追放された呪咀士は同じ境遇の仲間を集めて成り上がります〜追放仲間にデバフをかけたらなぜか最強になりました〜

三乃

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42話 戦狂

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「はっはっはー!! いいね、いいね、いいねー!! 全員やる気マックスかよ! そこだけは評価してやる!」

 僕たちが臨戦態勢をとったのをみて、セツナは嬉しそうに笑い出す。

「それじゃあ、そろそろ始めようかっ!!」
「あっ、ごめん、ちょっと待って」
「っ!?」

 今すぐにでも襲いかかってきそうなセツナを制止する。

「んだよっ、折角盛り上がってきたってのに……」

「ごめんごめん。でも、セツナもこっちの全力と戦いたいんだよね? それなら、ちょっと待ってて。すぐ準備するから」

「……ちっ、しょうがねぇなぁ。つまらなかったら本気で潰すからな」

「それは保証する。絶対セツナは楽しめるよ」

 そう言って、僕はカリンの方を向く。
 圧倒的なまでのセツナの暴力に対抗できる手段を僕たちは持っている。

「カリン……いいよね?」
「ああ、頼む」

 カリンもそれは分かっていたようだ。
 僕に全てを託したように目を瞑る。

 ……うん、任せてよ!

「『ドランカード』!!」

 僕は仲間であるカリンに呪いをかける。

「……は? 何やってるんだよお前ら!?」

 その光景を見て、セツナは驚いた様子で質問してくる。
 まあ、いきなり仲間に弱体化する呪いデバフをかけたら、普通は驚くよね。

 だけど、この呪いはカリンに対してのみ、弱体化ではなく強化バフになる!

「にゃーっはっはっはっはっはー!! よーひ、いっくじょぉぉぉぉぉおお!!」

「…………………はぁ?」

 セツナがポカンとした表情で声を漏らす。
 うん、気持ちはよく分かる。

 僕も初めてこの状態のカリンを見た時は同じようなリアクションをとったもんだ。

『ドランカード』は呪った対象を『泥酔』状態にする呪い。
 つまり、今のカリンはベロベロに酔っ払ってるってわけだ。

「いや……いやいやいやいや、さっきから何をしたいんだ!? 今から戦うってのにまさか……酔っ払ってるのか? それはオレを舐めてるってことでいいのか!?」

 舐めてもないし、こっちは至って真剣だ。
 こうしないと、カリンは『酔剣』を使えないからね。

 まあ、その事実をセツナは知らないから、こういう風に考えるのは分かるけど……。

「こっちは準備はできたよ。それじゃあ、始めようか」

「はぁっ!? ……お前ら、本気でグチャグチャにされたいようだなぁっ!! よーく分かった! 自殺志願者に優しくするほどオレは甘くねぇからよぉ。お望み通りぶっ殺してやらぁっ!」

 セツナは激昂しながらメイスを構える。
 あっちは既に準備万端のようだ。

「ふぇ? もうやっていーのかにゃ?」
「ああ、かかってこいやゴラァ!」

「はぁい、わかったぁー」

「……え? はっ、なっ!?」

 カリンが返事をすると、瞬間、その姿を消す。
 いや、正しくは消えたかと錯覚するほどの速度でセツナの真横に移動していた。

 少し離れた僕ですら認識するのがやっとといった速度だ。
 正面から対峙していたセツナからしたら、瞬間移動でもしたように見えただろう。

「けんぎぃ『らせんとぉつぅ』」
「ぐっ……くっそっがぁっ!」

 剣技『螺旋突らせんとつ』……って言ったのかな?
 相変わらず、泥酔状態のカリンの呂律はまともに回らないから、解読するのも一苦労だ。

 刃を回転させながらの強力な突きがセツナに目掛けて繰り出されるが、セツナは咄嗟にメイスで防御する。
 あの攻撃に反応できるだけでも凄いが、流石に剣技の勢いを殺しきることができず、セツナは後方に吹っ飛ばされる。

「……くっくっくっ」

 受け身もとらずに飛ばされたセツナは、仰向けで倒れながら、静かに笑い出す。
 ……流石にあれで決着とはいかないか。

 セツナはゆっくりと立ち上がると、満面の笑みをカリンに向ける。

「あーっはっはっはっはっ!! なんだよ、お前、最っ高じゃないか!! そんな力を隠してたならもっと早く教えてくれればよかったのに!」

 なんだか凄く嬉しそうだ。

「いいね、いいな、いいじゃんか! こういうのを待ってたんだよ!! 楽しくなってきたなぁっ!!」

「ちょっと待って! カリンの実力は分かったんだよね? それならこれ以上戦う必要はないんじゃないのかな?」

 僕たちの実力を測るのが、今回の戦闘の目的だったはず。
 このテンションを見るに、セツナはカリンのことをすでに認めたはずだ。

 それならこれ以上の戦闘理由はないはず……なんだけど

「あーん!? 萎えること言ってんじゃねぇよ。折角こんな上物が目の前にあるんだ。喰らい尽くさないと勿体無いだろ!?」

 やっぱりね!
 くそっ、やっぱりセツナは『狂戦士バーサーカー』だな。

 目的を完全に忘れて、もう戦うことしか考えていないようだ。
 この、戦闘中毒バトルジャンキーめ!

「にゃははははっ、わらしもまだまだやれるぞー!」

 お前もかよ!!

 カリンは酔いでフラフラしながらも、戦意がみなぎっているようだ。
 もう、僕が何を言っても二人は止まらなそうだな……。

「いくぞっ、おらぁぁぁぁ!!」
「こいよぉ、にゃぁぁぁぁ!!」

 二人は同じタイミングで相手にぶつかっていく。
 武器が衝突して金属音がダンジョンに響き渡った。

「……どうするの、ノロワ」

 完全に僕とエマが取り残された形になってしまった。

「あーもー、よーく分かった。納得いくまで戦ってやろうじゃないか!!」

 こうなったらヤケだ。

 セツナの望み通り、やってやるよ!

「やっちゃえ、カリン!!」

 ……人任せなのがちょっと情けないけどね。
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