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本編第一章
年末年始のご案内です
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「そうだ! おとうさま、殿下のお誕生日はいつなのですか?」
ギルフォードは誕生日の返礼だからまだいいとして、殿下には何も差し上げていない。一方的にもらうだけなのはなんだか申し訳ない気がする。
「殿下は12月31日のお生まれだよ。毎年社交シーズンのはじまりのイベントが年末年始の王宮でのパーティなんだ。カイル殿下がお生まれになってからは、彼の誕生日も一緒に祝われるようになった。もっとも、殿下はまだ小さくていらっしゃるから、パーティのはじめにお顔を見せにいらっしゃるだけだけどね」
社交パーティとなると、私たち子どもは参加できない。ということは、ギルフォードのように誕生日のパーティを開くような習慣ははないということだ。
「私も何か、お返しをしないといけないのでしょうか」
「うーん、どうかなぁ。毎年主だった貴族は殿下へのプレゼントも用意しているけれど、うちはこんな小さな領だからね。そこまで求められないかと思って何もしたことがなかったんだが……」
「今年はこんな素敵なものをアンジェリカにいただいてしまいましたから、何かしないといけないのじゃないかしら」
「そうだなぁ。まぁ、まだ時間があるから、考えてみるか」
「それに、今年の社交シーズンはアンジェリカのことも考えておかないと」
「それもあるね」
両親の突如の相談に、私は首を傾げた。
「私と社交シーズンと、何か関係があるのですか?」
「いや、例年の社交シーズンは、私とカトレア2人で王都に家を借りて過ごしているんだよ。あとは世話係としてルビィにもついてきてもらっているんだが。この屋敷はロイたちに預けて、家畜たちの世話は領民に頼んでね。マリサにもまとまった休暇をとってもらっている。だけど、今年はアンジェリカがいるからね」
なるほど。つまり冬のシーズンは、両親は王都で社交に勤しむため、この屋敷を不在にするということらしい。ロイは領地の管理などもあるから屋敷に残り、キッチンメイドのマリサは休暇に入る。屋敷の維持は通いのメイドと、領民にお願いしておくのが通常だったが、今年は私が増えたことで様子が変わったらしい。つまり、私の処遇をどうするか、ということだ。
「冬の間だけ借りるタウンハウスは手狭だし、やることもあまりないからアンジェリカには退屈かもしれないな」
「他の貴族の子どもたちはどうしているのですか?」
「いろいろだよ。領地に残してくる人たちも多い。もっとも、そういう家は当主夫妻が不在でも大勢の使用人がいて、子どもたちの面倒を見てくれるようなところだよ。あとは王都に連れてくる人たちもいるが……それも、王都に自前のお屋敷があって、不自由なく暮らせるようなところばかりだ」
「我が家のような例はないのですか?」
「いや、冬の間だけ祖父母宅や親戚に預けたりしている家もあるようだけど」
めぼしい親戚が近くに住んでいない我が家では難しい話だ。近いといえばケビン伯父とスノウのところだけど、伯父はひとりで子ども2人を育てている。私1人増えてしまえば迷惑かもしれない。
「でも、アンジェリカひとりを家に残すのはしのびないですし。今年は私もこちらに残るというのではダメかしら」
「それもいいかもしれないね。最初のパーティくらいは2人で出た方がいいけど、あとはどうとでもなるからな」
「その間だけなら兄に頼めるかもしれませんし、マリサに休暇を少し遅らせてもらえるなら、それでもいいかもしれません。一緒に年越しができないのは残念だけれど……」
「ちょっと考えてみるよ」
誕生日プレゼントの話から、いつの間にかこの冬の過ごし方にまで話が発展していた。社交パーティとか、ほんと貴族ってめんどくさいなと、心の中で思ったことは黙っておいた。
ギルフォードは誕生日の返礼だからまだいいとして、殿下には何も差し上げていない。一方的にもらうだけなのはなんだか申し訳ない気がする。
「殿下は12月31日のお生まれだよ。毎年社交シーズンのはじまりのイベントが年末年始の王宮でのパーティなんだ。カイル殿下がお生まれになってからは、彼の誕生日も一緒に祝われるようになった。もっとも、殿下はまだ小さくていらっしゃるから、パーティのはじめにお顔を見せにいらっしゃるだけだけどね」
社交パーティとなると、私たち子どもは参加できない。ということは、ギルフォードのように誕生日のパーティを開くような習慣ははないということだ。
「私も何か、お返しをしないといけないのでしょうか」
「うーん、どうかなぁ。毎年主だった貴族は殿下へのプレゼントも用意しているけれど、うちはこんな小さな領だからね。そこまで求められないかと思って何もしたことがなかったんだが……」
「今年はこんな素敵なものをアンジェリカにいただいてしまいましたから、何かしないといけないのじゃないかしら」
「そうだなぁ。まぁ、まだ時間があるから、考えてみるか」
「それに、今年の社交シーズンはアンジェリカのことも考えておかないと」
「それもあるね」
両親の突如の相談に、私は首を傾げた。
「私と社交シーズンと、何か関係があるのですか?」
「いや、例年の社交シーズンは、私とカトレア2人で王都に家を借りて過ごしているんだよ。あとは世話係としてルビィにもついてきてもらっているんだが。この屋敷はロイたちに預けて、家畜たちの世話は領民に頼んでね。マリサにもまとまった休暇をとってもらっている。だけど、今年はアンジェリカがいるからね」
なるほど。つまり冬のシーズンは、両親は王都で社交に勤しむため、この屋敷を不在にするということらしい。ロイは領地の管理などもあるから屋敷に残り、キッチンメイドのマリサは休暇に入る。屋敷の維持は通いのメイドと、領民にお願いしておくのが通常だったが、今年は私が増えたことで様子が変わったらしい。つまり、私の処遇をどうするか、ということだ。
「冬の間だけ借りるタウンハウスは手狭だし、やることもあまりないからアンジェリカには退屈かもしれないな」
「他の貴族の子どもたちはどうしているのですか?」
「いろいろだよ。領地に残してくる人たちも多い。もっとも、そういう家は当主夫妻が不在でも大勢の使用人がいて、子どもたちの面倒を見てくれるようなところだよ。あとは王都に連れてくる人たちもいるが……それも、王都に自前のお屋敷があって、不自由なく暮らせるようなところばかりだ」
「我が家のような例はないのですか?」
「いや、冬の間だけ祖父母宅や親戚に預けたりしている家もあるようだけど」
めぼしい親戚が近くに住んでいない我が家では難しい話だ。近いといえばケビン伯父とスノウのところだけど、伯父はひとりで子ども2人を育てている。私1人増えてしまえば迷惑かもしれない。
「でも、アンジェリカひとりを家に残すのはしのびないですし。今年は私もこちらに残るというのではダメかしら」
「それもいいかもしれないね。最初のパーティくらいは2人で出た方がいいけど、あとはどうとでもなるからな」
「その間だけなら兄に頼めるかもしれませんし、マリサに休暇を少し遅らせてもらえるなら、それでもいいかもしれません。一緒に年越しができないのは残念だけれど……」
「ちょっと考えてみるよ」
誕生日プレゼントの話から、いつの間にかこの冬の過ごし方にまで話が発展していた。社交パーティとか、ほんと貴族ってめんどくさいなと、心の中で思ったことは黙っておいた。
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