7 / 44
7話 弁明
しおりを挟む「大変申し訳ありませんでした」
僕は土下座をしながらエマに謝罪の言葉を述べる。
右頬に立派な紅葉マークがついたままだけど、必死に謝罪を続ける。
誤解……というより完全に言葉足らずだったけど、今回はどう考えても僕が悪い。
エマからしたら、優しい言葉をかけて懐柔してきた男がいきなり体を求めてきたようなものだ。
まさにゴミ屑チャラ男の所業……そりゃあ殴られもするよね。
「……もう分かったから頭を上げなさいよ」
よかった、なんとかエマから許しを貰えた。
せっかく真の仲間になれたのに、速攻で破綻するところだった。
「ううう……お許しいただき感謝いたします」
「まったく、紛らわしいのよ! ビンタした事は謝らないからね!! ……ただ、大丈夫? 痛くない?」
「うん、大丈夫だよ!」
本当はめちゃくちゃ痛いけど、これ以上エマに気を遣わせるのも忍びないからここは痩せ我慢をする。
一瞬、『エマの職業って『魔法使い』じゃなくて『武闘家』だったっけ?』と錯覚してしまうくらいの見事な一撃でした。
まだちょっと視界がチカチカするし。
それにしても、僕が悪かったのにビンタをした事を気に病むなんて、エマの優しさが滲み出てるなぁ。
「それで、さっき謝りながら説明してた事だけど……アタシに『呪い』をかけるってどういう事?」
そう、僕はエマに『呪い』をかけるために服を脱いでもらうようお願いをした。
実はエマの話を聞きながら考えていた事があった。
『呪い』には大きく分けて二つの種類が存在する。
能力低下系の『呪い』と状態異常系の『呪い』だ。
能力低下系はステータスのパワーやスピードを下げたり、斬撃や炎の耐性を下げたりする事ができる。
対して状態異常系は相手を混乱や酩酊、恐怖状態にしたり、五感の一部を奪ったりできる。
状態異常系の方が精神に異常をきたす影響で、その分代償も重くなったりする。
ちなみに前回ワーウルフ戦で使った『スロウ』は『対象を遅延状態にさせる』といったものでどちらかと言えば状態異常系に分類される。
そして数ある状態異常系の呪いの中には『魔力出力を抑える』というものがある。
エマは人並み外れた魔力量のせいで魔力のコントロールがままならないっていう欠点がある。
そこで、僕の『呪い』がダムのようにエマの魔力を人工的にコントロールすれば、エマは魔法を使えるようになるんじゃないかと考えた。
僕は改めてエマに『呪い』をかける理由を説明する。
「もちろん上手くいくって保証はないけど、試してみる価値はあるんじゃないかな?」
「確かに『呪い』による魔力のコントロールはまだ試した事がなかったわね。ノロワの言う通り、アタシが魔法を使いこなせる可能性が少しでもあるなら試してみたい気持ちはある。……だけど、いいの? その……『呪い』を使うと、代償ってのがあるんでしょ?」
……本当にいい子だな、エマは。
エマの言う通り、『呪い』には代償があり、より強力な『呪い』を使うほど、その代償も大きくなる。
エマは、こんな時でも僕にふりかかる代償のことを心配してくれたんだ。
だけど、その心配は杞憂なんだよね。
「安心していいよ。『呪い』を受ける側が『呪い』を受けいれる場合に限り、僕への代償はないから!」
呪いの代償は、『呪い』を受けた側の深層心理による抵抗が、僕への代償として返ってくる仕組みになっている。
つまり、今回のように『呪い』に対して抵抗さえしなければ代償は発生しないってわけだ。
「そっか……。うん、分かった。それならアタシも覚悟を決めるよ!!」
そう言うと、エマは覚悟を決めた表情で、突然上着を脱ぎ出す。
「うえっ!? ちょっ、待っ……えええ!?」
いきなりの事で思いっきり動揺してしまう。
咄嗟に視線は外したけど、チラッとピンク色のフリルのついた下着が見えてしまった……。
「なななな、なんでいきなり脱ぎ出すのっ!?」
「だ、だって、さっにノロワが服を脱いでって言ったじゃない。服を脱がなきゃかけられない『呪い』なんでしょ?」
確かに今回僕がエマにかける『呪い』は素肌に触れるのが発動条件だけど……、
「ごめん、それも説明不足だった!! 背中に触れれば『呪い』をかけられるから、全部脱ぐ必要はないよ!!」
「んなっ!?」
エマが早とちりに気がついたのか、顔を更に赤らめ、プルプルと震え出す。
「だ……」
「だ?」
「だったら……さっさと説明しときなさいよ!!」
「うん、そうだよね、ごめんなぶべらぁっ!?!?」
今度は左頬に強烈なビンタを振り下ろされた。
これで両頬にバランスよく綺麗な手型がつきました……。
◇◆◇◆◇
「それじゃあそろそろ『呪い』をかけるね」
「ええ、お願いするわ」
僕はエマの背後に立ち、背中にそっと触れる。
今のエマの格好は上着を脱いで、その上着で胸元を隠しているだけの状態だ。
僕の位置からは背中しか見えないけど……正直すごくドキドキする!
背中だけと言っても、エマは下着をつけたままな訳で……。
つまり、ピンクのブラ紐がバッチリ見えてしまってる訳で……。
これはあくまで施術の一環だから邪な気持ちは抱かないように努めるけど……うん、無理だっ!
童貞には刺激が強すぎます!!
「……んっ」
「っ!?!?」
エマが急に艶かしい吐息を漏らす。
僕は出来る限り動揺していないようよう振る舞っているけど、脳内は大パニック状態だ。
「ご、ごめん。背中に指が触れたから驚いちゃって……。我慢するわね」
「うん、じゃあ続けるね」
落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け……おちつけ!!
エマは僕を信じて文字通り背中を預けてくれたんだ。
そんなエマに欲情しているなんて知られたら、エマからの信頼を裏切ることになってしまう。
僕はこっそりと一息つき、呪力をこめてエマに『呪い』を刻みだす。
心頭滅却!
今は心を殺して、呪い続けろ!
「んっ、ふっ……、んん。……あっ!」
オチツケオチツケオチツ……けるか!
エマは呪われる際の反動がくすぐったいのか吐息を吐き続けるが、それがなんとも艶かしい。
僕はなけなしの理性を総動員する……けど、正直刺激が強すぎて頭がどうにかなりそうだ。
早く……早く終わってくれー!
11
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
【第二部完結】 最強のFランク光魔導士、追放される
はくら(仮名)
ファンタジー
※2024年6月5日 番外編第二話の終結後は、しばらくの間休載します。再開時期は未定となります。
※ノベルピアの運営様よりとても素敵な表紙イラストをいただきました! モデルは作中キャラのエイラです。本当にありがとうございます!
※第二部完結しました。
光魔導士であるシャイナはその強すぎる光魔法のせいで戦闘中の仲間の目も眩ませてしまうほどであり、また普段の素行の悪さも相まって、旅のパーティーから追放されてしまう。
※短期連載(予定)
※当作品はノベルピアでも公開しています。
※今後何かしらの不手際があるかと思いますが、気付き次第適宜修正していきたいと思っています。
※また今後、事前の告知なく各種設定や名称などを変更する可能性があります。なにとぞご了承ください。
※お知らせ
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる