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前編
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今日は中盤のイベントがある日だと朝からウキウキしていて、早めに学園に登校しようと思っていたのにどうしてこの人がここにいるの?
「おはよう、スカーレット王女」
目の前で爽やかな笑顔を見せるのは龍人族の王太子であるエアネスト殿下で、たっぷり30秒は呆然とした後にやっと思考が動いたわ。
「おはようございます·····エアネスト殿下。誰かお待ちですか?」
「私は貴女を迎えに来たのですが」
「ご冗談を」
間髪入れずに言うとピキッと空気が凍る音がしたけど、ここは聞こえないフリをするのが得策ね。
「では、私は用事がございますのでこれで失礼致します」
にこやかに言ってカーテシーをしてから脇をすり抜けようとしたんだけど、がっしりと腕を掴まれて動けない───龍人って力強すぎ!
「離して頂けませんか?」
「私は貴女を迎えに来たんだと言いましたよね?」
「私には迎えに来て頂く理由がございませんので」
それでも王女然とした顔は崩さず、にーっこりと微笑んでやると·····エアネスト殿下は何故か頬を染めたのよ。
いや待って?
この世界は乙女ゲームの『愛、狂わせて~魔族達の夜~』の世界で、攻略対象4人と特異体質を持つ人間のヒロインとの恋の物語よね?
1人を選ぶも逆ハー狙うもOK!だって私は特異体質だもん!な、どういうものなのか最後まで説明のない特異体質を持つヒロインに恋しないでどうするの。
私はスカーレット・ユベール。
前世の記憶を持つモブ王女よ。
吸血鬼族の第2王女で「こんな子、ゲームにいたっけ?」というのが第一印象だから、きっと影が薄いんだろう·····鏡で見てもぼんやりしか見えないし。
でも、悪役令嬢じゃなくて本当に良かった!
だってこのゲームはバッドエンドと悪役令嬢の断罪の多さがウリ。
悪役令嬢は4人いるけど婚約者ではなく、ファンクラブの過激派令嬢達よ。
人間以外には番がいるし、その方が現れるまで夢をみたいという所ね。
まぁ、番が見つかる確率は10パーセントにも満たないから、あわよくばという所もあるんでしょうが。
私はそんな夢は見ないの。
だって、だって私は、あの大量のスチルを間近で見たいだけなんだもの!
なのに·····なんなのかしらこの状況。
「離して頂けませんか?」
「無理」
む、敬語どこ行った。
このヤンデレ腹黒絶倫王太子が敬語じゃなくなるのはヒロインの前でだけで、その他大勢の私にそんな口調で話す筈がない!
「いい加減にして下さいませ。このような所を見られてはお困りになるのでは?」
「私は困らないが·····貴女は困るのかな?」
「そうですわね。(ヒロインが悲しむし、そうなるとスチルが見れなくなるし)困ります·····って痛いです!」
腕を掴む力がどんどん強くなり、骨が折れるんじゃないかと思う程に痛い!こいつ、か弱い王女に何してくれてんだ!
パッと霧に変化してその場から逃げると、後ろから「逃がさないよ」というエアネスト殿下の声がして全身に悪寒が走ったんだけど·····たった1日で何があったのよ!
大体、私はあんたなんか推しじゃないし!
ヤンデレ腹黒絶倫野郎は苦手なの!
影の薄さを利用して逃げまくってやるわよ!
大体、ヒロインと散々ベタベタしておいて今更こっちに来られても迷惑だし、私は1人で萌えを求めて生きていければ幸せなのよ。
お父様達も認めて(諦めて)下さっているし、学園を卒業したら王女なんてやめて記者になるの。
そうすれば、色んな国を巡りながら萌えを求める事ができるもの。
その野望を叶える為には、あんなヤンデレ腹黒絶倫野郎には捕まらないんだからね。
そうして、エアネスト殿下と私の追いかけっこが始まった───。
「おはよう、スカーレット王女」
目の前で爽やかな笑顔を見せるのは龍人族の王太子であるエアネスト殿下で、たっぷり30秒は呆然とした後にやっと思考が動いたわ。
「おはようございます·····エアネスト殿下。誰かお待ちですか?」
「私は貴女を迎えに来たのですが」
「ご冗談を」
間髪入れずに言うとピキッと空気が凍る音がしたけど、ここは聞こえないフリをするのが得策ね。
「では、私は用事がございますのでこれで失礼致します」
にこやかに言ってカーテシーをしてから脇をすり抜けようとしたんだけど、がっしりと腕を掴まれて動けない───龍人って力強すぎ!
「離して頂けませんか?」
「私は貴女を迎えに来たんだと言いましたよね?」
「私には迎えに来て頂く理由がございませんので」
それでも王女然とした顔は崩さず、にーっこりと微笑んでやると·····エアネスト殿下は何故か頬を染めたのよ。
いや待って?
この世界は乙女ゲームの『愛、狂わせて~魔族達の夜~』の世界で、攻略対象4人と特異体質を持つ人間のヒロインとの恋の物語よね?
1人を選ぶも逆ハー狙うもOK!だって私は特異体質だもん!な、どういうものなのか最後まで説明のない特異体質を持つヒロインに恋しないでどうするの。
私はスカーレット・ユベール。
前世の記憶を持つモブ王女よ。
吸血鬼族の第2王女で「こんな子、ゲームにいたっけ?」というのが第一印象だから、きっと影が薄いんだろう·····鏡で見てもぼんやりしか見えないし。
でも、悪役令嬢じゃなくて本当に良かった!
だってこのゲームはバッドエンドと悪役令嬢の断罪の多さがウリ。
悪役令嬢は4人いるけど婚約者ではなく、ファンクラブの過激派令嬢達よ。
人間以外には番がいるし、その方が現れるまで夢をみたいという所ね。
まぁ、番が見つかる確率は10パーセントにも満たないから、あわよくばという所もあるんでしょうが。
私はそんな夢は見ないの。
だって、だって私は、あの大量のスチルを間近で見たいだけなんだもの!
なのに·····なんなのかしらこの状況。
「離して頂けませんか?」
「無理」
む、敬語どこ行った。
このヤンデレ腹黒絶倫王太子が敬語じゃなくなるのはヒロインの前でだけで、その他大勢の私にそんな口調で話す筈がない!
「いい加減にして下さいませ。このような所を見られてはお困りになるのでは?」
「私は困らないが·····貴女は困るのかな?」
「そうですわね。(ヒロインが悲しむし、そうなるとスチルが見れなくなるし)困ります·····って痛いです!」
腕を掴む力がどんどん強くなり、骨が折れるんじゃないかと思う程に痛い!こいつ、か弱い王女に何してくれてんだ!
パッと霧に変化してその場から逃げると、後ろから「逃がさないよ」というエアネスト殿下の声がして全身に悪寒が走ったんだけど·····たった1日で何があったのよ!
大体、私はあんたなんか推しじゃないし!
ヤンデレ腹黒絶倫野郎は苦手なの!
影の薄さを利用して逃げまくってやるわよ!
大体、ヒロインと散々ベタベタしておいて今更こっちに来られても迷惑だし、私は1人で萌えを求めて生きていければ幸せなのよ。
お父様達も認めて(諦めて)下さっているし、学園を卒業したら王女なんてやめて記者になるの。
そうすれば、色んな国を巡りながら萌えを求める事ができるもの。
その野望を叶える為には、あんなヤンデレ腹黒絶倫野郎には捕まらないんだからね。
そうして、エアネスト殿下と私の追いかけっこが始まった───。
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