3 / 6
その時兄は side クリストフ
しおりを挟む
「私はソフィーを正妃にするぞ」
ある日私が側近として仕えるこの国の第二王子ガブリエル様がそんなアホな事を言い出した。
何を考えているんだ、目の前に貴方の婚約者の兄が居るのを解っているのか!?
「クリストフには悪いがシャルロットの様な真面目だけが取り柄の四角四面な女は好かん。ソフィーならば素直で明るくてずっと一緒に居たいと思えるのだ」
「ガブリエル様、それはお考え直し下さい! 妹を蔑ろにすればどの様な事になるか考えただけでも恐ろしい事になります!!」
「まぁ…、公爵も父上も怒るだろうな。しかし先手を打って公表してしまえば後戻りは出来なくなるだろう、幸い近々我らの卒業パーティーもある事だし…。シャルロットのエスコートは任せたぞ、クリストフ」
確かにソフィーは明るく可愛らしいし甘え上手だ、現に側近の皆もメロメロと言って良い程籠絡されている。
かく言う私も好意を持っているが私がガブリエル様なら決してそんな愚かな選択はしないだろう。
真面目なだけが取り柄?
幼い頃からされてきた仕打ちを忘れたというのか、いや、ガブリエル様の事だから裏に気付いていないのだろう。
何というか…、王族にしてはアホ…単じゅ…間抜…素直な性質でらっしゃるからな。
忘れもしない、最初に妹が恐ろしいと感じた4歳のあの日。
当時妹は3歳という幼さにもかかわらず妹の可愛さに素直になれずブスと口にしたガブリエル様に対し、ウチの庭の散策中にデコボコした石畳の上を通り掛かった時に体当たりしたのだ。
周りの従者が慌てて助け起こそうとした時に妹は言った。
「わたくしはだいじょうぶですわ、ガブリエルさまがかばってくださったのでむきずです。ありがとうございます、ガブリエルさま」
そう言って可愛らしくニッコリと笑ったのだ。
周りは流石ガブリエル様、そのお歳にして既に紳士ですねなどと褒め称えた。
痛くて泣きそうだったが普段褒められる事が少ない為、称賛の声に虚勢を張ってしまい妹を怒る事もしなかった。
しかし私は見たのだ、従者達からは私が壁になって見えない事を確認してからガブリエル様の死角から体当たりして下敷きにした瞬間を。
そして怒るタイミングを逃してしまったガブリエル様を見てニヤリと嗤ったその横顔を。
ガブリエル様が無神経故に妹を不快にさせる度に同じ様な報復を受けているのだ、本人は周りから褒められるせいで怒る事を忘れているが、結構酷い目に遭っている。
そのせいで妹が側に居るとガブリエル様がしっかりすると勘違いした両陛下が婚約をと言い出したのだが…。
2人の婚約が決まった事を父上が家族に報告した時、母上と乳母の顔が引きつったのを見てしまった。
父上は妹が大人しくて可愛い娘だと思っているが、それは妹の本性を知っている母上と乳母の淑女教育の賜物だ。
しかし身体がこれまでの仕打ちを覚えている為かガブリエル様は中々小賢しい工作をしてソフィーの事がバレない様に頑張っている様だ。
それにしてもソフィーを正妃にしたいだなんてとんでもない事を言い出したので頭が痛い。
他の側近である友人達も賛成している様だが、お前達は本当にそれで良いと思っているのか?
だってソフィーは…。
そして卒業パーティー当日、エスコートする為に妹の元を訪れた。
そしてガブリエル様の計画を全て暴露した、ちゃんと私は何度も説得したが聞く耳を持たなかったとしっかりアピールして。
そして私の話を聞いた妹はあの幼い日の様にそれはそれはとても愉しそうに嗤ったのだ。
その時私は心に決めた、今日は壁と一体化していようと。
ある日私が側近として仕えるこの国の第二王子ガブリエル様がそんなアホな事を言い出した。
何を考えているんだ、目の前に貴方の婚約者の兄が居るのを解っているのか!?
「クリストフには悪いがシャルロットの様な真面目だけが取り柄の四角四面な女は好かん。ソフィーならば素直で明るくてずっと一緒に居たいと思えるのだ」
「ガブリエル様、それはお考え直し下さい! 妹を蔑ろにすればどの様な事になるか考えただけでも恐ろしい事になります!!」
「まぁ…、公爵も父上も怒るだろうな。しかし先手を打って公表してしまえば後戻りは出来なくなるだろう、幸い近々我らの卒業パーティーもある事だし…。シャルロットのエスコートは任せたぞ、クリストフ」
確かにソフィーは明るく可愛らしいし甘え上手だ、現に側近の皆もメロメロと言って良い程籠絡されている。
かく言う私も好意を持っているが私がガブリエル様なら決してそんな愚かな選択はしないだろう。
真面目なだけが取り柄?
幼い頃からされてきた仕打ちを忘れたというのか、いや、ガブリエル様の事だから裏に気付いていないのだろう。
何というか…、王族にしてはアホ…単じゅ…間抜…素直な性質でらっしゃるからな。
忘れもしない、最初に妹が恐ろしいと感じた4歳のあの日。
当時妹は3歳という幼さにもかかわらず妹の可愛さに素直になれずブスと口にしたガブリエル様に対し、ウチの庭の散策中にデコボコした石畳の上を通り掛かった時に体当たりしたのだ。
周りの従者が慌てて助け起こそうとした時に妹は言った。
「わたくしはだいじょうぶですわ、ガブリエルさまがかばってくださったのでむきずです。ありがとうございます、ガブリエルさま」
そう言って可愛らしくニッコリと笑ったのだ。
周りは流石ガブリエル様、そのお歳にして既に紳士ですねなどと褒め称えた。
痛くて泣きそうだったが普段褒められる事が少ない為、称賛の声に虚勢を張ってしまい妹を怒る事もしなかった。
しかし私は見たのだ、従者達からは私が壁になって見えない事を確認してからガブリエル様の死角から体当たりして下敷きにした瞬間を。
そして怒るタイミングを逃してしまったガブリエル様を見てニヤリと嗤ったその横顔を。
ガブリエル様が無神経故に妹を不快にさせる度に同じ様な報復を受けているのだ、本人は周りから褒められるせいで怒る事を忘れているが、結構酷い目に遭っている。
そのせいで妹が側に居るとガブリエル様がしっかりすると勘違いした両陛下が婚約をと言い出したのだが…。
2人の婚約が決まった事を父上が家族に報告した時、母上と乳母の顔が引きつったのを見てしまった。
父上は妹が大人しくて可愛い娘だと思っているが、それは妹の本性を知っている母上と乳母の淑女教育の賜物だ。
しかし身体がこれまでの仕打ちを覚えている為かガブリエル様は中々小賢しい工作をしてソフィーの事がバレない様に頑張っている様だ。
それにしてもソフィーを正妃にしたいだなんてとんでもない事を言い出したので頭が痛い。
他の側近である友人達も賛成している様だが、お前達は本当にそれで良いと思っているのか?
だってソフィーは…。
そして卒業パーティー当日、エスコートする為に妹の元を訪れた。
そしてガブリエル様の計画を全て暴露した、ちゃんと私は何度も説得したが聞く耳を持たなかったとしっかりアピールして。
そして私の話を聞いた妹はあの幼い日の様にそれはそれはとても愉しそうに嗤ったのだ。
その時私は心に決めた、今日は壁と一体化していようと。
180
お気に入りに追加
871
あなたにおすすめの小説
婚約破棄は先手を取ってあげますわ
浜柔
恋愛
パーティ会場に愛人を連れて来るなんて、婚約者のわたくしは婚約破棄するしかありませんわ。
※6話で完結として、その後はエクストラストーリーとなります。
更新は飛び飛びになります。
妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。
結局、私の言っていたことが正しかったようですね、元旦那様
新野乃花(大舟)
恋愛
ノレッジ伯爵は自身の妹セレスの事を溺愛するあまり、自身の婚約者であるマリアとの関係をおろそかにしてしまう。セレスもまたマリアに対する嫌がらせを繰り返し、その罪をすべてマリアに着せて楽しんでいた。そんなある日の事、マリアとの関係にしびれを切らしたノレッジはついにマリアとの婚約を破棄してしまう。その時、マリアからある言葉をかけられるのだが、負け惜しみに過ぎないと言ってその言葉を切り捨てる。それが後々、自分に跳ね返ってくるものとも知らず…。
王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。
ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
婚約破棄されたので実家へ帰って編み物をしていたのですが……まさかの事件が起こりまして!? ~人生は大きく変わりました~
四季
恋愛
私ニーナは、婚約破棄されたので実家へ帰って編み物をしていたのですが……ある日のこと、まさかの事件が起こりまして!?
妹と婚約者を交換したので、私は屋敷を出ていきます。後のこと? 知りません!
夢草 蝶
恋愛
伯爵令嬢・ジゼルは婚約者であるロウと共に伯爵家を守っていく筈だった。
しかし、周囲から溺愛されている妹・リーファの一言で婚約者を交換することに。
翌日、ジゼルは新たな婚約者・オウルの屋敷へ引っ越すことに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる