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第十章: ゴーン・キング
第六話
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目の前でコーヘンが殺された。
矢で胸を一突き。即死だっただろう。
俺はコーヘンを助けることも、スイを倒すことも出来なかった。スイに背後を取られ、一突き。俺も死んだんだろうか?
いや、そんなことはない。
俺の目の前に広がってるのは白い天井だからだ。
見覚えのある純白の天井。
ここはノースエンドの病院だ。国王を殺害され、生き残り、ノコノコと帰還した兵士は俺だ。俺は国民全員から批判されるべきだ。アルバッドに信頼され一人でコーヘンを助けに行った結果がこれだ。大天使の名に恥じるような行為をしたんだ。死後の世界でも、俺はお荷物なんだ。
ガラガラと扉が開いた。
アルバッドがこっちに歩いて来ている。この世界から追放されるんだろう。
「出来したぞ、ハジメ!」
そうそう、俺は失敗したん……今なんて?
「何をすっとぼけた顔をしてるんだ、救世主さんよ」
何言ってんだコイツは。
「気絶したショックで記憶が飛んでるんじゃないか?」
「何が起きたんだ、アルバッド!」
俺が急に叫んだことに驚いたのか、少し間を置いてアルバッドは話し始めた。
「コーヘン様は君と一緒に戻って来たんだよ、ハジメ。あのスイを撃退したそうじゃないか」
本当に何言ってんだよ。コーヘンは殺されたんだぞ。俺もスイにやられたんだぞ!
「納得がいかないか?後でコーヘン様に会いに行けばいい。今は安静にな」
俺は放心状態のままで、アルバッドが出て行ったのに気付かなかった。
ガラガラ。
「やっほー」
しばらくして入って来たのはアナ、ノア、ヴァン、そしてアーロンだった。
「体調はどうだい、ハジメ君」
「大分マシになったよ、ありがとう」
アーロンに応えたが、内心ちっともマシになっていない。未だに状況を理解出来てないからな。
「お疲れハジメ~」
寝ていた俺の上にアナがずしんと乗っかって来た。
「グハッ」
身体の節々が痛む。苦痛の表情を見て悟ったのか、「あっごめん」と言いアナはどいてくれた。
「アナ姉ちゃん、ちょっと落ち着いて」
ヴァンがアナを落ち着かせた。いつもなら無言なヴァンだが、自分の意見を姉にも言えるようになったみたいだ。
ノアは俺の心を読んでいたのか、少し困惑している様子だった。コーヘンが殺されたことに関して気になっているんだろう。
「来てくれてありがとう、皆んな。でも今はちょっと休ませてくれるか?」
「何かあったら教えてくれ、すぐに来るから」
「また来るねハジメ!」
「じゃあ、またねハジメ兄ちゃん」
全員が出ようとしたが、俺はノアを引き止めた。
「俺の声が聞こえるか?」
「ああ」
ノアも気になっている様子だ。
「何があったのか話してくれ、ハジメ」
俺はノアたちと別れた後に起きたことを全て話した。神の子が神ということは隠しておきたかったが、ノアに隠し事は通用しないことに気付き、俺は諦めた。
「そうか。国王のことは今は誰にも言うべきじゃないな。逆に混乱させてしまう」
「あんま驚かないんだな」
「神に関しては合点がいくからな」
「どういうことだよ、俺にはさっぱり分からん」
「前にも言ったが、我々の能力は六感に大きく関係している。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、そして思覚。それを一つにまとめたら一人の人間になるからな」
「ってことはつまり……」
「我々は神の一部ってことだ」
「コーヘンのことは?」
「それに関しては分からない。ただきな臭いのは事実だ。とにかく、ハジメは一回国王に会って話をしてくれ。何かを隠している可能性がある」
「俺が殺されるって可能性は考えねえのか」
「死なないだろう。ハジメが殺されなかったのにも理由がありそうだからな」
確かにノアの言う通りだ。マルクも計画がどうとか言ってたしな。こればかりは本人たちに聞かないと分からない。
「ノア、カンナはどうだ」
「元気そうだが、内心はそうは思っていないらしい」
「そうなのか……何て言ってた?」
「それは自分で聞くがいい。甘えるな」
言い方に棘があるな、流石はノア君。
キリッと睨まれ、俺は黙った。
「来たみたいだぞ。では私はこれで失礼する。また進展があれば教えてくれ。いつでも聞いている」
ノアと入れ替える状態でカンナが入って来た。何だかムスッとしているように見える。
「よお、カンナ。元気か?」
カンナにも睨まれる俺。睨まれるのは一人で良いよ、本当に。でもそんなカンナも可愛いな。
「キルティ君が亡くなった時、ハジメがどうなったか覚えてる?」
「そりゃ覚えてるよ。闇に飲み込まれそうになって暴れたんだ」
「アカツチでも一人で敵と戦ってたわね」
「おお、カイトは悪い奴じゃねえぞ」
「今回も一人でコーヘン様を助けに行ったし」
「ああ、そうだな」
最後のに関しては助けれてないけどな。
「私が何を言いたいか分かる!?」
急になんだ?ひょっとして怒られてんのか、俺。
「え、えっと、一人で突っ走るなってことか?」
「それもそうだけど、もう心配かけるようなことはしないで!ハジメが一人でどっか行っちゃう気がして、、、私も、皆んなも心配なんだから……!!!」
「ごめんな、もう大丈夫だから」
カンナの頭に手を置き、俺は呟いた。でもこの時顔を見られないで良かった。俺の顔はきっと笑ってなかったからな。今からすることを知られたら、また心配をかけちまう。それだけは避けたい。
カンナは仕事が残っているらしく、早々に帰ってしまった。まだ安静にしていないといけないはずだが、俺はコーヘンの元へと急いだ。
両開きの扉を開き、コーヘンは赤い絨毯の向こうに位置している王座に座っていた。
「待っていたよ、ハジメ君」
コーヘンは肘をつきながら笑っていた。
矢で胸を一突き。即死だっただろう。
俺はコーヘンを助けることも、スイを倒すことも出来なかった。スイに背後を取られ、一突き。俺も死んだんだろうか?
いや、そんなことはない。
俺の目の前に広がってるのは白い天井だからだ。
見覚えのある純白の天井。
ここはノースエンドの病院だ。国王を殺害され、生き残り、ノコノコと帰還した兵士は俺だ。俺は国民全員から批判されるべきだ。アルバッドに信頼され一人でコーヘンを助けに行った結果がこれだ。大天使の名に恥じるような行為をしたんだ。死後の世界でも、俺はお荷物なんだ。
ガラガラと扉が開いた。
アルバッドがこっちに歩いて来ている。この世界から追放されるんだろう。
「出来したぞ、ハジメ!」
そうそう、俺は失敗したん……今なんて?
「何をすっとぼけた顔をしてるんだ、救世主さんよ」
何言ってんだコイツは。
「気絶したショックで記憶が飛んでるんじゃないか?」
「何が起きたんだ、アルバッド!」
俺が急に叫んだことに驚いたのか、少し間を置いてアルバッドは話し始めた。
「コーヘン様は君と一緒に戻って来たんだよ、ハジメ。あのスイを撃退したそうじゃないか」
本当に何言ってんだよ。コーヘンは殺されたんだぞ。俺もスイにやられたんだぞ!
「納得がいかないか?後でコーヘン様に会いに行けばいい。今は安静にな」
俺は放心状態のままで、アルバッドが出て行ったのに気付かなかった。
ガラガラ。
「やっほー」
しばらくして入って来たのはアナ、ノア、ヴァン、そしてアーロンだった。
「体調はどうだい、ハジメ君」
「大分マシになったよ、ありがとう」
アーロンに応えたが、内心ちっともマシになっていない。未だに状況を理解出来てないからな。
「お疲れハジメ~」
寝ていた俺の上にアナがずしんと乗っかって来た。
「グハッ」
身体の節々が痛む。苦痛の表情を見て悟ったのか、「あっごめん」と言いアナはどいてくれた。
「アナ姉ちゃん、ちょっと落ち着いて」
ヴァンがアナを落ち着かせた。いつもなら無言なヴァンだが、自分の意見を姉にも言えるようになったみたいだ。
ノアは俺の心を読んでいたのか、少し困惑している様子だった。コーヘンが殺されたことに関して気になっているんだろう。
「来てくれてありがとう、皆んな。でも今はちょっと休ませてくれるか?」
「何かあったら教えてくれ、すぐに来るから」
「また来るねハジメ!」
「じゃあ、またねハジメ兄ちゃん」
全員が出ようとしたが、俺はノアを引き止めた。
「俺の声が聞こえるか?」
「ああ」
ノアも気になっている様子だ。
「何があったのか話してくれ、ハジメ」
俺はノアたちと別れた後に起きたことを全て話した。神の子が神ということは隠しておきたかったが、ノアに隠し事は通用しないことに気付き、俺は諦めた。
「そうか。国王のことは今は誰にも言うべきじゃないな。逆に混乱させてしまう」
「あんま驚かないんだな」
「神に関しては合点がいくからな」
「どういうことだよ、俺にはさっぱり分からん」
「前にも言ったが、我々の能力は六感に大きく関係している。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、そして思覚。それを一つにまとめたら一人の人間になるからな」
「ってことはつまり……」
「我々は神の一部ってことだ」
「コーヘンのことは?」
「それに関しては分からない。ただきな臭いのは事実だ。とにかく、ハジメは一回国王に会って話をしてくれ。何かを隠している可能性がある」
「俺が殺されるって可能性は考えねえのか」
「死なないだろう。ハジメが殺されなかったのにも理由がありそうだからな」
確かにノアの言う通りだ。マルクも計画がどうとか言ってたしな。こればかりは本人たちに聞かないと分からない。
「ノア、カンナはどうだ」
「元気そうだが、内心はそうは思っていないらしい」
「そうなのか……何て言ってた?」
「それは自分で聞くがいい。甘えるな」
言い方に棘があるな、流石はノア君。
キリッと睨まれ、俺は黙った。
「来たみたいだぞ。では私はこれで失礼する。また進展があれば教えてくれ。いつでも聞いている」
ノアと入れ替える状態でカンナが入って来た。何だかムスッとしているように見える。
「よお、カンナ。元気か?」
カンナにも睨まれる俺。睨まれるのは一人で良いよ、本当に。でもそんなカンナも可愛いな。
「キルティ君が亡くなった時、ハジメがどうなったか覚えてる?」
「そりゃ覚えてるよ。闇に飲み込まれそうになって暴れたんだ」
「アカツチでも一人で敵と戦ってたわね」
「おお、カイトは悪い奴じゃねえぞ」
「今回も一人でコーヘン様を助けに行ったし」
「ああ、そうだな」
最後のに関しては助けれてないけどな。
「私が何を言いたいか分かる!?」
急になんだ?ひょっとして怒られてんのか、俺。
「え、えっと、一人で突っ走るなってことか?」
「それもそうだけど、もう心配かけるようなことはしないで!ハジメが一人でどっか行っちゃう気がして、、、私も、皆んなも心配なんだから……!!!」
「ごめんな、もう大丈夫だから」
カンナの頭に手を置き、俺は呟いた。でもこの時顔を見られないで良かった。俺の顔はきっと笑ってなかったからな。今からすることを知られたら、また心配をかけちまう。それだけは避けたい。
カンナは仕事が残っているらしく、早々に帰ってしまった。まだ安静にしていないといけないはずだが、俺はコーヘンの元へと急いだ。
両開きの扉を開き、コーヘンは赤い絨毯の向こうに位置している王座に座っていた。
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コーヘンは肘をつきながら笑っていた。
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