追放された呪咀士は同じ境遇の仲間を集めて成り上がります〜追放仲間にデバフをかけたらなぜか最強になりました〜

三乃

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13話 決意

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 悲鳴の先には冒険者のパーティーと一体の狼型モンスターが睨み合っていた。

「グッ……ガァァァァァァァァ!!!!」

 そのモンスターの高さは五メートル以上はあるだろうか?
 それほど巨大な狼型のモンスターは咆哮を上げて、目の前にある冒険者たちを威嚇している。

 その佇まいは、ここに着くまで遭遇してきたモンスターとは文字通り格が違う。

 どうやら、咄嗟に隠れたから僕たちが来たことには気がついていないようだ。

「な、なんなのアイツ!? なんで『始まりの洞穴Eランクダンジョン』にあんなモンスターがいるのよ!?」

 エマが声を潜めながら聞いてくるけど、そんなの僕にも分からない。
 狼型モンスターの突然変異か、それとも元々ここに生息していた希少種か……。

 それなりに長いこと冒険者を続けていたけど、あんなモンスターは見たことがない。

「ちょっと待って……。あそこにいるパーティーってケイネス達じゃない?」

 あっ、本当だ!
 クエスト開始前に僕に絡んできたケイネス達だ。

 この新エリアにいる冒険者は僕たち同様に昇格試験を受けているEランクパーティーと安全確認のための先遣隊としてAランクパーティーがいる。
 このモンスターは、熟練のAランクパーティーならまだしも、駆け出しのEランクの冒険者が束になっても敵う相手じゃない。


「なんなんだよ、こいつ」
「こんなのがいるなんて聞いてないよ!!」
「リーダー、早く『帰還の魔石』を出して!」
「分かってる! ちょっと待ってろ」

 ケイネス達も敵わないと判断したのか魔石を使い直ぐにこの場を逃げようとする。
 その判断は間違っていない……だけど、どうやら狼型モンスターの方が更に判断は長けていたようだ。

「グガァァァッッ!」
「ぐっ……ぎゃぁぁ!! い、でぇぇぇぇ!」

 ケイネスがカバンから魔石を取り出すそぶりを見せると、狼型モンスターはケイネス目掛けて、その巨体からは想像もつかない速さで飛びかかり、鋭い爪でケイネスの腕を切り裂く。
 ケイネスの腕はまだ繋がってはいるが、見るからに重傷を負い、その傷の痛みから地べたを這いつくばる。

 そして、最悪なことに、その拍子で『帰還の魔石』がカバンから落ちてしまい、狼型モンスターの足元に転がりこんでしまった。
 狼型モンスターはその魔石を一瞥すると、前脚で魔石を踏み潰す。

「最悪の状況だ……」

 あいつは『帰還の魔石』が転移するためのものだと知った上でケイネスを妨害し、魔石を破壊した。
 つまり、あのモンスターは魔石の使い方を知っているってことだ。

 そして、狼型モンスターをよく観察すると、体の至る所に僅かだがダメージを負っているのが分かる。

「ちょっと、やばいんじゃない? アタシ達も助けに行かないと!」
「ストップ、エマ! ……今は動いちゃダメだ!!」

 今すぐにでも助けに飛び出そうなエマの腕を咄嗟に掴んで引き止める。

「なんで止めるの? このままじゃ、アイツら殺されるちゃうわよ!?」
「分かってる……分かってるんだ。だけど、あのモンスターはヤバすぎる!」
「あのモンスターが強いのは見ればわかるわよ」

 ……違う。
 そうだけど、そうじゃないんだ。

「あのモンスターは……多分先行していたAランクパーティーですら倒せなかったモンスターなんだ。僕たち二人がケイネス達に加勢したところで死体が二つ増えるだけだよ」
「そ……んな……!」


 駆け出しのEランクパーティーでは、あのモンスターを相手にダメージを負わせることは難しい。
 つまり、あのモンスターにダメージを与えたのは僕たちより先にダンジョン探索をしていたAランクパーティーと予想がつく。

 そしてあのモンスターが『帰還の魔石』の効果を知っているのは、Aランクパーティーが敗走する際に魔石が発動するところを自ら見たからだろう。

 Aランクパーティーを上回るほどの戦闘能力に加えて、一度見ただけで『帰還の魔石』の対策を行うほどの学習能力。
 どう考えてもヤバすぎる相手だ。

 エマの実力はAランク冒険者と遜色ない。
 だけど、僕の支援デバフがあったとしても、エマがひとりで勝てる可能性は限りなく低いだろう。

 冒険者同士は助け合わなければならない。
 ……だけど、僕にとって最も優先しなければいけないのは仲間エマの命だ。

「ここは撤退して、すぐにあのモンスターの討伐隊を編成してもらおう。……それが今、僕たちができる最善手だと思う」
「そんな……! それじゃあ、ケイネス達は……」
「……残念だけど、ケイネス達は……見捨てよう」
「っ!?」

 エマは僕のことを非情な奴だと軽蔑したかもしれない。
 だけど、それでも構わない。
 僕はエマを守るためからなんだってするよ。


「多分、ノロワの言っていることが正しいんだよね。……でも……だけどっ!!」

 頭では理解していても、納得ができないんだろう。
 エマは決意したような目で僕を真っ直ぐに見据える。

 ……うん、そうだよね。
 エマはそういう奴だから、僕は助けてあげたいんだ。

「今の案がプランA。ケイネス達は助からないけど、確実に僕たち2人は助かるってプランだよ。そしてもうひとつ……プランBは、僕たち2人の生存率は下がるけど、その代わり全員が助かる可能性がある。……エマはどうする?」

 僕としてはエマへの危険はできる限り回避したい。

 だけど、このままじゃあ、エマは無策で飛び出してケイネス達を助けに行ってしまう。
 だから僕は別案を提示する。

 全く……エマは優しすぎるよ。
 でも、だからこそ、エマの望む事は叶えてあげたくなるんだけどね。

「アタシは……できることならノロワを危険にさらしたくない。でも、ケイネス達も見捨てられない。……だから、ごめんノロワ。アタシと一緒に命を懸けて」
「オーケー。なら、プランBでいこう。作戦を伝えるから耳を貸して」

 恥ずかしくて口には絶対しないけど、エマのためなら命なんていくつでも懸けるよ。

 僕はエマに近づき、作戦を伝え出す。
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