追放された呪咀士は同じ境遇の仲間を集めて成り上がります〜追放仲間にデバフをかけたらなぜか最強になりました〜

三乃

文字の大きさ
上 下
20 / 44

幕間1 前編 凋落

しおりを挟む
 
「ああっ……魔力も道具も尽きてしまいました!」
「なんで私達の攻撃が通用しないのよ!?」
「もうダメだ、ラッシュ! 撤退しよう!!」

「はぁっ……はぁっ……、くそっ、くそっ、くそぉぉぉぉ!! なんで……なんで俺たちがこんな目に!!」

 ここはたかがBランクダンジョンだろ!?
 なんでAランクパーティー『紅蓮の不死鳥』である俺たちがみすみす敗走しなければいけないんだ!?

 くそっ、くそっ、あれもこれも全部アイツのせいだ。
 あの出来損ないで無能のノロワをパーティーから追放してから何もかも上手くいかない。

 あの疫病神が……パーティーを抜けてからも俺たちに迷惑かけやがって!!

「リーダー! 早く撤退しないと!!」

「ああああっ、クソがァァ!! 撤退するぞ、お前ら集まれ!!」

 俺は『帰還の魔石』に魔力を込め、『紅蓮の不死鳥』はダンジョンから強制帰還する。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ええー、またクエスト失敗したんすか?」

 ギルドの受付嬢ごときが、この俺に向かってため息まじりに呟く。
 このあまァ……俺はAランクパーティーのリーダーなんだぞ。

 仕事だから許しているが、本来ならお前ごときが馴れ馴れしく話しかけていい存在じゃないんだぞ!!

「これで五連続のクエスト失敗……しかも今回はBランクダンジョンでの素材回収クエストだったのに」

「うるさい!! 今回の失敗も支援職バッファーのやつが足を引っ張ったせいだ! アイツはもう辞めたから、お前はさっさと優秀な支援職バッファーを紹介しろ!!」

「えー……あの人、めちゃくちゃ優秀な人だったのにもう辞めちゃったんすかぁ?」


 優秀?
 どこがだ!?

 食材の確保やアイテムの補充もしない。
 地図作成マッピングもろくにしないから道にも迷う。
 更に強化バフの効果も弱いのか、強化されても俺たちの攻撃が敵に通用しない。

 その上、たいして役にも立ってないくせに、今回のクエストが終わった時に『俺はお前らの便利屋じゃねぇ!! やってられるか!!』といって勝手に辞めていきやがった。

 どのみち、今回の失敗の責任を押し付けてクビにするつもりだったから構わないけどな。

 あのノロワでさえ出来た仕事すら碌にしないんじゃ話しにもならない。

「人員の補充っていっても中々難しいと思うっすよー」
「はぁっ!? 何言ってるんだ? 『紅蓮の不死鳥』はAランクのパーティーだぞ。俺たちみたいな優秀なパーティーに入れてやるって言うんだ、募集するやつは絶えないだろうが」

「いやー、最近フリーの冒険者の中で『紅蓮の不死鳥』の評判がすこぶる悪いっすからね。一時加入スポットの冒険者を召使いのようにコキ使ったり、報酬をケチったり。もうちょっと条件変えてみませんか?」

「なんで俺たちがフリーの冒険者ごときに折れてやらなきゃならないんだ!?」

 Aランクのパーティーといえば、街のエースといっても過言じゃない。
 実際にそこそこ大きいこの街でさえ、Aランクのパーティーは俺たちを含めて三つしかないしな。

 そんなパーティーに入れてやるっていうんだ、多少待遇が悪くても喜んで俺たちのために奉仕するべきだろ?

 それに、待遇が悪いっていってもノロワに払っていた報酬に比べれば十分渡しているしな。
 文句を言われる覚えなんてない。

「……まあ、ラッシュさんがそう言うならもうちょっと探してみますけど、あまり期待はしないでくださいね。……それとこれ以上のクエスト失敗はまずいんで気をつけてくださいよ」

「……ちっ、分かってるよ」

 確かに、受付嬢の言う通り、これ以上クエストを失敗すると俺たちの評判に関わる。
 それに現状、いつ新しい一時加入スポットの冒険者が現れるかも分からない状態だ。

 こうなったら、優秀な支援職バッファーが入るまでは簡単なクエストで凌ぐ事にするか。

「くそっ……くそっ、本当についてない!」

 クエストボードを眺めているが、イライラがおさまらない。

 ノロワの愚図を追放してからろくなことが無い。

 特にここ最近モンスターの強さが段違いに上がっている。
 攻撃も当たりにくくなった上、当たってもダメージが通りにくくなった気がする。
 その上、モンスターの攻撃の威力も上昇してダメージ量も増えてきた。

 ノロワの『呪いデバフ』が無くなったくらいでそれほど戦闘力が変わるとは思えないし……、やっぱりこれまでのクエスト失敗は全部支援職バッファーのやつが未熟なせいだな。

「……おっ、このクエストはちょろそうだな」

 目についた依頼書を取ると、その内容を確認する。

 クエスト内容は『Eランクダンジョン『始まりの洞穴』の新エリア調査』といったものだ。
 募集条件はBランク以上のパーティーだから条件はクリアしている。

 何より、いくら新エリアとはいえEランクのダンジョン探索なんて簡単なクエストだ。
 それに、これくらいなら支援職バッファーがいなくても楽々クリアできそうだしな。

 報酬も悪くないし……いいクエストを見つけたぜ。

 俺はクエストを受注するため、依頼書をさっきの受付嬢に持って行く。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 結局、クエスト開始までに一時加入スポットの冒険者は集まらず、元々のメンバーである四人でクエストに挑むことになった。

 まあ、今回のクエストはEランクダンジョンの探索だし楽勝だろう。

 ……そう思っていたのに……。

「な、なんなんだよコイツは!?」

「グッ……ギャァァァァァァアアアアアアアア!!!!」

 ダンジョン内にモンスターの咆哮が響き渡る。

 俺たち『紅蓮の不死鳥』の前に見上げるほどの巨体な狼型モンスターが立ち塞がってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜

Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。 だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。 仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。 素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。 一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...