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第十章: ゴーン・キング
第七話
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「アンタ誰だ」
俺の第一声はこれだった。一番の疑問がこれだからだ。コーヘンは確かに俺の目の前で殺された。だったらここに居るコーヘンは何者なんだ。
「僕はコーヘンだよ。それに偽りはない」
「嘘だ!俺はアンタが殺されるとこを見たんだ!何者なんだ、アンタは!さっさと答えろ!!!」
「ふう、どこから説明すればいいかな」
少し疲れた様子でコーヘンが言った。理解を示さない俺に対しての苛立ちだろう。
「何て言えばいいのかな。今時の言い方をすれば、僕はコーヘン(元祖)かな」
(元祖)って(笑)みたいな用法をするな。
「それかコーヘン(過去)の方がいいかな?」
過去?元祖?どういうことだよそれ。
「リ・スイに殺された僕は、現在のコーヘン。そしてこの僕が過去のコーヘン。これで分かるかな?」
さっぱり分からん。何を言ってるんだコイツは。
「困惑してる様子だね。じゃあ一から全て説明するね。いや、君のビーストで見てくれないか?そっちの方が分かりやすいと思うんだ」
一体何がしたいんだ、コイツは。さっきから話が見えてこない。
「さあ、早く」
記憶を見るには俺の能力を使った方がいい。それにあっちも使えと言ってるんだ。だったらお言葉に甘えて能力を使わせて貰おう。
まずエレメントで犬の形を作り、俺は国王の前でズボンのチャックを少しずらした。その隙間から魂を出し、さっき作った犬に注入した。
犬は段々と生き物らしい色になり、耳から首、そして脚を動かし始めた。
「コーヘンを攻撃しろ!」
犬は俺の命令通りに動いた。コーヘンの腕に犬は噛り付き、俺はコーヘンの記憶の中に入ることに成功した。
ジジジジジ……
赤い絨毯に王座。
場所が変わったようには見えなかったが、王座にいた人物を見て、これがコーヘンの記憶だと分かった。
そこに座っていたのは見知らぬ老人だった。白髪頭だが禿げてはおらず、どこかの偉人といったような風貌をしている。
「コーヘン、カオス。二人に折り入って頼みがある」
老人はこう切り出した。
「何でしょう、神様」
コーヘンとカオスらしき奴が跪きながら言っている。それより、この爺さんが神なのか?普通の人間に見えるんだが。
「お主ら二人の能力を使い、未来がどうなっているか見に行ってはくれまいか」
コーヘンとカオスはお互いに顔を見合わせ、「何かご不満があるのですか?」とコーヘンが聞いた。
「不満とは異なるが、単なる興味本位だ」
「左様ですか。我々が出来ることなら何なりと」
カオスはコーヘンと違って冷徹そうな、真面目な顔をしている。同じ国王でもコーヘンが太陽だとすると、カオスは月と言った所だろうか。
「未来を司るコーヘン、過去を司るカオス。二人で協力し未来を視察、そして我に報告せよ」
「はっ!」
二人は王の間を出て、さっそく準備に取り掛かった。
未来と過去。
コーヘン(過去)はそう言う意味だったのか。だったら、このコーヘンの記憶が真実と言うことか。それより二人は何で仲違いしたのだろうか。それに神は何処へ行ってしまったのだろうか。
軍の本部で俺がクラフティングの練習をした場所でコーヘンはビーストを創った。
錆びれたロボットのような見た目。
大きな腹部には何も付いてなくて、中身は丸見えだった。中は時計仕掛けになっていて、歯車が噛み合ってギリギリと音を立てながら動いている。
「準備はいいかい、カオス」
「ああ、いつでも行ける。ただタイムフリーズには気を付けろ」
「そうだね」
タイムフリーズ?記憶を見ても分からないことだらけだ。
コーヘンとカオスはロボットの脚に手を置き、ロボット型ビーストは動き始めた。するとロボットの周りの時空が歪み始めた。俺もこの世界に来て感覚が鈍ったのか、時空が歪んでるのを見ても不思議に思わなくなっている。
歪みの中に吸い込まれるように、ビースト含む三人はどこかへと消えてしまった。
–––––––––––
ジジジジジ……
ここはどこだ?
町中か?見覚えのある町並みだな。あっ、思い出したぞ。ここはアナと始めてあった町だ。でも俺が来たときよりも荒廃としてるな。建物は形こそ残っているが、ほとんどが黒焦げになっている。
「どうなってるんだ」
「よく分からないけど調べる必要がありそうだね」
コーヘンたちも混乱しているみたいだ。
「でもこれ、尋常じゃない程の炎じゃないと無理だよね」
「まさか、神様がやったとでも?」
「そんなことはあり得ないよね。あの神様がそ……」
ズシン!
コーヘンが文章を終わらせる前に燃えた家の一部が落ちてきた。そして、それはコーヘンを直撃した。
–––––––––––
ジジジジジ……
また飛んだのか。
今回は相当場面が変わりそうだな。
今、俺は家の一室にいた。
外から見た訳ではないが、壁を見る限りここはログハウスのようだった。色合いも匂いもまんまログハウスだ。そして部屋の中にはベッドがあり、そこにはコーヘンが眠っていた。
キイ。
扉が開き、入って来たのはアナと同じくらいの小さな女の子。茶髪のおさげで栗色の目をしていて、丸で人形のような見た目をしていた。
女の子はトレイを持っていて、その上には水とスープ、そしてパンがあった。コーヘンにでもあげるんだろうか。
「うぅ……」
コーヘンが起きたみたいだ。
「目が覚めた、おじさん?」
「どこだここは……?カオスは?」
「カオス??ああ、もう一人のおじさんならちょっと外に出るって言って行っちゃったよ。もうすぐ帰って来るんじゃないかな」
「君は……誰だ……?」
女の子はトレイをテーブルに置き、綺麗な茶髪のおさげをユラユラさせながら応えた。
「私はフェイ。よろしくね!」
俺の第一声はこれだった。一番の疑問がこれだからだ。コーヘンは確かに俺の目の前で殺された。だったらここに居るコーヘンは何者なんだ。
「僕はコーヘンだよ。それに偽りはない」
「嘘だ!俺はアンタが殺されるとこを見たんだ!何者なんだ、アンタは!さっさと答えろ!!!」
「ふう、どこから説明すればいいかな」
少し疲れた様子でコーヘンが言った。理解を示さない俺に対しての苛立ちだろう。
「何て言えばいいのかな。今時の言い方をすれば、僕はコーヘン(元祖)かな」
(元祖)って(笑)みたいな用法をするな。
「それかコーヘン(過去)の方がいいかな?」
過去?元祖?どういうことだよそれ。
「リ・スイに殺された僕は、現在のコーヘン。そしてこの僕が過去のコーヘン。これで分かるかな?」
さっぱり分からん。何を言ってるんだコイツは。
「困惑してる様子だね。じゃあ一から全て説明するね。いや、君のビーストで見てくれないか?そっちの方が分かりやすいと思うんだ」
一体何がしたいんだ、コイツは。さっきから話が見えてこない。
「さあ、早く」
記憶を見るには俺の能力を使った方がいい。それにあっちも使えと言ってるんだ。だったらお言葉に甘えて能力を使わせて貰おう。
まずエレメントで犬の形を作り、俺は国王の前でズボンのチャックを少しずらした。その隙間から魂を出し、さっき作った犬に注入した。
犬は段々と生き物らしい色になり、耳から首、そして脚を動かし始めた。
「コーヘンを攻撃しろ!」
犬は俺の命令通りに動いた。コーヘンの腕に犬は噛り付き、俺はコーヘンの記憶の中に入ることに成功した。
ジジジジジ……
赤い絨毯に王座。
場所が変わったようには見えなかったが、王座にいた人物を見て、これがコーヘンの記憶だと分かった。
そこに座っていたのは見知らぬ老人だった。白髪頭だが禿げてはおらず、どこかの偉人といったような風貌をしている。
「コーヘン、カオス。二人に折り入って頼みがある」
老人はこう切り出した。
「何でしょう、神様」
コーヘンとカオスらしき奴が跪きながら言っている。それより、この爺さんが神なのか?普通の人間に見えるんだが。
「お主ら二人の能力を使い、未来がどうなっているか見に行ってはくれまいか」
コーヘンとカオスはお互いに顔を見合わせ、「何かご不満があるのですか?」とコーヘンが聞いた。
「不満とは異なるが、単なる興味本位だ」
「左様ですか。我々が出来ることなら何なりと」
カオスはコーヘンと違って冷徹そうな、真面目な顔をしている。同じ国王でもコーヘンが太陽だとすると、カオスは月と言った所だろうか。
「未来を司るコーヘン、過去を司るカオス。二人で協力し未来を視察、そして我に報告せよ」
「はっ!」
二人は王の間を出て、さっそく準備に取り掛かった。
未来と過去。
コーヘン(過去)はそう言う意味だったのか。だったら、このコーヘンの記憶が真実と言うことか。それより二人は何で仲違いしたのだろうか。それに神は何処へ行ってしまったのだろうか。
軍の本部で俺がクラフティングの練習をした場所でコーヘンはビーストを創った。
錆びれたロボットのような見た目。
大きな腹部には何も付いてなくて、中身は丸見えだった。中は時計仕掛けになっていて、歯車が噛み合ってギリギリと音を立てながら動いている。
「準備はいいかい、カオス」
「ああ、いつでも行ける。ただタイムフリーズには気を付けろ」
「そうだね」
タイムフリーズ?記憶を見ても分からないことだらけだ。
コーヘンとカオスはロボットの脚に手を置き、ロボット型ビーストは動き始めた。するとロボットの周りの時空が歪み始めた。俺もこの世界に来て感覚が鈍ったのか、時空が歪んでるのを見ても不思議に思わなくなっている。
歪みの中に吸い込まれるように、ビースト含む三人はどこかへと消えてしまった。
–––––––––––
ジジジジジ……
ここはどこだ?
町中か?見覚えのある町並みだな。あっ、思い出したぞ。ここはアナと始めてあった町だ。でも俺が来たときよりも荒廃としてるな。建物は形こそ残っているが、ほとんどが黒焦げになっている。
「どうなってるんだ」
「よく分からないけど調べる必要がありそうだね」
コーヘンたちも混乱しているみたいだ。
「でもこれ、尋常じゃない程の炎じゃないと無理だよね」
「まさか、神様がやったとでも?」
「そんなことはあり得ないよね。あの神様がそ……」
ズシン!
コーヘンが文章を終わらせる前に燃えた家の一部が落ちてきた。そして、それはコーヘンを直撃した。
–––––––––––
ジジジジジ……
また飛んだのか。
今回は相当場面が変わりそうだな。
今、俺は家の一室にいた。
外から見た訳ではないが、壁を見る限りここはログハウスのようだった。色合いも匂いもまんまログハウスだ。そして部屋の中にはベッドがあり、そこにはコーヘンが眠っていた。
キイ。
扉が開き、入って来たのはアナと同じくらいの小さな女の子。茶髪のおさげで栗色の目をしていて、丸で人形のような見た目をしていた。
女の子はトレイを持っていて、その上には水とスープ、そしてパンがあった。コーヘンにでもあげるんだろうか。
「うぅ……」
コーヘンが起きたみたいだ。
「目が覚めた、おじさん?」
「どこだここは……?カオスは?」
「カオス??ああ、もう一人のおじさんならちょっと外に出るって言って行っちゃったよ。もうすぐ帰って来るんじゃないかな」
「君は……誰だ……?」
女の子はトレイをテーブルに置き、綺麗な茶髪のおさげをユラユラさせながら応えた。
「私はフェイ。よろしくね!」
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