テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす

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第二章: 天使殺し

第二話

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「ハジメ君はクラフティングの訓練は受けましたか?」
「ええ、一通りは」

俺とスイはノース地方の中心部へと向かおうとしていた。

「敬語じゃなくて、いいんですよ。アルバッドさんにも言われたでしょう?僕たちは仲間だって」
そう言ってるアンタが敬語を使ってるから、俺もタメ口を利きにくいんだが......

「じゃ、じゃあスイ......」
「はい、何でしょう?」
「ノース地方にはどう行くんだ、スイ!」

どうだ!勇気を振り絞ってタメ口を利いてやったぞ!

「それでいいんですよ。ノース地方へは、飛んで行きます」

ふふっと笑いながらスイは言った。
うん?ちょっと待てよ。今変なこと言ってなかった?飛んで行くってどゆこと?

「エレメントで翼を作ってください」
そう言うと同時にスイの背中から翼が生えてきた。アルバッドも言ってたが、本当に何でも作れるんだな。

「これ俺もやるの?」
「ええ、でないと凄く時間がかかってしまいます」

そうだよな。今も俺が足止めしてる状態だもんな。でも俺に出来るだろうか?

いや多分出来るんだろうけど、少し心配事があるな。まあ、いいか。

よし、集中するんだ。
身体を巡ってる光エレメントを想像して、それを今度は背中に集める。そして翼をイメージして、、、放出!

どうだ、出来たか?
って翼だから自分で確認出来ないな。

「おお、素晴らしいですね。では行きましょう」
この様子だと翼に何も下ネタ要素が反映されてないみたいだな。良かった。

「それにしても、ハジメ君の翼はとても白いですね。僕のよりも白いと思いますよ。正しく勇者って感じですね」
そんなに褒めるな、スイよ。この白さは卑猥な白なんだ。

ってこんなんで本当に飛べるのか?

「さあ行きましょう」
スイが翼を広げながら、少しずつ宙に浮いていった。俺もそれに続くように、翼を動かしてみる。

本当に動くんだなこれ。ちょっと感心だ。

バサバサと翼を動かしながら、俺はスイに付いていった。

飛ぶのはとても気持ちが良く、鳥になった気分っていうのが一番しっくり来る表現だ。

「なあスイ、さっきから思ってたんだが、軍隊って警察みたいなこともするのか?今回の件も殺人事件なのに軍の管轄なのか?」
「そうですね。この世界には軍以外にそのような組織がないので、全て軍がすることになっています。それと滅多に事件など起きないので必要ないってのもありますね」

そういうことか。戦争は起きてるのに犯罪が起きないって言うのも少し変に思えるが、光と闇のエレメントの量で住民を分けてるからこそなのかもしれない。

「今回の事件で俺たちは何をすればいいんだ?」
「そうですねえ、カンナさんのサポートと、犯人を捕まえることですかね」

まんま警察だな。でも最初の任務が殺人鬼捕獲とか、危険すぎるだろ。

「あんま聞くべきではないと思うんですが、ハジメ君はどうやって死んだんですか?」
おおおおお、そういうこと聞いちゃうか、スイ君は。それは秘密にしておきたいな。

「それはちょっと......」
「すみません。さっき言ったことは忘れてください。ただ、過去最高の光エレメントの持ち主が、どのような死に方をしたのか気になっただけなので」

俺の表情を見て察したのか、スイはそれ以上は聞いてこなかった。スイとか真面目そうだから、答えたら凄い軽蔑されるだろうなあ。

俺が死因を言うのを断ってからノース地方に着くまで、俺たちは会話をしなかった。はい、俺のせいですね、はい。気を遣わせちゃって、ごめんなさい。

「ノース地方ってもっと自然があるイメージだったけど、結構都会なんだな」
飛んでいる最中、住宅街がぽつぽつと建っているのが見えた。

「そうですね。ノース地方は住宅地ですからね。その中心地に繁華街がある感じですね」
「へえ、地球とあんま変わらないんだな」
「そうなんですか?それは面白いですね。もうすぐで着きますよ」

俺とスイが降りようとした所に、人影が見えた。

「あっ、カンナさんですね」

あれがカンナってヤツか。少しずつ降下して、カンナの姿がちゃんと見えるようになった。

黒髪長髪にポニーテールか。あんま俺の好みじゃないな。しかも何かふてくされてる様に見えるぞ。

「やあ、カンナさん」
「すみません、スイさん。わざわざ来てもらって」
いえいえ、と言ったスイを見た直後、カンナは俺の方を見た。

「アンタ誰?」
おいおい、初対面の人にアンタは失礼だろ。仮にもこの世界の勇者様だぞ!

「彼はハジメ君。過去最高の光エレメントの持ち主で、最近入隊したんだよ。つまりはカンナさんの後輩だね」
そう言われたカンナの顔が照れたように見えた。
もしかしてコイツ、ツンデレか??

「後輩なら仕方ないわね。何をするか、私が教えてあげる!本当にしょうがないんだから!」
腕を組み、後ろを向きながら言うとかザ・ツンデレじゃねえか。

何か先が思いやられるな......
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