追放された呪咀士は同じ境遇の仲間を集めて成り上がります〜追放仲間にデバフをかけたらなぜか最強になりました〜

三乃

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16話 全力

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 僕とエマは横並びで杖を構える。

「……ところで結局はどうするの? 真正面からやって簡単に勝てる相手とは思わないけど」

 横に立っているエマがこそこそと小さい声で聞いてくる。
 うん、僕もそう思う。

 鋭い牙や爪による攻撃力の高さは当然ながら、巨体に見合わないほどの俊敏性。
 しかも、狼型モンスターだから、五感……特に聴力と嗅覚は高いだろう。
 おまけにこのモンスターは火まで吐ける上、学習能力も高いときた。

 近距離、遠距離ともに弱点がない。

 一方、僕たちは『呪詛師』と『魔法使い』という後衛職しかおらず、戦力が偏ったパーティーでバランスが悪い。

 客観的に見たら戦力な差は歴然だよね。

「それに、どうして直ぐに襲ってこないのかしら? お陰でアタシ達はこうやってゆっくりと作戦を練れるから助かってはいるけど……」

 エマの言う通り、狼型モンスターは僕たちから一定の距離をとり続けている。
 しかし、常に牙は剥いており、いつでも臨戦態勢に入れるよう警戒はし続けているようだ。

「さっきのエマの恫喝が怖かったんじゃって、痛ったぁっ!?」

 場の空気をすこしでも和らげようと冗談を言ったら、杖で思いっきり腹を殴られてしまった。

「冗談はいいから!」
「はい、すいません!!」

 僕は痛めた腹をさすりながら現状を分析する。

「多分、あのモンスターは僕たちを警戒して攻めあぐねているんだろうね。でも、逃がすつもりはないからこうして距離をとったまま威嚇し続けているんだと思う」

 実際あのモンスターからしたら、人間を見ることは勿論、魔法や呪いなんてものは初見だろう。
 でも、その警戒心のおかげでエマと戦闘の打ち合わせができるから助かっている。

 正直、この瞬間にでも襲われたら、僕たちは間違いなく全滅するだろう。

「さて、じゃあ今度は僕からエマに質問があるんだけどいい?」
「何?」

「もしエマが『呪紋』の縛り無しで全力の攻撃魔法を放ったらアイツを倒せる?」

 現在、エマの背中には僕の『呪紋じゅもん』が刻まれており、この『呪紋』による呪いの効果でエマの魔力出力を極端に抑えている。
 そうすることで、過剰なほどの魔力量を誇るエマの魔力を外部的にコントロールしている状態だ。

 呪いの縛りがない状態でエマが魔法を使うと、その過剰な魔力のせいで、初級魔法ですら並の『魔法使い』の上級魔法級の威力になってしまう。

 そんなエマが『呪紋』無しで上級魔法を使えば……おそらく僕なんかじゃ想像もつかないほどの威力があるに違いない。

「……多分一撃で倒せると思う。でも問題もあるよ」

 この均衡状態を打破する可能性があるのに、エマは浮かない顔をする。

「アタシの本気の上級魔法は、必要魔力が異常に大きいから、その分魔法の発動まで時間がかかっちゃうの」
「時間ってどれくらいかかる?」
「50……ううん、60秒は最低でも欲しい。それにもう一つ……上級魔法の詠唱中は極度の集中状態に入るから、その場から一歩も動けない上、詠唱以外に一切気を使えなくなるのよ」

 つまり魔法の詠唱中、エマは無防備になるわけだ。
 それに敵もバカじゃない。

 エマがそれほどの魔力を練り上げている間、今みたいに待ってくれるはずがない。
 必ず妨害のため襲いかかってくるだろう。

 つまり、エマが上級魔法を放つためには一分間、エマをこの狼型モンスターから守り続けなければいけないってことになる。

 ……気が遠くなるほどの長い時間稼ぎだね。

 僕は大きく息を吐き、そして覚悟を決める。
 狼型モンスターに勝つためにはエマの魔法が絶対に必要。
 それなら、僕がやることはもう決まっている。

「分かった。僕が全力で一分間、エマを守るから……信じて、ゆだねてくれる?」
「……バカね。もう、とっくに信じてるわよ!」

 エマはそれだけ言うと、杖を再度構えて『呪紋』を解呪したと同時に詠唱を始める。
 どんな風に敵を足止めするかとか、詳しい説明もまだしていないのに、だ。
 ……つまり、エマは僕の『守る』って言葉だけを信じてくれたってわけだ。

 この信頼は絶対に裏切れないし、裏切らない!

「さて、それじゃあ僕たちもやろうか」

「ガルァッ!?」

 どうやら狼型モンスターも周囲の異変に気がついたようだ。
 エマが上級魔法を発動するために詠唱を始めてから、周囲一帯から強力な魔力が溢れ出している。
 それに多分、炎に関する上級魔法なんだろう。
 周囲の気温が急激に上昇していく。

 魔法の存在を詳しく知らなくても、エマが何かヤバい事を始めたって事を本能的に察せられるだろう。

 狼型モンスターはエマに向けて攻撃態勢に入る。

「させないよっ!」
「ガッ……!?」

 僕は狼型モンスターに向けて呪いを放つ。
 今回使った呪いの名は『絶対静止アブソル・ゼロ』。

 その効果は『対象の動きを強制的に静止する』といったものだ。
 呪った相手の能力によって止められる時間は異なるけど、この狼型モンスターだと精々三秒が限界だろう。

 敵の動きを強制的に数秒止める呪い……強力な呪いだけど、その分代償もでかい。

 その代償は……。
「がっ、ぐっ……あああぁぁぁぁ」

 術者への強烈な痛みだ。

 呪いの代償として僕の全身に電流が走ったような痛みが駆け抜ける。

 たった一回でこの痛みか……。
 覚悟してたけど、かなりキツイな。

 エマが集中状態でよかった。
 これで僕がどれだけ痛みでみっともなく転がり回っても、気を逸らさないですむ。

 ……恥ずかしい姿も見られなくてすむしね。

「ガルゥ……、ガッ!?」
「ぎっ、がっ、ぐぅぅぅ」

 狼型モンスターへの呪いが時間切れで解けたと同時に、再び『絶対静止アブソル・ゼロ』で呪う。

 今回僕が取った作戦はいたって単純。

 エマの上級呪文の詠唱が終わるまで『絶対静止』で狼型モンスターの動きを止め続けるってものだ。

っ、ぐっぅぅぅ……。はぁ、はぁ……、さぁ、我慢比べをはじめようか!」
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