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第一章

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「あ、分かったわ」

「何がです?」

「今、鷹司君が玄関を出たはずよ。それと同時にこの部屋以外にまた変なもの達が戻ってきたわ」

「ほんまや、あの兄ちゃんの能力なんかな」

「彼を調べさせてくれる?後、宮ノ森君と百合の事もお願い」

「ほいよ。お前ら、仕事やぞ!」

私が直接話せるのは白銀と黒銀だけ。
それは彼らとの約束で、全員が私と話したがって大変だからというね。
大きさも変えられるから、この部屋に五万体もいるようには見えないけど。
白銀だけは掌サイズで可愛いよ。
名前の通り白銀の髪の男の子なんだけど、大昔に視察に行かせたらこの言葉になって帰って来たのよね。

『主様、聞こえますか?』

『黒銀?久しぶりね』

『待ちくたびれましたよ』

『ごめんね。それで何か分かったの?』

『とりあえずこっちに来てください』

『えー?』

『えーじゃありません!こちらの神達が怒り狂って人間達から手を引くと言い出してるんですよ!』

『パパは?』

『静観してます・・・』

『めんどくさーいなんて言ってりないわね。準備が必要だから1日待ってくれる?』

『分かりました。明日必ずお願いしますよ』

ガシャンと音がしそうな勢いで通信が切られ、黒銀の怒った顔を想像した私はげんなりとしながら白銀に手招きをした。

「人の世界に紛れてる善の者の中に、協力してくれそうで家族と一緒に暮らしてない大金持ちはいないかしらね」

『ちょうどええおっさん知ってんで。ちょい聞いてくるわ』

それ誰?と聞く前に白銀は消えてしまい、私はあの日ぶりに向こうの世界を覗いてみる事にした。

どんよりとぶ厚い雲に覆われた空、そこにいる人達も元気がないように見えるのは神の渡りがないせい?
天司家の様子が気になってそちらに意識を向けると、おじい様が寝込んでいるのが見えた。
その姿につい先日までの元気そうなおじい様の姿はなく、私は大きなショックを受けたわ。
世界一から神が消えると与えられた加護も消え去る。
それでも生きていく事はできるけど、人からは神のおかげと思う事の全てが奪われ、残るのは悪神と魑魅魍魎の類だけ。
パパは神は信仰がなければ存在できないと言っていたけど、新しい世界を作ってそこでまた人を育てればいいだけだし、消滅するまでの猶予はかなりあるもの。
一度見限るともう戻る事はないから、裏切るのは得策ではないのだけど・・・今回の場合、神を怒らせたのは創星になるわ。
やっと区切りがついたのに、ほんの数時間で引き戻されるって何?

これって、怒ってもいいところよね?

殴りにでも行く?
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