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序章 時の大図書館の異変
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ここは時の大図書館。
無数にある全ての世界の書物からゲームまで、「創造」された物なら何でも置いてあり、利用者は下界で神と呼ばれた善神・悪神・邪神まで様々で、私以外は職員も利用者も識別不能、自分の事も話せなくなっているから、普段争っている神同士がここでは親友という事も多くある話だ。
24時間営業、冷暖房完備、ネットOK、どんな形態の方でも寛げる個室あり。
イートインスペースでは、1柱ずつに合わせた食事が用意できる。
どこかの世界のネットカフェ以上の快適空間である事から、ヒッキーになる神も結構いたりするわけで───。
「いい加減にして下さい!」
「後100年だけ!アリア殿、お願いでござる!」
私こと、空と空気の女神であるアリア・シエルは引き籠もりの神達を追い出そうと必死になっている。
「ベヒモス様とジズ様がお待ちなのですから、100年も待てませんよ。いい加減出禁にしますよ!」
下界時間で3000年も居座って自分が出て来る本からゲームまでの全てを網羅したリヴァイアサン様は、漫画に出てくるネタキャラ化した自分を気に入りすぎてすっかりオタクになってしまい、そろそろ世界を滅ぼしたいベヒモス様とジズ様は、ここ200年程はロビー(どんな形態でも座れる椅子あり)でお待ちになっている状態である。
お待ち頂いている間にと本を進めたのだけど、リヴァイアサン様と同じ穴の狢になりたくないと固辞された・・・賢い方達だよね。
よっこらしょと重い腰をあげたリヴァイアサン様は、扉を開けた所で何かを思い出したようで私を振り返った。
「この間読んだコレと、後はコレで異変が起きていたでござるよ」
「またですか・・・」
「下界で売られているものには異変はないでござるのか?」
「はい、この図書館にある物だけですね」
「許せんでござるな!」
ただでさえ怖い顔を更に怖くして唸ったリヴァイアサン様は、禍々しいオーラを出して憤るけど「ござる」が恐ろしさを軽減するどころかマイナスにしているから、下界では使わないように祈るばかりだ。
「対策は練っているので、リヴァイアサン様は早く行って下さいね」
背中をポンと叩いてロビーまで送ると、お二人が泣きながら抱きついていて、傍目には感動の再会だけど事情を知っている私はジト目でそれを見るのみ。
「世界を滅ぼしたら、また漫画になるでござるかな?」
「滅んだら漫画を書く人がいませんよ」
「ふむ、なら日本だけ滅ぼさずに置いておくでござるよ。あの国のアニメや漫画は最高でござる!」
わははと笑って去って行くリヴァイアサン様と、「ござるはやめろ」と叫びながら後を追うお二人の声が届く事を祈りながら、私は今日の大仕事を終えてスタッフルームへと足を向けながら利用者を見て回る。
「図書館の本は持ち出し禁止ですよ!消えたくなければ戻して下さいね」
「本を読みながらの飲食は禁止です!血が垂れてるじゃないですか!」
「ここでナンパするなら今度は永久に出禁ですよ!」
神様って大雑把な人が多すぎると思う・・・あ、私も神だっけ。
無数にある全ての世界の書物からゲームまで、「創造」された物なら何でも置いてあり、利用者は下界で神と呼ばれた善神・悪神・邪神まで様々で、私以外は職員も利用者も識別不能、自分の事も話せなくなっているから、普段争っている神同士がここでは親友という事も多くある話だ。
24時間営業、冷暖房完備、ネットOK、どんな形態の方でも寛げる個室あり。
イートインスペースでは、1柱ずつに合わせた食事が用意できる。
どこかの世界のネットカフェ以上の快適空間である事から、ヒッキーになる神も結構いたりするわけで───。
「いい加減にして下さい!」
「後100年だけ!アリア殿、お願いでござる!」
私こと、空と空気の女神であるアリア・シエルは引き籠もりの神達を追い出そうと必死になっている。
「ベヒモス様とジズ様がお待ちなのですから、100年も待てませんよ。いい加減出禁にしますよ!」
下界時間で3000年も居座って自分が出て来る本からゲームまでの全てを網羅したリヴァイアサン様は、漫画に出てくるネタキャラ化した自分を気に入りすぎてすっかりオタクになってしまい、そろそろ世界を滅ぼしたいベヒモス様とジズ様は、ここ200年程はロビー(どんな形態でも座れる椅子あり)でお待ちになっている状態である。
お待ち頂いている間にと本を進めたのだけど、リヴァイアサン様と同じ穴の狢になりたくないと固辞された・・・賢い方達だよね。
よっこらしょと重い腰をあげたリヴァイアサン様は、扉を開けた所で何かを思い出したようで私を振り返った。
「この間読んだコレと、後はコレで異変が起きていたでござるよ」
「またですか・・・」
「下界で売られているものには異変はないでござるのか?」
「はい、この図書館にある物だけですね」
「許せんでござるな!」
ただでさえ怖い顔を更に怖くして唸ったリヴァイアサン様は、禍々しいオーラを出して憤るけど「ござる」が恐ろしさを軽減するどころかマイナスにしているから、下界では使わないように祈るばかりだ。
「対策は練っているので、リヴァイアサン様は早く行って下さいね」
背中をポンと叩いてロビーまで送ると、お二人が泣きながら抱きついていて、傍目には感動の再会だけど事情を知っている私はジト目でそれを見るのみ。
「世界を滅ぼしたら、また漫画になるでござるかな?」
「滅んだら漫画を書く人がいませんよ」
「ふむ、なら日本だけ滅ぼさずに置いておくでござるよ。あの国のアニメや漫画は最高でござる!」
わははと笑って去って行くリヴァイアサン様と、「ござるはやめろ」と叫びながら後を追うお二人の声が届く事を祈りながら、私は今日の大仕事を終えてスタッフルームへと足を向けながら利用者を見て回る。
「図書館の本は持ち出し禁止ですよ!消えたくなければ戻して下さいね」
「本を読みながらの飲食は禁止です!血が垂れてるじゃないですか!」
「ここでナンパするなら今度は永久に出禁ですよ!」
神様って大雑把な人が多すぎると思う・・・あ、私も神だっけ。
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