テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす

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第十章: ゴーン・キング

第五話

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「待ちやがれ、スイ!」
追っ手が来るのが早すぎたのか、糸目の男は少し驚いた様子を見せた。そして俺の周りを左右交互に見た。

「あなただけみたいですね」
「ああ、俺の弟子が通してくれたんでな」
コイツにとっては予想外なんだろう。ここはちょっと精神的攻撃を与えてみよう。

「マルクはもう俺の仲間になったぜ。正直お前に勝ち目はないと思うが。諦めるなら今だぜ?」

スイは一瞬目を丸くしたが、フッと笑った。

「そうですか。一体どうやってマルクを手懐けたんですか?エロがどうとか言っていましたが、彼は相当なエロじゃないと納得しないと思いますが」
「その相当なエロレベルの持ち主なんだよ、俺は」
「そこまでとなると……まさか、あなた……」

何だ?何を考えてるんだ?

「まさか、あなたもテクノブレイカーなんですか?」

バレた!俺の唯一の(嘘)欠点が!

「えぇ……」
うそん、スイもコーヘンもドン引きじゃねえか!

「マルクより変態な人が存在するなんて」
何でちょっとショック受けてんだよ!確かに俺はエロに対して変な哲学を持っていますけども!

「まあ、そんなことはどうでもいいだろ。さっさとコーヘンを返せ!」
俺は話題を変えようと必死に叫んだ。

「必死ですね」
その必死ってどっちの?変態度を隠そうとしてるのが見え見えってこと?

「返しやがれ!」
俺は白濁の剣を出し、スイの方に走った。剣を振りかざしたが、ひらりとスイに避けられた。

「その純白の剣とは違って、持ち主は変態なんですね」
「黙れ、黙れ、黙れー!!!」
果たして俺は何と戦ってんだ。趣旨が全然違うじゃねえか。ってそれよりお前にはこれが純白に見えるのか。一応白濁なんだけどな。白く濁ってるはずなんだけどな。

どれだけ剣を振ってもスイは避けてくる。余裕綽々ってことか。

「私は争いたい訳ではないですよ」
「お前らの狙いは神の子じゃねえのか?何でコーヘンを誘拐した!」

スイはちらりと側にいたコーヘンを見た。

「神の過ちを正すためです」
「何だよそれ。神は消えたんじゃなかったのか」
「居るじゃないですか。いつも側にいて分からないんですか」

いつも側にいる?何言ってんだ、コイツは。

「まだ分かりませんか。神の子たちは神なのですよ」

神の子が神……?
アナとかノアとかが神?能力はともかく、アイツらが神な訳がない。欠点もあるし普通の子供みたいに無邪気なんだぞ。

「混乱しているようですね。まあちゃんとした説明はコーヘン様から聞いてください」

コーヘンから?疑問だらけだ。俺は何を知らないんだ。

「では、いいですかコーヘン様」
「ああ、頼むよ。迷惑をかけるね、スイ」
「いえ、また会いましょう」
「うん。ありがとう」

リ・スイはクラフティングで矢を作った。そしてそれでコーヘンの胸を一突き。縄で縛られているコーヘンは跪いた状態だったが、胸を貫かれた直後、バタンという音と共に顔から前に落ちた。

目の前の光景は現実なのか?意味不明だ。また会いましょうって何だよ。コーヘンから説明を聞けって言った直後に殺すとか意味わからねえよ。

「テメエェェ!!!」
俺は無我夢中で剣を振るっていた。だが攻撃は全て避けられた。

「争うつもりはないと言ったでしょう。しかし、少しキリがないですね」

そう言い、一瞬でスイは俺の背後を取った。そしてドスッという音と共に、目の前が真っ暗になった。
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