追放された呪咀士は同じ境遇の仲間を集めて成り上がります〜追放仲間にデバフをかけたらなぜか最強になりました〜

三乃

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18話 結末

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「……ここは?」

 目が覚めると見知らぬ天井が目に入ってきた。
 硬い洞穴の床で倒れたはずなのに、なぜか僕は今、柔らかいベッドの上にいる。

 ……一体、何がどうなっているんだ?

「ここはギルドの医務室ですよ」

 今置かれている状況がわからず困惑していると、横か聞き慣れた声がする。

「ロゼさんっ!?」
「おはようございます、ノロワ君。気がついて良かったです」

 ギルドの受付嬢でもあるロゼさんが横たわっている僕の横にいた。
 ここがギルドの医務室なら、ロゼさんがここにいるのも分かるけど、そもそもなんで僕が医務室のベッドに寝てたんだ?

 ……あっ!?
 そんな事よりも大切なことがある!

「エマは……僕の仲間は無事ですか!?」

 身を乗り出した僕をロゼさんは落ち着かせるようになだめてくる。

「落ち着いてください。エマは無事ですよ。そろそろお見舞いにくるんじゃないですか?」
「そう……ですか」

 ロゼさんの言葉で僕は安堵して力が抜ける。
 ああ、良かった……本当に良かった。

 呪いの代償はデカかったけど、体を張った甲斐があったよ。

「今はエマよりもノロワ君の体調ですよ。ノロワ君、三日も寝込んでたんですよ?」
「三日もですか!?」

 まさかそんなに寝ていただなんて……。

「痛みで気を失っているのに、体には傷や怪我がないから治療もできなかったですしね」

 そりゃあ僕のダメージは『呪い』による代償によるものだからね。
 ポーションや回復魔法なんて全く効果がない。

「そうですね……エマがいつも来るお見舞いの時間までもう少しありますから、それまでノロワ君が気を失ってからどうなったのか説明しましょうか?」

「はい、お願いします」

 最優先事項である仲間エマの安否は確認できたけど、それ以外にもケイネスや狼型モンスター、それに試験結果についても色々と気になることは多い。
 僕は素直にロゼさんの提案に乗ることにした。

「まずはノロワ君達が守ってくれたケイネスさん達はパーティーメンバー全員無事ですよ。ただ、ノロワ君と違って外傷がひどかったので全員病院で入院してますけどね」

「そっか、ケイネス達は無事だったんですね」

「はい。意識はハッキリしてますし、みんなノロワ君達に感謝してましたよ」


「ははっ。それなら命を張った甲斐がありましたよ」


 まあ、本当のことを言うと僕は仲間の命惜しさに彼らを見捨てようとしたんだけどね。
 感謝するなら僕じゃなくてエマにだけするべきだと思うけどね。

「そうですね。それに、ケイネスさん達が『帰還の魔石』で転移してきた際、経緯を説明してくれたのですぐに救助隊を派遣できました」

 なるほど。
 つまり、ケイネス達が救援を呼んでくれたおかげで僕はこうして救助されたのか。

 そこだけは感謝しないとね。

「それと、ノロワ君達が遭遇した狼型モンスターは新種に認定されました。戦闘ランクはBランクのボス級です」

 この世界のモンスターには僕たち冒険者同様に戦闘ランクが付けられている。
 更にダンジョンの難易度は、出現するモンスターの戦闘ランクによって決定されている。

 やっぱり、あのモンスターは新種だったか。
 あんなモンスターが存在するなら噂くらいは聞こえてきてもおかしくないもんね。

 それにしてもBランクのボス級か……。
 実際、あのモンスターは僕が以前所属していた『紅蓮の不死鳥』時代に攻略したBランクダンジョンのボスモンスターと遜色ないスペックはしていたしね。

 だから、そのランク付けは妥当だろうけど、エマと僕の二人でよく生き残れたなぁ……。

「そのランクの影響で、『始まりの洞穴』の新エリアは禁止区域に指定され、Bランク以上のパーティーがギルドを通した場合のみ通行できるようにしました」

「そうですね、僕もその方がいいと思います」

 新エリアの道中に出てくるモンスターは弱かったけど、狼型モンスターだけは別格だったからね。
 新エリアだけを禁止区域にしておけば、他の部分は今まで通りEランクダンジョンとして新人冒険者の腕試しとして活用できる。

「最後に、受験者達より先行して索敵していたAランクパーティーですが、ノロワ君達より先に新種のモンスターと戦闘し、敗北、そして逃走していました。そして、その彼らには結果罰則ペナルティが与えられます」

罰則ペナルティですか? でも、狼型モンスターがBランクのボス級って認定されたならAランクパーティーでも負けることはありますよね?」

 やっぱり狼型モンスターが事前に傷を負っていたのは、Aランクパーティーとやりあった後だったからか。

 Aランクパーティーなら、これまでいくつものBランクダンジョンを踏破してきただろう。
 だけど、その中で敗北や失敗も数多くしてきたはずだ。

 敵は新種で戦闘力や性質すら未知数だった。
 いくらAランクパーティーでも敗北する可能性は十分にあるはずだと思うけど……。

「彼らの場合、クエストを失敗した事自体は問題じゃありません。彼らは『帰還の魔石』で逃走した際、自身の敗北を知られたくないばかりに報告の義務を怠ったのが原因です」

「……なるほど」

 その理由なら納得だ。
 大方、余裕だと思っていたクエストで失敗したのがバレたら恥ずかしいとか思ったのだろうか?

「そのせいで救助隊の初動が遅れてしまいましたからね! 罰則ペナルティは当然です!」

 珍しくロゼさんが怒っているようだ。
 まあ、そのAランクパーティーは冒険者としての義務を怠った訳だしね。

 それにしても、Aランクまで駆け上がったパーティーがこうなる事を見越さないなんて、ちゃっと意外だな。
 クエスト失敗がそんなに悔しかったのだろうか?

「ちなみにその罰則を受けるAランクのパーティー名は『紅蓮の不死鳥』……ノロワ君が以前所属していたパーティーですよ」
「えっ!?」

 よく知っているパーティー名を聞いて思わず驚きの声をあげてしまう。
 そっか……あいつらだったのか。

 そして、驚きと同時に納得もしてしまう。

 プライドの高いあいつらなら、クエスト失敗だなんて認められないだろう。

「ノロワ君の担当としてはちょっと胸の溜飲が降りましたけどね。……っと、今のはギルド職員として公平性に欠けた発言でした。忘れてくださいね!」

「ははっ、分かりましたよ」

 うん、正直僕もあいつらが罰則を受けるときいてちょっと『ざまぁ』と思ってしまったから、僕も同罪だ。

「ちょっと話し過ぎてしまいましたかね。そろそろエマも来るでしょうし、私は退室しますね」

「はい、ありがとうございました」

「いえいえ。それと帰る前に、エマと一緒に受付に顔を出して下さいね。それじゃあ失礼します」

 そう言うとロゼさんは医務室から退室した。

「……ふう。とりあえずは良かったかな」

 エマも無傷だし、狼型モンスターも討伐した上、更にケイネス達も救出できた。
 イレギュラーな事態だったけど、成果としては上出来だっただろう。

 一息ついていると、廊下の方からドタドタと足音が聞こえてくる。
 ロゼさんの言う通り、エマが来てくれたのかな?

「ノロワ! 目を覚ましたって本当!?」

「やあ、エマ! 無事で何よりだよ」

 医務室のドアが勢いよく開くと、僕の最高の仲間がそこに立っていた。
 どうやら僕が目を覚ましたのを聞いたようだ。

 エマは僕の顔を見るなら、顔を俯かせ肩を震わせながる。
 ……泣いてるのかな?

 つまり、これはあれだ。
 感動の再会イベントってやつかな?

 そんな事を期待している中、エマの第一声は……、
「こ……の……大馬鹿ノロワ!!!!」
 罵倒でした……。
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