でガッシリと掴み、少し揺らしながら下へと引っ張ると、途中でいきなり抵抗がなくなりすっぽ抜けた。
「うわっ」
「おっと」
危うく尻もちをつきそうになったところを、たまたま後ろで見ていたカシアスが俺を抱き留めた。
無様なところを見せずに済んでよかったと思うのと同時に、抱き留められるのもこれはこれで恥ずかしい。
「あ、ありがとう……」
うわ、なんだコレ!?
これまでの俺がこういうお礼の言い方しなかったせいだろうか、無性に恥ずかしい!!
俺の上半身がまるっと隠れる大きさの鱗のおかげで、今は顔を見られていないが、確実に顔が赤くなっているだろう。
「他にも同じように浮いている鱗がないか、見つけ次第報告してくれ!」
鱗に隠れたまま指示を出した。
これでみんなジェスに視線を向けるだろうから、その間に顔の色も元に戻るはず。
気持が落ち着いたからか、少し顔の熱も治まった気がする。
ジェスの様子を見ようと、そろりと鱗を下げると、こちらを振り返って見ているカシアスと目が合った。
「後ろから見たら耳が赤くなってたの見えてたんだよな~、やっぱコケそうになったの恥ずかしかったんだ、団長。色が白いからわかりやすいぜ」
ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべてそう告げると、俺の怒声が来るのを予測したのかそそくさとジェスの近くへと向かった。
ダメだ、今怒鳴ったら部下達の注目を集めてしまう。まだ赤みが引かない今の顔を見られるのは避けたい。
鱗で顔を隠したまま、足元だけを見ながらジェスの顔の近くに移動した。
「ジェス、さっき浮いていた鱗を取ったが、痛かったりしなかったか?」
『うん! 大丈夫! これまでモゾモゾした時は岩に擦り付けていたけど……、そっか、鱗が取れかけてたからなのか~』
ジェスの素直な反応にほっこりする。
「他の生え変わりそうな鱗も取るが、痛かったりしたらすぐに言ってくれ。お前に痛い思いはさせたくないからな」
俺に鼻の頭を撫でられ、目を閉じて気持ちよさそうにする顔は、小さい姿の時と同じで可愛く見えてしまう。
『ボク、ジュスタンに撫でられるの好き~』
「はは、そうか。だがこれだけ大きいと頭は撫でてやれないな。後で小さくなってからまた撫でてやろう」
『うん!』
結局生え変わりの鱗は三枚手に入った。
装備品を職人達の所へ取りに行く者達で鱗を運び込み、ボスコの歓喜の声に鍛冶師達が集まって来た。
「ハァハァ、美しいこの光沢……、そして強度! それでいてしなやかなのはまだドラゴンの年齢が若いからだろうか。これならワシの腕でも色々と加工ができるはず! 百年以上のドラゴンの鱗だと、どうしても硬過ぎてワシの腕だと加工できる物が限られてしまうんだ……。これは正にお宝……ハァハァ。ひと欠片も無駄にせず使わせてもらう! なんとワシは幸運なんだろうか……、ヴァンディエール騎士団長ありがとうごぜぇます!! ハァハァ」
正直ボスコの興奮度合いに、その場にいた全員がドン引きしていた。
そりゃもう職人仲間達さえも、鱗を分けてくれとさえ言えない状態だったからな。
各自預けていた装備品を受け取り、宿舎で昼食を摂る事になった。
前日に装備品を受け取り終わっている者達は、早々に食堂にいるようだ。
「本当だって! オレは後ろから見てたからしっかり見えたんだって! あれだけ赤くなってる団長はオレが怪我した日に、自分の事お兄ちゃんって言った時以来だったな、はははは! ん? なんだよ、みんな黙って……って、いだだだだだ!!」
「楽しそうな話をしているなぁ? カシアス?」
その日、宿舎内では拷問『ウメボシ』の二人目の犠牲者が出たと囁かれた。
三連休の最終日、ジェスは訓練場で元の大きさに戻った。
目的は生え変わった鱗があるか確認するためだ。
ジェスに聞いたところ、気付いたら時々巣に鱗が落ちているだけで、あまり生え変わりを意識した事がないらしい。
「うひゃぁ、やっぱでかいなぁ~」
昨日あれから代替用の剣を使って訓練してやった時に、ジェスの生え変わりそうな鱗があるか確認すると言ったら訓練場で部下達が待っていた。
情報源は間違いなくこのシモンだろう、別に構わないんだが。
「少し浮き上がって見える鱗があれば、内側に新しい鱗があるところらしい。見つけたら教えてくれ、尻尾と翼には触るなよ」
返事と共に、十人ほどの部下達がジェスを取り囲んで鱗を確認している。
さっきのジェスの呪文の声を聞いたのか、宿舎に残っていた部下達もぞろぞろと訓練場内に入って来た。
「団長~、何やってんの? 大きいジェスは久しぶりに見たなぁ」
エリオット隊のカシアスも興味津々でジェスに近付く。
「ジェスの抜け落ちそうな鱗を探しているんだ、武器や防具の材料になるからな。浮き上がって見える鱗を見つけたら教えてくれ。ジェス、見やすいように伏せてくれるか?」
『わかった~!』
「ジェスが体勢を変えるぞ! 全員一時退避!」
俺の号令と共に迅速にその場を離れる部下達、案外いい訓練になっているのかもしれない。
ジェスが伏せの体勢になると、再び周りに集まって鱗を見る部下達。
「あっ、団長! これそうじゃないか!?」
ガスパールが声を上げたので見に行くと、確かに左腕の一箇所が他のところより浮き上がっているように見えた。
その箇所をコツコツとノックしながらジェスに声をかける。
「ジェス、取れそうな鱗があるから、ちょっと引っ張ってみていいか?」
『うん、いいよ。なんかそこモゾモゾしてる気がする』
「全員この箇所の状態を確認してくれ! もしこれが抜け落ちるなら、ここと同じ状態になっているところを探すんだ! ……さて、あとはこれが抜け落ちるかどうかだな」
両手でガッシリと掴み、少し揺らしながら下へと引っ張ると、途中でいきなり抵抗がなくなりすっぽ抜けた。
「うわっ」
「おっと」
危うく尻もちをつきそうになったところを、たまたま後ろで見ていたカシアスが俺を抱き留めた。
無様なところを見せずに済んでよかったと思うのと同時に、抱き留められるのもこれはこれで恥ずかしい。
「あ、ありがとう……」
うわ、なんだコレ!?
これまでの俺がこういうお礼の言い方しなかったせいだろうか、無性に恥ずかしい!!
俺の上半身がまるっと隠れる大きさの鱗のおかげで、今は顔を見られていないが、確実に顔が赤くなっているだろう。
「他にも同じように浮いている鱗がないか、見つけ次第報告してくれ!」
鱗に隠れたまま指示を出した。
これでみんなジェスに視線を向けるだろうから、その間に顔の色も元に戻るはず。
気持が落ち着いたからか、少し顔の熱も治まった気がする。
ジェスの様子を見ようと、そろりと鱗を下げると、こちらを振り返って見ているカシアスと目が合った。
「後ろから見たら耳が赤くなってたの見えてたんだよな~、やっぱコケそうになったの恥ずかしかったんだ、団長。色が白いからわかりやすいぜ」
ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべてそう告げると、俺の怒声が来るのを予測したのかそそくさとジェスの近くへと向かった。
ダメだ、今怒鳴ったら部下達の注目を集めてしまう。まだ赤みが引かない今の顔を見られるのは避けたい。
鱗で顔を隠したまま、足元だけを見ながらジェスの顔の近くに移動した。
「ジェス、さっき浮いていた鱗を取ったが、痛かったりしなかったか?」
『うん! 大丈夫! これまでモゾモゾした時は岩に擦り付けていたけど……、そっか、鱗が取れかけてたからなのか~』
ジェスの素直な反応にほっこりする。
「他の生え変わりそうな鱗も取るが、痛かったりしたらすぐに言ってくれ。お前に痛い思いはさせたくないからな」
俺に鼻の頭を撫でられ、目を閉じて気持ちよさそうにする顔は、小さい姿の時と同じで可愛く見えてしまう。
『ボク、ジュスタンに撫でられるの好き~』
「はは、そうか。だがこれだけ大きいと頭は撫でてやれないな。後で小さくなってからまた撫でてやろう」
『うん!』
結局生え変わりの鱗は三枚手に入った。
装備品を職人達の所へ取りに行く者達で鱗を運び込み、ボスコの歓喜の声に鍛冶師達が集まって来た。
「ハァハァ、美しいこの光沢……、そして強度! それでいてしなやかなのはまだドラゴンの年齢が若いからだろうか。これならワシの腕でも色々と加工ができるはず! 百年以上のドラゴンの鱗だと、どうしても硬過ぎてワシの腕だと加工できる物が限られてしまうんだ……。これは正にお宝……ハァハァ。ひと欠片も無駄にせず使わせてもらう! なんとワシは幸運なんだろうか……、ヴァンディエール騎士団長ありがとうごぜぇます!! ハァハァ」
正直ボスコの興奮度合いに、その場にいた全員がドン引きしていた。
そりゃもう職人仲間達さえも、鱗を分けてくれとさえ言えない状態だったからな。
各自預けていた装備品を受け取り、宿舎で昼食を摂る事になった。
前日に装備品を受け取り終わっている者達は、早々に食堂にいるようだ。
「本当だって! オレは後ろから見てたからしっかり見えたんだって! あれだけ赤くなってる団長はオレが怪我した日に、自分の事お兄ちゃんって言った時以来だったな、はははは! ん? なんだよ、みんな黙って……って、いだだだだだ!!」
「楽しそうな話をしているなぁ? カシアス?」
その日、宿舎内では拷問『ウメボシ』の二人目の犠牲者が出たと囁かれた。
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