婚約破棄の場で前世の記憶を取り戻した人達の話

2人目

「貴様との婚約を破棄する！」


王子のその言葉を聞いた瞬間、僕は前世の記憶を取り戻した。


ここは、前世で妹がハマってた乙女ゲームの世界か！！！！なんて思う余裕なんかない！！


そのあまりの衝撃に、僕は最後のビーフを落としてしまったんだ・・・・・・・・。


この国は飯がくそマズいんだよ！


その中で唯一食べられるのがビーフなんだよ！


おい、王子！なんてタイミングで言いやがるんだ！


空気読め！空気をよお！


朝ビーフ、昼ビーフ、夜ビーフの僕をなめるな！


くっ、少し頭が痛い気がする・・・だが、大事なビーフを失った悲しみには敵わない！


「ここで貴様の罪を暴いてやる！」


そんなのどうでもいいから、新しい料理持ってきてくれない？


え？状況考えろ？僕には関係ないよね、モブだし。


「貴様はこのミスージーの教科書を破り捨てたり」


いや、お前の大声で落ちて行ったビーフの方がな


「私の大事なミスージーを！」


え、ミスージーってヒロインの名前なのか？


「私の大事なミスージーを！」


「ああ、こんなに青い顔をして...可哀想に、ミスージーっ」


ガバッヒシッ


くそっ！うまそうな名前してんじゃねえよ！


体型はうまそうじゃないけど・・・。


あ、焼き肉食べたくなってきた。


ミスジは肩甲骨の裏側にある希少な部位なんだぜ？


1頭につき2kg程度しかとれないんだぜ？


ゼラチン質が多いから僕の涎もダラダラだぜ！


サーロインも食べたいな・・・知ってるか？


サーロインのサーは貴族の称号なんだよな・・・サーロインはビーフの王様だぜ。


くっ・・・どうする？今すぐ調理場に行ってビーフパクってくる？


いや、この国ではちょっとずつ食べるのが主流・・・そんな事をすればこの国では速攻で人生が終わりそうだ。


ああ、僕はどうしてこんな国に転生してしまったんだ・・・どうせモブならあの茶番見ながら優雅に飯食うくらいさせろよ！


「貴様は隣国へ追放する！」


え？隣国！？


日本中の和牛が集まったかのようなあの国へ！？


噛めば噛むほどジューシーになっていくブリスケも有名だよな！？


それなんて天国だよ！








ま、待ってくれ！！悪役令嬢様！！


僕も連れて行ってくれ・・・いや、ください！！


僕においしいビーフを食わせてくれええええええええええええええええええええええええええええええええ