53 / 86
第七章: ロスト・イン・ライトニング
第八話
しおりを挟む
「こっちだな」
壁の傷は一つだけじゃなく、続いていて、随所に付けられていた。印を辿れってことだな。そうしたら、カンナたちがいる場所に辿り着けるって訳だ。
うわ、何だこれ。傷を頼りに道を進んでいると、床に銀色のグニャグニャの何かを見つけた。
「棘の罠だな」
キルティに言われ、再度確認すると、確かにそうだ。言われてみれば、俺たちの場所にもあった鉄の棘のトラップだ。ただ違うのは、これがグニャグニャで原型を留めていないこと。
俺の口許は自然と緩んでいた。
これはアナの仕業だろう。炎で棘を溶かしたってとこだな。ちゃんと皆んなを守って偉いじゃねえか。
炎は消えてるが、まだ熱を感じる。ってことは、近くにいるってことか。
「早く行こうぜ、キルティ」
アイツらと合流したら、こんなダンジョンすぐにクリア出来る。そしたら、オニオンズとか言うナルシストなダンジョンマスターに一発殴りを入れてやるんだ。
早歩きで動き始めたとき、目の前に扉が見えた。その眩しいほど白い扉は、ゆっくりと開き、扉の動きとは裏腹に、何かが素早い動きで出てきた。
出てきた『物』をキャッチした俺は、その正体に気付いた時、思わず声を上げてしまった。
「ノア!?」
何と、受け取った『物』の正体はボロボロになっていたノアだった。服は破れ、身体の至る所に傷や痣が見える。どうなってんだよ、これ。
「遅いぞ、二人とも」
ボロボロのノアは、息を上げながら言った。
「何があったんだ」
「十字架の男があの部屋で暴れている。早く行って助けろ」
「相変わらず口が悪いな。その調子だと大丈夫そうだな。後でお前も来いよ」
十字架の男ってコンスタンティンのことだな。アイツは完璧に武闘派。キルティが能力を使えればいい勝負をすると思うんだが、さてどうしたものか。ここで考えてても仕方ないな。戦いながら考えよう。
俺とキルティは、ノアが出てきた扉を開き、部屋へと入った。
中では壮絶な戦いが繰り広げられていた。空を飛び交うカンナとアーロン。そして下ではアナとヴァンが能力を使って応戦している。敵はコンスタンティン一人のようだが、正直言って、俺たちの方が苦戦しているように見えた。
「ガハハハハハ!大天使も神の子も大したことねえな!もっと強い奴はいねえのか!」
『うん?』
入ってきた俺たちに気付いたみたいだ。
「お前は、勇者様じゃねえか!ちっとは、強くなったみてえだな。丁度いい。全員まとめて相手してやるぜ」
コンスタンティンはただ戦闘を楽しんでるだけだ。敵でもゴンゾウやヨハン、ミラとかは嫌いじゃないが、コイツはどうも好きになれない。
「ヴァン!天井目掛けて攻撃出来るか?」
戦闘中のヴァンに注文を付けた。成功するか分からないが、これに賭けるしかない。
いつもヴァンは返答せずに行動に移す。それは今回も同じだった。ヴァンは何も言わずに天井に氷柱を撃った。
巨大な氷はハンマーの役割をし、コンスタンティンの頭上にあった天井は崩れ落ち、十字架男の上に落ちた。
これで倒せたら良いんだが、そう上手く行く訳がない。案の定、瓦礫の中から勢いよくコンスタンティンが飛び出てきた。瓦礫はこの男の力で飛び散り、砕けた。
「おい、勇者様はこんな姑息な手を使うのか。あのタマネギヘッドと同じじゃねえか。正々堂々と戦いやがれ!!!!」
タマネギヘッドって何だよ、と言いたくなったが、今はそんなこと気にしてる場合じゃない。コンスタンティンが怒り狂ってこっちに走って来ている。
「正々堂々と戦うぜ。俺じゃなくて、コイツだけどな!」
キルティが俺の前に出た。そう、天井をヴァンに開けさせたのには二つ理由があった。一つはコンスタンティンを足止めさせるため。皆んなも回復しないといけないからな。そして、本命はキルティ。天井を開けたことによって、能力を使えるようになったキルティは、もう誰にも止められない。
目にも留まらぬ動きで、キルティの蹴りが何発も入った。しかも、ただの蹴りじゃない。電気を纏った蹴りだ。これは、いくらコンスタンティンでも効くだろう。
『うががががががががががが!』
感電してる人はこう言う声を上げるのか。地味に怖いな。
少し焦げたコンスタンティンは、笑っていた。
「ガハハハハハ!コイツはたまげた!おま」
ビリビリ、ドスン。コンスタンティンが文章を終わらせる前に、キルティの攻撃が炸裂した。だが、今回は何やら様子がおかしかった。キルティの動きが止まっていた様に見えた。
いや、コンスタンティンが攻撃を止めたのか?
「兄ちゃんの蹴り、早えな。けどよ、もう慣れちまったぜ。だからよ、もっと早く出来ねえか?」
そう言い、コンスタンティンはキルティの右脚を捻り潰した。
『うがああああああああああ』
潰された脚を持ったまま、キルティは放り投げられた。脚を押さえ、苦しんでいるキルティを見て、俺たちが今、絶望的な状況にいることを認識した。
「キルティ!大丈夫か」
大丈夫な訳がない。右脚はもう使い物にならないんだ。
「大丈夫だ。俺の本来の力は雷を落とすこと。纏って力を増幅するのはオマケみたいな物だ」
「なに強がり言ってんだよ。お前はここで休んでろ」
「いや、それは選択肢にない。戦わせろ、ハジメ」
初めて名前で呼ばれた辺り、キルティの本気度が伝わってくる。
「分かった。お前は後ろから雷を落として、援護してくれ。カンナとアーロンも行けるか?」
「いつでもオッケーだよ」
「私も大丈夫」
「アナとヴァンは?」
「元気だよー」
「僕も元気‥‥‥」
よし、反撃開始だ。
壁の傷は一つだけじゃなく、続いていて、随所に付けられていた。印を辿れってことだな。そうしたら、カンナたちがいる場所に辿り着けるって訳だ。
うわ、何だこれ。傷を頼りに道を進んでいると、床に銀色のグニャグニャの何かを見つけた。
「棘の罠だな」
キルティに言われ、再度確認すると、確かにそうだ。言われてみれば、俺たちの場所にもあった鉄の棘のトラップだ。ただ違うのは、これがグニャグニャで原型を留めていないこと。
俺の口許は自然と緩んでいた。
これはアナの仕業だろう。炎で棘を溶かしたってとこだな。ちゃんと皆んなを守って偉いじゃねえか。
炎は消えてるが、まだ熱を感じる。ってことは、近くにいるってことか。
「早く行こうぜ、キルティ」
アイツらと合流したら、こんなダンジョンすぐにクリア出来る。そしたら、オニオンズとか言うナルシストなダンジョンマスターに一発殴りを入れてやるんだ。
早歩きで動き始めたとき、目の前に扉が見えた。その眩しいほど白い扉は、ゆっくりと開き、扉の動きとは裏腹に、何かが素早い動きで出てきた。
出てきた『物』をキャッチした俺は、その正体に気付いた時、思わず声を上げてしまった。
「ノア!?」
何と、受け取った『物』の正体はボロボロになっていたノアだった。服は破れ、身体の至る所に傷や痣が見える。どうなってんだよ、これ。
「遅いぞ、二人とも」
ボロボロのノアは、息を上げながら言った。
「何があったんだ」
「十字架の男があの部屋で暴れている。早く行って助けろ」
「相変わらず口が悪いな。その調子だと大丈夫そうだな。後でお前も来いよ」
十字架の男ってコンスタンティンのことだな。アイツは完璧に武闘派。キルティが能力を使えればいい勝負をすると思うんだが、さてどうしたものか。ここで考えてても仕方ないな。戦いながら考えよう。
俺とキルティは、ノアが出てきた扉を開き、部屋へと入った。
中では壮絶な戦いが繰り広げられていた。空を飛び交うカンナとアーロン。そして下ではアナとヴァンが能力を使って応戦している。敵はコンスタンティン一人のようだが、正直言って、俺たちの方が苦戦しているように見えた。
「ガハハハハハ!大天使も神の子も大したことねえな!もっと強い奴はいねえのか!」
『うん?』
入ってきた俺たちに気付いたみたいだ。
「お前は、勇者様じゃねえか!ちっとは、強くなったみてえだな。丁度いい。全員まとめて相手してやるぜ」
コンスタンティンはただ戦闘を楽しんでるだけだ。敵でもゴンゾウやヨハン、ミラとかは嫌いじゃないが、コイツはどうも好きになれない。
「ヴァン!天井目掛けて攻撃出来るか?」
戦闘中のヴァンに注文を付けた。成功するか分からないが、これに賭けるしかない。
いつもヴァンは返答せずに行動に移す。それは今回も同じだった。ヴァンは何も言わずに天井に氷柱を撃った。
巨大な氷はハンマーの役割をし、コンスタンティンの頭上にあった天井は崩れ落ち、十字架男の上に落ちた。
これで倒せたら良いんだが、そう上手く行く訳がない。案の定、瓦礫の中から勢いよくコンスタンティンが飛び出てきた。瓦礫はこの男の力で飛び散り、砕けた。
「おい、勇者様はこんな姑息な手を使うのか。あのタマネギヘッドと同じじゃねえか。正々堂々と戦いやがれ!!!!」
タマネギヘッドって何だよ、と言いたくなったが、今はそんなこと気にしてる場合じゃない。コンスタンティンが怒り狂ってこっちに走って来ている。
「正々堂々と戦うぜ。俺じゃなくて、コイツだけどな!」
キルティが俺の前に出た。そう、天井をヴァンに開けさせたのには二つ理由があった。一つはコンスタンティンを足止めさせるため。皆んなも回復しないといけないからな。そして、本命はキルティ。天井を開けたことによって、能力を使えるようになったキルティは、もう誰にも止められない。
目にも留まらぬ動きで、キルティの蹴りが何発も入った。しかも、ただの蹴りじゃない。電気を纏った蹴りだ。これは、いくらコンスタンティンでも効くだろう。
『うががががががががががが!』
感電してる人はこう言う声を上げるのか。地味に怖いな。
少し焦げたコンスタンティンは、笑っていた。
「ガハハハハハ!コイツはたまげた!おま」
ビリビリ、ドスン。コンスタンティンが文章を終わらせる前に、キルティの攻撃が炸裂した。だが、今回は何やら様子がおかしかった。キルティの動きが止まっていた様に見えた。
いや、コンスタンティンが攻撃を止めたのか?
「兄ちゃんの蹴り、早えな。けどよ、もう慣れちまったぜ。だからよ、もっと早く出来ねえか?」
そう言い、コンスタンティンはキルティの右脚を捻り潰した。
『うがああああああああああ』
潰された脚を持ったまま、キルティは放り投げられた。脚を押さえ、苦しんでいるキルティを見て、俺たちが今、絶望的な状況にいることを認識した。
「キルティ!大丈夫か」
大丈夫な訳がない。右脚はもう使い物にならないんだ。
「大丈夫だ。俺の本来の力は雷を落とすこと。纏って力を増幅するのはオマケみたいな物だ」
「なに強がり言ってんだよ。お前はここで休んでろ」
「いや、それは選択肢にない。戦わせろ、ハジメ」
初めて名前で呼ばれた辺り、キルティの本気度が伝わってくる。
「分かった。お前は後ろから雷を落として、援護してくれ。カンナとアーロンも行けるか?」
「いつでもオッケーだよ」
「私も大丈夫」
「アナとヴァンは?」
「元気だよー」
「僕も元気‥‥‥」
よし、反撃開始だ。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。


異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる