破壊は追憶の果てに

奏紫 零慈

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O-2

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亜獣。異能力者たるソフィキエータが内在させているアウラ核を外界に放出させる暴走形態。アウラ核はその所有者によって様々な形や質を成す。今、俺達、【青の部隊】が戦っているのもそうだ。銀色の鱗から稲妻をはみ出させ、亡世のお伽話を連想させるドラゴンの頭。もうすっかり人の面影を無くしていた。だが俺には分かる。コイツの執念は暴走前からブレずに健在だ。むしろ亜獣として執念そのものになってしまったようだ。
「来るぞ!奴の攻撃だ!!」
鋭い顎から吐き出される電気の波。
「ぬおお!!」
間に合わず電気を浴びて、ジタバタする兵が数名。我らがSOGの特殊装備なら大方ダメージを軽減出来ているだろう。長い腕で電竜が整列した発電機を乱していく。
「キリがない。俺がやる…!!」
スッとロン毛の波立った髪の青兵が電竜の正面に踏みよる。コイツは俺の…
「あ、ショーへ!!」
「戦場でその名を呼ぶな!!俺は政府SOG特殊部隊青軍少佐、へー少佐だ!!」
少佐の片目に装着した精密義眼が光り、右腕の長い銃から鋭い放線が電竜を貫通する。
【幹部の青】も【青の司令官】も強力なアレイザーに殺されたらしい。戦地に派遣されて間もない俺は主席で士官学校を飛び出たショーへにそう告げられた。今ではコイツが青の部隊を率いている。
「す、すげぇ」
思わず圧巻。こんな強そうなソフィキエータを容易く倒しやがるなんて。
だが、俺には別の感情が滲み出てくる。
「留めはお前が刺せ」
ショーへは顎で瀕死の、アウラの消えている人の形に戻りかけた少年を示してきた。
「…やらないのか?ソイゴ」
俺にはこのソフィキエータのガキが悪者には見えない。
「まぁいい。俺がやる」
ほんとに戸惑いがないよな。
討伐を完了したへー少佐は俺の横をすれ違い
「害人に同情するな。俺達はRICHTOR(リヒター)。危険因子を理性的に殲滅し、オーマニティ界に秩序をもたらす。いい加減頭を冷やせ…」


いいのか?これで…

間違ってないんだよな?

俺が誓った正義ってこんなんだっけな

幼少期【亡世の伝(ロストワールドストーリー)】を読んで俺は勇者に憧れた。ヒーローになりたくて、部隊に入った。けど、思ってたのと何か違う。俺は夢の中でも倒してみたかったドラゴンを前に一撃も食らわせられなかった。
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