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後日談
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卒業パーティーから3日後、公表する前に報告という形で王宮に呼び出されました。
お兄様は王子をお諌め出来なかったとして家で謹慎しております。
「ご無沙汰しております、陛下、王妃様」
非公式という事で謁見の間ではなく居住区画の応接室へと招かれました。
最高級のお茶とお菓子でもてなして頂き、王子とわたくしの今後をお話ししてくださいます。
「ガブリエルは余りにも浅はかな行動をした、故に王位継承権を剥奪して臣下に降らせる事になった…。例の男爵令嬢の元へ婿入りという形でな」
あらあら、王族から男爵ですか、下手に公爵になってしまわれた場合これまでと変わらず無茶な事を言い出した時に困りますから妥当な判断でしょう。
「其方の事は…、できれば婚約を白紙に戻して王太子の婚約者になって欲しいと思っておる。こちらの都合で振り回しているのは分かっているが、あやつに打診したところ乗り気でな…」
「まぁ、光栄ですわ」
王太子のヴィクトル様はガブリエル王子と違って思慮深く王に相応しいと評判の方ですもの、求められて否やはありません。
「おお! 受け入れてくれるのか、ありがたい。ならば早速ヴィクトルの婚約も白紙に戻して婚約式の準備をせねば! 元婚約者の令嬢は素行不良を理由に修道院に行ってもらおうか」
陛下が側仕えにお父様と文官を呼びに行かせ、あれやこれやという間に新たな婚約の確約がなされてしまいました。
「ふぁっはっはっ、これでこの国も安泰というものだ」
満足そうな両陛下に見送られ退室して小さく息を吐きました、この数日は怒涛の展開でしたから少し疲れました。
癒しが欲しくて庭園へと向かいました、王宮の庭園は自分が花の精になった気分が味わえる程常に綺麗な花が植えられています。
のんびり歩いていると聞き覚えのある声が聞こえてきました。
「王太子様がガブリエル様のお好みを色々教えて下さったお陰で結婚しようって言って頂けました、ですが王族でなくなるなんてあんまりです! どうか陛下に口添えをお願いします!」
「ガブリエルは愛する君と一緒に居られるかどうかが1番大事みたいだよ、これで君も大変な王族教育を受けずに済むし良かったじゃないか」
「う…っ、そ、それは…」
「そろそろ休憩時間が終わるからもう行くよ、ガブリエルとお幸せに」
ああ、王子の男爵家婿入りの件を聞いたのですね、……あら? ヴィクトル様がソフィー嬢と王子の仲を手助けした様な物言いでしたね。
そういえばわたくしとヴィクトル様の婚約話が進められなかった理由はガブリエル様を気遣っての事でしたが、まさか…。
ソフィー嬢と別れて立ち去るヴィクトル様と一瞬目が合って微笑まれた気がしました、ほんの一瞬だったので気のせいかもしれませんが。
あれから5年、あの後1年の婚約期間を設けてわたくしとヴィクトル様は結婚して既に2人の王子を授かりました。
今は執務の合間に2人でお茶をしながら懐かしいお話しへと話題が広がります。
「ガブリエルとシャルロットの婚約が決まった時は凄く悔しかったんだ、シャルロットがガブリエルに仕掛けていた数々の事を知っていたからね。ずっと何て面白い子なんだと思って私が結婚できればいいのにと嫉妬していたんだ」
「うふふ、わたくしの旦那様は物好きでいらっしゃるわ。でも…嬉しい…」
ヴィクトル様は時々こうして好意を伝えて下さるので柄にもなく頬を染めてしまいますわ。
「そういう意味ではあの男爵令嬢…、おっと今は男爵夫人だったな、彼女には感謝しているよ。未だ困り事があるとガブリエルの元側近達に助けて貰ってるらしいから元気でやってるんだろうけど…」
「けど? どうかされたんですか?」
「最近娘が生まれたらしい、ガブリエルには似てないみたいで何でも宰相の子息によく似た栗色の髪らしいよ」
クスクスと楽しげに笑うヴィクトル様に釣られて小さく笑ってしまいました。
男爵家の血を引くのはソフィー嬢ですから跡取りとしては問題ありませんものね。
わたくしも今度は女の子だったらいいなと思いながら少しふっくらしてきたお腹を撫でました。
お兄様は王子をお諌め出来なかったとして家で謹慎しております。
「ご無沙汰しております、陛下、王妃様」
非公式という事で謁見の間ではなく居住区画の応接室へと招かれました。
最高級のお茶とお菓子でもてなして頂き、王子とわたくしの今後をお話ししてくださいます。
「ガブリエルは余りにも浅はかな行動をした、故に王位継承権を剥奪して臣下に降らせる事になった…。例の男爵令嬢の元へ婿入りという形でな」
あらあら、王族から男爵ですか、下手に公爵になってしまわれた場合これまでと変わらず無茶な事を言い出した時に困りますから妥当な判断でしょう。
「其方の事は…、できれば婚約を白紙に戻して王太子の婚約者になって欲しいと思っておる。こちらの都合で振り回しているのは分かっているが、あやつに打診したところ乗り気でな…」
「まぁ、光栄ですわ」
王太子のヴィクトル様はガブリエル王子と違って思慮深く王に相応しいと評判の方ですもの、求められて否やはありません。
「おお! 受け入れてくれるのか、ありがたい。ならば早速ヴィクトルの婚約も白紙に戻して婚約式の準備をせねば! 元婚約者の令嬢は素行不良を理由に修道院に行ってもらおうか」
陛下が側仕えにお父様と文官を呼びに行かせ、あれやこれやという間に新たな婚約の確約がなされてしまいました。
「ふぁっはっはっ、これでこの国も安泰というものだ」
満足そうな両陛下に見送られ退室して小さく息を吐きました、この数日は怒涛の展開でしたから少し疲れました。
癒しが欲しくて庭園へと向かいました、王宮の庭園は自分が花の精になった気分が味わえる程常に綺麗な花が植えられています。
のんびり歩いていると聞き覚えのある声が聞こえてきました。
「王太子様がガブリエル様のお好みを色々教えて下さったお陰で結婚しようって言って頂けました、ですが王族でなくなるなんてあんまりです! どうか陛下に口添えをお願いします!」
「ガブリエルは愛する君と一緒に居られるかどうかが1番大事みたいだよ、これで君も大変な王族教育を受けずに済むし良かったじゃないか」
「う…っ、そ、それは…」
「そろそろ休憩時間が終わるからもう行くよ、ガブリエルとお幸せに」
ああ、王子の男爵家婿入りの件を聞いたのですね、……あら? ヴィクトル様がソフィー嬢と王子の仲を手助けした様な物言いでしたね。
そういえばわたくしとヴィクトル様の婚約話が進められなかった理由はガブリエル様を気遣っての事でしたが、まさか…。
ソフィー嬢と別れて立ち去るヴィクトル様と一瞬目が合って微笑まれた気がしました、ほんの一瞬だったので気のせいかもしれませんが。
あれから5年、あの後1年の婚約期間を設けてわたくしとヴィクトル様は結婚して既に2人の王子を授かりました。
今は執務の合間に2人でお茶をしながら懐かしいお話しへと話題が広がります。
「ガブリエルとシャルロットの婚約が決まった時は凄く悔しかったんだ、シャルロットがガブリエルに仕掛けていた数々の事を知っていたからね。ずっと何て面白い子なんだと思って私が結婚できればいいのにと嫉妬していたんだ」
「うふふ、わたくしの旦那様は物好きでいらっしゃるわ。でも…嬉しい…」
ヴィクトル様は時々こうして好意を伝えて下さるので柄にもなく頬を染めてしまいますわ。
「そういう意味ではあの男爵令嬢…、おっと今は男爵夫人だったな、彼女には感謝しているよ。未だ困り事があるとガブリエルの元側近達に助けて貰ってるらしいから元気でやってるんだろうけど…」
「けど? どうかされたんですか?」
「最近娘が生まれたらしい、ガブリエルには似てないみたいで何でも宰相の子息によく似た栗色の髪らしいよ」
クスクスと楽しげに笑うヴィクトル様に釣られて小さく笑ってしまいました。
男爵家の血を引くのはソフィー嬢ですから跡取りとしては問題ありませんものね。
わたくしも今度は女の子だったらいいなと思いながら少しふっくらしてきたお腹を撫でました。
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