9 / 86
第二章: 天使殺し
第二話
しおりを挟む「ハジメ君はクラフティングの訓練は受けましたか?」
「ええ、一通りは」
俺とスイはノース地方の中心部へと向かおうとしていた。
「敬語じゃなくて、いいんですよ。アルバッドさんにも言われたでしょう?僕たちは仲間だって」
そう言ってるアンタが敬語を使ってるから、俺もタメ口を利きにくいんだが......
「じゃ、じゃあスイ......」
「はい、何でしょう?」
「ノース地方にはどう行くんだ、スイ!」
どうだ!勇気を振り絞ってタメ口を利いてやったぞ!
「それでいいんですよ。ノース地方へは、飛んで行きます」
ふふっと笑いながらスイは言った。
うん?ちょっと待てよ。今変なこと言ってなかった?飛んで行くってどゆこと?
「エレメントで翼を作ってください」
そう言うと同時にスイの背中から翼が生えてきた。アルバッドも言ってたが、本当に何でも作れるんだな。
「これ俺もやるの?」
「ええ、でないと凄く時間がかかってしまいます」
そうだよな。今も俺が足止めしてる状態だもんな。でも俺に出来るだろうか?
いや多分出来るんだろうけど、少し心配事があるな。まあ、いいか。
よし、集中するんだ。
身体を巡ってる光エレメントを想像して、それを今度は背中に集める。そして翼をイメージして、、、放出!
どうだ、出来たか?
って翼だから自分で確認出来ないな。
「おお、素晴らしいですね。では行きましょう」
この様子だと翼に何も下ネタ要素が反映されてないみたいだな。良かった。
「それにしても、ハジメ君の翼はとても白いですね。僕のよりも白いと思いますよ。正しく勇者って感じですね」
そんなに褒めるな、スイよ。この白さは卑猥な白なんだ。
ってこんなんで本当に飛べるのか?
「さあ行きましょう」
スイが翼を広げながら、少しずつ宙に浮いていった。俺もそれに続くように、翼を動かしてみる。
本当に動くんだなこれ。ちょっと感心だ。
バサバサと翼を動かしながら、俺はスイに付いていった。
飛ぶのはとても気持ちが良く、鳥になった気分っていうのが一番しっくり来る表現だ。
「なあスイ、さっきから思ってたんだが、軍隊って警察みたいなこともするのか?今回の件も殺人事件なのに軍の管轄なのか?」
「そうですね。この世界には軍以外にそのような組織がないので、全て軍がすることになっています。それと滅多に事件など起きないので必要ないってのもありますね」
そういうことか。戦争は起きてるのに犯罪が起きないって言うのも少し変に思えるが、光と闇のエレメントの量で住民を分けてるからこそなのかもしれない。
「今回の事件で俺たちは何をすればいいんだ?」
「そうですねえ、カンナさんのサポートと、犯人を捕まえることですかね」
まんま警察だな。でも最初の任務が殺人鬼捕獲とか、危険すぎるだろ。
「あんま聞くべきではないと思うんですが、ハジメ君はどうやって死んだんですか?」
おおおおお、そういうこと聞いちゃうか、スイ君は。それは秘密にしておきたいな。
「それはちょっと......」
「すみません。さっき言ったことは忘れてください。ただ、過去最高の光エレメントの持ち主が、どのような死に方をしたのか気になっただけなので」
俺の表情を見て察したのか、スイはそれ以上は聞いてこなかった。スイとか真面目そうだから、答えたら凄い軽蔑されるだろうなあ。
俺が死因を言うのを断ってからノース地方に着くまで、俺たちは会話をしなかった。はい、俺のせいですね、はい。気を遣わせちゃって、ごめんなさい。
「ノース地方ってもっと自然があるイメージだったけど、結構都会なんだな」
飛んでいる最中、住宅街がぽつぽつと建っているのが見えた。
「そうですね。ノース地方は住宅地ですからね。その中心地に繁華街がある感じですね」
「へえ、地球とあんま変わらないんだな」
「そうなんですか?それは面白いですね。もうすぐで着きますよ」
俺とスイが降りようとした所に、人影が見えた。
「あっ、カンナさんですね」
あれがカンナってヤツか。少しずつ降下して、カンナの姿がちゃんと見えるようになった。
黒髪長髪にポニーテールか。あんま俺の好みじゃないな。しかも何かふてくされてる様に見えるぞ。
「やあ、カンナさん」
「すみません、スイさん。わざわざ来てもらって」
いえいえ、と言ったスイを見た直後、カンナは俺の方を見た。
「アンタ誰?」
おいおい、初対面の人にアンタは失礼だろ。仮にもこの世界の勇者様だぞ!
「彼はハジメ君。過去最高の光エレメントの持ち主で、最近入隊したんだよ。つまりはカンナさんの後輩だね」
そう言われたカンナの顔が照れたように見えた。
もしかしてコイツ、ツンデレか??
「後輩なら仕方ないわね。何をするか、私が教えてあげる!本当にしょうがないんだから!」
腕を組み、後ろを向きながら言うとかザ・ツンデレじゃねえか。
何か先が思いやられるな......
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。


異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる