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第二章
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先程まで楽しそうに話しをしていた筈の武尊は、エステルさんを見て「君は誰?」と言ったの。
クラス中、いいえ学園中が騒がしくなった。
その内容は、今日は入学式なのにどうして授業をしているのかというものが多く、同級生達や先生はあの日に魅了にかけられた事が分かった。
エステルさんは周囲を見回しながら戸惑う素振りを見せているけれど、その瞳には怒りが灯り「誰がやったのよ」「絶対に許さない」と心の中で罵っているわ。
『魅了は奪ったわ。次は暗黒を探しましょう。お義母様はお義父様と来斗達を探すのよね?』
通信を全員に送ると、お義母様と蒼は頷いた。
お義母様はここから別行動になるけれど、不可視をかけているから大丈夫。3人を見つけたら合図を送ってもらう手筈も整っているわ。
私はエステルさんに追跡をかけてその場を後にする。
『パパ、暗黒の気配はあるのよね?』
『この学園を覆う程に強い気配がな』
『ここにいると思う?』
『ああ、確実にいる』
食堂へと向かっていると、大勢の声が聞こえてきたの。
「エステルという娘はどこだ!」
「あいつは悪神の手先だ、俺達はあいつに操られていたんだ」
「お待ち下さい。学園側も対応を考えていますので」
エステルさんを探す怒鳴り声と、戸惑いながらも彼らを止める教職員の声に、私達は学園中の魅了が解けた事を確認した。
『彼らはホールにいたようね。ではそれ以外という事かしら』
『そうでなければあいつらは出ては来れないだろうな』
蒼も頷いている。
通信を繋ぐ事はできても、蒼やお義母様は返事を返す事はできないの。
半神と人間は無理と言われたけれど、私は最初からできていたのよね。白い世界で会った時にはパパは神になると分かっていたみたい。
「これだけ騒がしければ声を出しても大丈夫だ。但し、小声でだぞ」
「分かりました」
「分かったわ。パパ、気配の濃い場所を見つけたの。エステルさんもそこに向かっているみたいだわ」
「どこだ」
「学園長室ね」
学園長室で何が起こっているかを確かめようとしたけれど、真っ暗で何も分からなかったからちょくせつ行く事になったのだけど、ホールを通った時に知った声が聞こえて来たの。
「武尊!桜純を見なかったか?」
「教室にはいなかったぞ。それより創星は知ってるのか?俺達が───」
私は久しぶりに見る創星を見て固まってしまったの。
何故、このタイミングで現れるの?戸惑いながらも創星から目が離せない私の肩に蒼が手を置いた。
「今は集中しないといけないんだろ?ほら行こう」
「そうね・・・行きましょう」
促されるままに足を進めようとした私の後ろで、創星が「桜純の声がした?桜純、どこにいるんだ」と人混みの中で叫んでいる。
この距離でも私の声を拾う創星に驚きを隠せなかったけれど、私達は2階にある学園長室へと向かった。
クラス中、いいえ学園中が騒がしくなった。
その内容は、今日は入学式なのにどうして授業をしているのかというものが多く、同級生達や先生はあの日に魅了にかけられた事が分かった。
エステルさんは周囲を見回しながら戸惑う素振りを見せているけれど、その瞳には怒りが灯り「誰がやったのよ」「絶対に許さない」と心の中で罵っているわ。
『魅了は奪ったわ。次は暗黒を探しましょう。お義母様はお義父様と来斗達を探すのよね?』
通信を全員に送ると、お義母様と蒼は頷いた。
お義母様はここから別行動になるけれど、不可視をかけているから大丈夫。3人を見つけたら合図を送ってもらう手筈も整っているわ。
私はエステルさんに追跡をかけてその場を後にする。
『パパ、暗黒の気配はあるのよね?』
『この学園を覆う程に強い気配がな』
『ここにいると思う?』
『ああ、確実にいる』
食堂へと向かっていると、大勢の声が聞こえてきたの。
「エステルという娘はどこだ!」
「あいつは悪神の手先だ、俺達はあいつに操られていたんだ」
「お待ち下さい。学園側も対応を考えていますので」
エステルさんを探す怒鳴り声と、戸惑いながらも彼らを止める教職員の声に、私達は学園中の魅了が解けた事を確認した。
『彼らはホールにいたようね。ではそれ以外という事かしら』
『そうでなければあいつらは出ては来れないだろうな』
蒼も頷いている。
通信を繋ぐ事はできても、蒼やお義母様は返事を返す事はできないの。
半神と人間は無理と言われたけれど、私は最初からできていたのよね。白い世界で会った時にはパパは神になると分かっていたみたい。
「これだけ騒がしければ声を出しても大丈夫だ。但し、小声でだぞ」
「分かりました」
「分かったわ。パパ、気配の濃い場所を見つけたの。エステルさんもそこに向かっているみたいだわ」
「どこだ」
「学園長室ね」
学園長室で何が起こっているかを確かめようとしたけれど、真っ暗で何も分からなかったからちょくせつ行く事になったのだけど、ホールを通った時に知った声が聞こえて来たの。
「武尊!桜純を見なかったか?」
「教室にはいなかったぞ。それより創星は知ってるのか?俺達が───」
私は久しぶりに見る創星を見て固まってしまったの。
何故、このタイミングで現れるの?戸惑いながらも創星から目が離せない私の肩に蒼が手を置いた。
「今は集中しないといけないんだろ?ほら行こう」
「そうね・・・行きましょう」
促されるままに足を進めようとした私の後ろで、創星が「桜純の声がした?桜純、どこにいるんだ」と人混みの中で叫んでいる。
この距離でも私の声を拾う創星に驚きを隠せなかったけれど、私達は2階にある学園長室へと向かった。
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