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第七章: ロスト・イン・ライトニング
第七話
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あー疲れた。
もうかれこれ二時間くらい歩いてるか。落石罠の部屋を出てから、何回も同じ場所をぐるぐる回って迷ったり、床から鉄の棘が出て来たり、壁が炎を吹いたりで、心身ともに疲れていた。
「どこがゴールなんだよ!!!」
心の叫びを上げたとこで状況は何も変わらないが、気分はマシになった。
「誰に叫んでるんだ、貴様は」
雷小僧もいつも通り嫌な感じだが、以前よりは口数が増えている。少しだけ親しくなった感じだな。
「ここに居ても仕方ねえ。次はあっちだ、キルティ」
俺たちは、しらみつぶしに色んな道に行く作戦に出ていた。このダンジョン、迷路みたいに入り組んでて、どこに何があるのか全く見当もつかない。行き当たりばったりだが、これが一番成功するような気がする。
ノアが俺の声を聞いてくれていると良いが、それでも俺たちの居場所が分かる訳じゃない。こんなデカいダンジョンで、合流するのはほぼ不可能だ。
一歩踏み出そうとした瞬間、俺は足に違和感を感じた。下を見てみると、俺の右足は何かを踏んでいた。
うわあ、これ絶対スイッチだ。罠が作動するスイッチだわ。これって足離したら作動するやつ?それとも押した時点でアウト?その答えは、すぐに分かった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥‥
遠くから聞こえてくる、この音。このダンジョンで何回聞いただろうか。前方に見えたのは、巨大な岩。そして、それは俺たちの方へと向かって来た。うん、これはスイッチを押した時点でアウトのやつだ。
「走れええええええ!!!!」
この展開、よく映画とかで見るやつだ。デケえ岩とか、踏切歩いてたら電車が来るとか。あれって、何で横に逃げないんだ?って思ってたが、今なら理解出来る。
考える余裕なんてねェんだ!!!!
だが、必死に走ってると、いつか気付く。このままだと死ぬ、と。そこでやっと気付くんだ。横に避ければいいんじゃねえか、と。
ふと前を向くと、壁が見えた。行き止まりかよ。しかも、ご丁寧に横に逃げるスペースまである。オニオンズとか言うサウス軍の奴は、アクション映画の見過ぎだろ。
俺たちはハリウッド顔負けの飛び込みを見せ、転がる巨大岩を何とか避けることが出来た。岩は壁にぶつかった所で止まっていた。
「ふう、間一髪だったな。大丈夫か、キルティ」
「ああ、問題ない」
能力が使えないキルティは、どことなく苛ついていた。そりゃそうだ、こんな巨岩、能力が使えれば粉砕できるからな。キルティは立ち上がり、岩の方を見て、こう言った。
「おい、これを見てみろ」
なんだ?岩がある方を向くと、壁が衝撃で壊れているのが見えた。ただ、普通に壊れていたのではなく、その先に何かがあった。
「道が続いてるぞ」
巨岩から覗くキルティが言った。
俺たちは巨岩と壁の間の隙間を通り、向こう側の道へと進んだ。なぜ向こう側と言っているのかと言うと、壁の向こうが、こっち側とは全く異なっていたからだ。
まず、今まで俺たちが歩いていたダンジョンは暗く、松明が唯一の灯りだった。だが、何だこれは。壁の向こうは、目がチカチカするほど明るかった。SF映画とかで良く見る蛍光灯をたんまりと使ったような、真っ白な世界が広がっていた。
「そう言うことか」
「何がだ」
少しの間、沈黙すると、
「ちゃんと説明しろ、貴様!」
とキルティに怒鳴られた。
「うるせえよ。考えてたんだよ。もしかして、キルティ君、気になっちゃいましたか?」
わざとらしくププッと笑い、キルティを挑発した。ノア程じゃないが、コイツも弄りがいがあるな。
「いいか、結論から言うと、このダンジョンは二つの部分で構成されてんだ。この二つを、そうだな、光と闇と呼ぼう。闇が俺たちのいた部分。そして光がカンナたちのいる所だ。元々この二つは繋がってなかったんだろうな。それで、たまたま俺が巨岩のトラップを作動させちまって、間一髪で逃げて、壁に穴が開いて、繋がることのなかった二つのダンジョンが繋がったんだ。でも逃げ場所が用意されてたり、壁が開くように仕掛けられた罠とか、オニオンズって奴は楽しんでやがるな」
これでカンナたちに会える、と思っていたが、もしアイツらもこの仕掛けに気付いていたら、入れ違いになるかもしれない。いや、待てよ。こういう時のノア君じゃねえか。
『ノア、聞こえるか?
今、俺たちはお前らがいるダンジョンの部分に着いたんだが、大きな音が聞こえたりしなかったか?そこに俺たちは居るから、もし来れるなら来てくれ。入れ違いしないために、ここで待ってるからな』
これで聞こえるだろうか?
「じゃあ、ここで待つか」
そう言っても、キルティは明後日の方向を向いていた。人の話を聞けないのか、コイツは。
「おい、聞いてんのか?」
「待つ必要はないみたいだぞ。これを見ろ」
今度は何だよ。新しいダンジョンへの入り口でも見つけたのか?
キルティが見ていたのは、壁に付いた傷跡だった。これの何が特別なのかに気付くのに、少し時間がかかった。
「やるじゃねえか、ノア」
この傷が何を意味するのか理解したとき、俺はそう呟いた。
もうかれこれ二時間くらい歩いてるか。落石罠の部屋を出てから、何回も同じ場所をぐるぐる回って迷ったり、床から鉄の棘が出て来たり、壁が炎を吹いたりで、心身ともに疲れていた。
「どこがゴールなんだよ!!!」
心の叫びを上げたとこで状況は何も変わらないが、気分はマシになった。
「誰に叫んでるんだ、貴様は」
雷小僧もいつも通り嫌な感じだが、以前よりは口数が増えている。少しだけ親しくなった感じだな。
「ここに居ても仕方ねえ。次はあっちだ、キルティ」
俺たちは、しらみつぶしに色んな道に行く作戦に出ていた。このダンジョン、迷路みたいに入り組んでて、どこに何があるのか全く見当もつかない。行き当たりばったりだが、これが一番成功するような気がする。
ノアが俺の声を聞いてくれていると良いが、それでも俺たちの居場所が分かる訳じゃない。こんなデカいダンジョンで、合流するのはほぼ不可能だ。
一歩踏み出そうとした瞬間、俺は足に違和感を感じた。下を見てみると、俺の右足は何かを踏んでいた。
うわあ、これ絶対スイッチだ。罠が作動するスイッチだわ。これって足離したら作動するやつ?それとも押した時点でアウト?その答えは、すぐに分かった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥‥
遠くから聞こえてくる、この音。このダンジョンで何回聞いただろうか。前方に見えたのは、巨大な岩。そして、それは俺たちの方へと向かって来た。うん、これはスイッチを押した時点でアウトのやつだ。
「走れええええええ!!!!」
この展開、よく映画とかで見るやつだ。デケえ岩とか、踏切歩いてたら電車が来るとか。あれって、何で横に逃げないんだ?って思ってたが、今なら理解出来る。
考える余裕なんてねェんだ!!!!
だが、必死に走ってると、いつか気付く。このままだと死ぬ、と。そこでやっと気付くんだ。横に避ければいいんじゃねえか、と。
ふと前を向くと、壁が見えた。行き止まりかよ。しかも、ご丁寧に横に逃げるスペースまである。オニオンズとか言うサウス軍の奴は、アクション映画の見過ぎだろ。
俺たちはハリウッド顔負けの飛び込みを見せ、転がる巨大岩を何とか避けることが出来た。岩は壁にぶつかった所で止まっていた。
「ふう、間一髪だったな。大丈夫か、キルティ」
「ああ、問題ない」
能力が使えないキルティは、どことなく苛ついていた。そりゃそうだ、こんな巨岩、能力が使えれば粉砕できるからな。キルティは立ち上がり、岩の方を見て、こう言った。
「おい、これを見てみろ」
なんだ?岩がある方を向くと、壁が衝撃で壊れているのが見えた。ただ、普通に壊れていたのではなく、その先に何かがあった。
「道が続いてるぞ」
巨岩から覗くキルティが言った。
俺たちは巨岩と壁の間の隙間を通り、向こう側の道へと進んだ。なぜ向こう側と言っているのかと言うと、壁の向こうが、こっち側とは全く異なっていたからだ。
まず、今まで俺たちが歩いていたダンジョンは暗く、松明が唯一の灯りだった。だが、何だこれは。壁の向こうは、目がチカチカするほど明るかった。SF映画とかで良く見る蛍光灯をたんまりと使ったような、真っ白な世界が広がっていた。
「そう言うことか」
「何がだ」
少しの間、沈黙すると、
「ちゃんと説明しろ、貴様!」
とキルティに怒鳴られた。
「うるせえよ。考えてたんだよ。もしかして、キルティ君、気になっちゃいましたか?」
わざとらしくププッと笑い、キルティを挑発した。ノア程じゃないが、コイツも弄りがいがあるな。
「いいか、結論から言うと、このダンジョンは二つの部分で構成されてんだ。この二つを、そうだな、光と闇と呼ぼう。闇が俺たちのいた部分。そして光がカンナたちのいる所だ。元々この二つは繋がってなかったんだろうな。それで、たまたま俺が巨岩のトラップを作動させちまって、間一髪で逃げて、壁に穴が開いて、繋がることのなかった二つのダンジョンが繋がったんだ。でも逃げ場所が用意されてたり、壁が開くように仕掛けられた罠とか、オニオンズって奴は楽しんでやがるな」
これでカンナたちに会える、と思っていたが、もしアイツらもこの仕掛けに気付いていたら、入れ違いになるかもしれない。いや、待てよ。こういう時のノア君じゃねえか。
『ノア、聞こえるか?
今、俺たちはお前らがいるダンジョンの部分に着いたんだが、大きな音が聞こえたりしなかったか?そこに俺たちは居るから、もし来れるなら来てくれ。入れ違いしないために、ここで待ってるからな』
これで聞こえるだろうか?
「じゃあ、ここで待つか」
そう言っても、キルティは明後日の方向を向いていた。人の話を聞けないのか、コイツは。
「おい、聞いてんのか?」
「待つ必要はないみたいだぞ。これを見ろ」
今度は何だよ。新しいダンジョンへの入り口でも見つけたのか?
キルティが見ていたのは、壁に付いた傷跡だった。これの何が特別なのかに気付くのに、少し時間がかかった。
「やるじゃねえか、ノア」
この傷が何を意味するのか理解したとき、俺はそう呟いた。
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