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第一章

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「で、どうだったの?」

「あかん。薄紅に見せてもろた姿も気配もなーんもなし。精霊に教えてもらお思たら先に遊べ言うてうるさかってん。ほんで、結局何も知らんかったわ」  

「それでびしょ濡れだったのね。徳を積んでいた時から狡猾ではあったそうだけど、私の力を宿したあなたが見て回ってもダメなんてありえないわね」

本当にありえない。

私が想像する事ができない隠れ方をしているの?

窓の外を眺めるとたくさんの精神体が浮いていたのだけど、何故か強い違和感を感じたの。

「白銀、あれは全てあの女だわ」

「は?全部?」

「本体はこの世界にはいない・・・ああもう、気配なしで本体を探すのはさすがに無理だわ」

手を払って全ての精神体を消したけれど、これで終わる筈がない。

「主さん、黒銀も呼ぶか?俺だけやと無理かもしれんしなぁ」

「黒銀は私の代わりに仕事してくれてるの。別の宇宙にいるのを呼び出すのはさすがにダメよ」

「せやなぁ。楽しそうに駆けずり回っとるしな」

「そうよ。今回は白銀が頼りなんだからよろしくね」

「しゃーないな、頑張るわ」

「よろしくね」

私は散歩に行く事にして、メイド達に後を任せた。

寮から学園までは徒歩で10分。
転移装置はあるけど、運動不足が怖いから歩いて行く事にしているわ。

男子寮は女子寮の隣にあり、最上階だけは繋がっている。中央にサロンがあり、外交や有事の際のや話し合いに使われるけれど・・・お花畑とビビりにできるのかは謎。学園に通う公爵家の子供は私とマクシミリアンしかいないから、嫌な予感しかしないわ。

その時、誰かの視線を感じた。

気付いている事を悟られないよう、私はのんびりと散歩を続ける。

サーチして気が抜けそうになったけれど、気付かないフリは続行して、少し早歩きで学園までの道を歩いた。

いつまで着いて来るのよ!

振り返って喚きたい気持ちを押さえながら立ち止まると、追跡者はおずおずといった感じで私の所まで来たわ。

「あの、アリスティア嬢」

「まあ、ラインハルト第二王子殿下。ごきげんよう」

「あ、あのさ。お願いがあるんだけど聞いてもらえるかな・・・?」

王太子殿下と第二王子殿下は双子のように似ている。

濃い金髪もくっきりとした二重の瞳も通った鼻筋も全ての同じだから、普通にしていれば爽やか系のイケメンなのに、この人はおどおどした態度のせいで3割減になってる。

「内容によりますわ。私にもできる事とできない事がございますの」

「そうだよね・・・あのさ、僕と友達になってくれないかな」

「友達ですか?」

「うん、僕はこんなだし1人の方が楽だからそうしてたけど、学園で1人でいたら嫌がらせされそうで怖いんだ。アリスティア嬢なら守ってくれるかなって。一緒にいる令嬢達も強そうだし・・・ダメかな?」

つまり、強そうな令嬢達といれば自分は安泰だと?

ふ・ざ・け・る・な!
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