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第一章

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王族専用席は別室にあった。
一番日当たりの良い気持ちのいい場所で、私はすっかり気に入ってしまったわ。

「何を食べる?」

「人気があるのはどれかしら?」

「どれも美味しいって聞いたけど、これだけ種類があると迷うな」

「それならサンドイッチになさいな!ショーン、久しぶりですわねぇ」

機嫌良く入ってきたヨランダ王女は、丸テーブルのショーン殿下の隣に座る。まあ、リオンの隣でもあるけどね。

「姉上、サンドイッチは軽食では?」

「舐めてはいけないわよ。このカフェのサンドイッチは質も量も一級品なのよ。屍になった生徒達を回復させる為にある食べ物ですわよ」

その言葉に、明日からの授業が不安になったのは私だけではない筈・・・そしてヨランダ王女はやはりズボンをお履きなのね。

「ヨランダ王女殿下、その格好に抵抗はありませんか?私はドレスで生活しておりましたので不安で・・・」

「スカーフを腰に巻けばいいわよ。それは先生方も推奨しているしね」

「そうなのですか!ありがどうございます!」

その後、実は10%未満から選ばれた2人であるマリー様と婚約者の方も来られて和気藹々と過ごし、私がサンドイッチをペロリと平らげた事には驚かれたけれど、育ち盛りだから仕方ないという事にしておいてほしい。

そこから話がニーナさんの事になり───。

「普通科の生徒が転移陣を?」

「ええ、間違えて乗ってしまったそうです。そんな事は有り得ないのにね」

ショーン殿下が嫌味っぽく言うのは珍しい。
何かあったのかしら?

「今頃は先生方が全ての転移陣をチェックしているでしょうね。シトリン先生はキレていると思うわよ」

「温厚そうな感じなのに?」

「奥様とお子様に早く会いたいから、残業は一切しませんという方だもの。全ての転移陣を調べるのなら残業は必須。シトリン先生と組む先生に同情致しますわ」

愛妻家で子煩悩、どこかで聞いたような話だけど気のせいよね。アリスティア、考えると来るわよ!
この学園にはあの人達がいるんだから!

「アリスティア!僕のアリス、やっと見つけたよ!」

バン!と王族専用席の扉を開いたのは次男のローレンス兄様。大学で魔道具作成の教授、実戦学の助教授をしているの。もちろんこれは異例の早さ。
アーネスト兄様は跡継ぎだからと大学は経済と法律を選んだから、下は逃がすものかと大学側が躍起になっての措置。

「まあ、ローレンス兄様。そのようにお急ぎで私に急用でも?」

「やっとアリスの顔が見れるから、講義が終わってすぐに転移してきたんだよ。何ヶ月も君の顔を見れなかったからね」

「ふふ、相変わらずですのね」

私は立ち上がって、ローレンス兄様に抱き着く。

私が一番懐いているのがこのローレンス兄様で、どれだけ泣いていても兄様が抱っこすると泣き止んでいたそうよ。

「ローレンス兄様、お会いしたかったです」

「僕もだよ。可愛いアリス」

抱きしめ合う2人って傍から見るとカップル?兄妹愛だから大丈夫よね?
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