55 / 307
本編第一章
おうちに帰りましょう
しおりを挟む
そうしてうっすらと意識を取り戻したのはどれくらい後のことか。
カーテンから漏れてくる明るい光が、私のまぶたにちらちらと映る。
(もう、朝かぁ……)
寝覚はそれほど悪いほうじゃない。これは前世からそうだった。意識がはっきりしてくるのと同時に目もぱっちりと開いた。そしてそこに映る、見覚えのない天井。
(そうだ、アッシュバーン伯爵家に滞在していたんだった)
今日はもう自宅に帰る日。両親や御者はすでに準備を始めているかもしれない。
こうしてはいられない、と身体を起こそうとするも、何かに遮られた。私の胸元に伸びる誰かの手が、私を離すまいと強くシーツに押し付けているかのようだ。
そして私の左肩にはくすぐったいような不思議な感覚があった。ふわふわの金色の髪の毛が、私の身動ぎに併せてさわりと揺れる。
……悲鳴をあげなかった自分を、誰か褒めてほしい。
その思い当たる感触に、恐る恐る、自由な右手を駆使して、触ってみる。掻き上げた髪の下から覗いたのは、天使のような静かな寝顔。もしかしなくてもカイルハート王子。
(無理無理無理無理、朝から無理難題……!!!)
必死に彼の手をほどこうにも、いったいどこから力が湧いているのか信じられないほどの強い力で私を押さえつけている。私は声にならない声をあげながらじたばたと涙目でかぶりを振った。このまま殿下が目を覚まして「おはよう」なんてはにかんだりしたら、衝撃で死ねる。
そんな私の心の悲鳴を聞きつけたのかどうなのか、部屋付きのメイドさんがどこからともなくすっと現れた。
「あら、お嬢様、お目覚めですね。殿下は……まだのようですが」
「あの、私、起きたいんですけど!?」
「できればもう少しこのままでいていただけると眼福……やだ、そんな泣きそうな顔なさらないでください、わかりましたから!」
メイドさんは至極残念といった表情でなんとか殿下の腕を引き離してくれた。私はその隙をついてずざざざざざっとベッドの端まで逃げる。あ、危なかった……。
そんな私たちの動きに何かを察したのか、残りの3人も次々に目を覚ました。向こうのベッドではミシェルが、亜麻色の髪を乱して俯き加減にシーツから這い出している。ギルフォードはまだとろんとした目のまま大あくび。そして殿下も翠玉の瞳をぱちぱちさせて小さくふわりとあくびする。
(クッ……なんだこの光景! 一幅の名画のようだわ!!!)
どの子も壮絶にかわいい。眼福と言いかけたメイドさんの気持ちがわかるってものだ。
「おは、おはようございます、みなさまがた! その、私は帰りの準備がありますのでこれで失礼いたしますね!」
言い終わらないうちにベッドから飛び降りて入り口の扉にダッシュする。帰り道はたぶんわかる。着替えがまだだけど、そこは5歳児、許されるだろう。
「あ! アンジェリカ……っ」
誰かが私の名を呼んだけど無視して、私は部屋を飛び出した。これ以上あの部屋にいてあの光景を見ていたら、いらぬ扉が開きそうで恐ろしいわ。
そうして辿り着いた部屋では、すでに両親が身支度を終えていた。メイドもつれずに戻ってきた私に驚いた素振りだったが、何も言わずに身支度を手伝ってくれた。このあと朝食を部屋でいただき、ダスティン領から迎えに来てくれた御者と一緒に帰る手はずになっている。よかった、部屋で朝食、万歳!
そんなわけで長い長い滞在が終わり、ようやく帰途につくことになった。ちなみに汚された私のドレスはシミなど跡形もなく消え去り、昨日いただいたウェディングドレスのような美しいドレスとともに衣装箱に収められた。伯爵夫人の温情でティアラやパールのアクセサリ、靴までもらってしまって、我が家は一生アッシュバーン家に足を向けて寝られないことになってしまった。いや、今までもできなかったんだけどね。
見送りにはアッシュバーン伯爵、伯爵老、それにミシェルとギルフォードも出てきてくれた。殿下はさすがに身分的に難しいので部屋で待機らしい。「ものすごくふくれっつらでしたよ」とはミシェルの談だ。
「殿下が、ぜひ王宮にも遊びにきてほしいとおっしゃっておられました」
「……社交辞令として受け止めておきます」
私の身分でおいそれと王宮に伺候などできない。父ですら複雑な手続きがいる。ミシェルは側近候補として特例が認められ側にいるが、本来は子どもが伺うには難しい場所だ。それをお互いわかっているから、必要以上の会話は交わさない。
この人も大変だなぁ、と頭ひとつ分背が高い少年を見上げる。私のような完全部外者の小娘に言われても辛いだけだろうから、敢えて口にはしなかったけれど、彼は何かを察したのか、「私自身としても、叶うならあなたに王宮に来てもらいたいところです」と絞り出すように呟いた。うん、行かないよ?
「次はおまえの家で勝負だな」
「……いろいろ突っ込みどころがあるというか、突っ込みどころしかない見送りのセリフをありがとうございます。未来のために全部潰しておきたいのですが、まず“次”はありませんし、“おまえの家”、すなわち“私の家”にギルフォード様がおいでになる事実もありませんし、“勝負”もありえませんから。今のセリフで採用されるのは助詞の使用だけですから」
「難しいこと言われても俺はよくわからん!」
「わかろうよ! お勉強の時間も大事だよ!!」
そんな子どもたちのやりとりの隣で、大人たちも次の段取りを決めていたようだ。伯爵老の訪問は二週間後。7月の頭になる。
見送りの方々に別れを告げて、私たちはアッシュバーン伯爵家を後にした。
「今回の訪問はいい機会になったね」
ご満悦の父に継母も相槌を打つ。
「えぇ、アンジェリカも伯爵家のおぼっちゃまたちと仲良くなれてみたいで、頼もしいですわ」
「確かに、初対面の人たちとも仲良くできて、アンジェリカの社交力は素晴らしかったよ。何人かおまえに夢中になった男の子もいたからね。子爵家の方にも、婚約の予定はあるのかと打診されたよ」
「まぁ、アンジェリカにはまだ早いですわ」
父の発言に継母が驚いたが、私も驚いた。え、ちょっと待って、まだ5歳だよ?
「あぁ、いささか早すぎるし、それにアンジェリカはうちの後継だからね。適当にはぐらかしておいたが……それにしてもこの手の話題はまだまだ先の話だと思っていたのだけどね。婚約を遠回しに打診されたり、アンジェリカが殿下方と仲良くしているところを見ると、ね」
父がしんみりとしながら私の頭を撫でた。
「おとうさま、私はお嫁にはいきませんよ?」
私にはダスティン領を継がねばならないという使命がある。それに当主は、継ぎさえすればいいというものでもない。その土地に住まわなくてはならない。そうでなければ聖霊の加護を失ってしまうのだ。もちろん、社交シーズンに一時的に王都などへ移り住むことはあれど、生活の基盤は一生涯、領地に置くことになる。
「あなた、まだ先の話ですよ。アンジェリカとの生活は始まったばかりですもの。今はこの幸せを楽しみましょう」
「そうだね」
父は言いながら私を抱き上げ、膝に座らせた。なんだか目頭が熱くなるのをごまかしたくて、私は流れる車窓の風景に夢中になるふりをした。
カーテンから漏れてくる明るい光が、私のまぶたにちらちらと映る。
(もう、朝かぁ……)
寝覚はそれほど悪いほうじゃない。これは前世からそうだった。意識がはっきりしてくるのと同時に目もぱっちりと開いた。そしてそこに映る、見覚えのない天井。
(そうだ、アッシュバーン伯爵家に滞在していたんだった)
今日はもう自宅に帰る日。両親や御者はすでに準備を始めているかもしれない。
こうしてはいられない、と身体を起こそうとするも、何かに遮られた。私の胸元に伸びる誰かの手が、私を離すまいと強くシーツに押し付けているかのようだ。
そして私の左肩にはくすぐったいような不思議な感覚があった。ふわふわの金色の髪の毛が、私の身動ぎに併せてさわりと揺れる。
……悲鳴をあげなかった自分を、誰か褒めてほしい。
その思い当たる感触に、恐る恐る、自由な右手を駆使して、触ってみる。掻き上げた髪の下から覗いたのは、天使のような静かな寝顔。もしかしなくてもカイルハート王子。
(無理無理無理無理、朝から無理難題……!!!)
必死に彼の手をほどこうにも、いったいどこから力が湧いているのか信じられないほどの強い力で私を押さえつけている。私は声にならない声をあげながらじたばたと涙目でかぶりを振った。このまま殿下が目を覚まして「おはよう」なんてはにかんだりしたら、衝撃で死ねる。
そんな私の心の悲鳴を聞きつけたのかどうなのか、部屋付きのメイドさんがどこからともなくすっと現れた。
「あら、お嬢様、お目覚めですね。殿下は……まだのようですが」
「あの、私、起きたいんですけど!?」
「できればもう少しこのままでいていただけると眼福……やだ、そんな泣きそうな顔なさらないでください、わかりましたから!」
メイドさんは至極残念といった表情でなんとか殿下の腕を引き離してくれた。私はその隙をついてずざざざざざっとベッドの端まで逃げる。あ、危なかった……。
そんな私たちの動きに何かを察したのか、残りの3人も次々に目を覚ました。向こうのベッドではミシェルが、亜麻色の髪を乱して俯き加減にシーツから這い出している。ギルフォードはまだとろんとした目のまま大あくび。そして殿下も翠玉の瞳をぱちぱちさせて小さくふわりとあくびする。
(クッ……なんだこの光景! 一幅の名画のようだわ!!!)
どの子も壮絶にかわいい。眼福と言いかけたメイドさんの気持ちがわかるってものだ。
「おは、おはようございます、みなさまがた! その、私は帰りの準備がありますのでこれで失礼いたしますね!」
言い終わらないうちにベッドから飛び降りて入り口の扉にダッシュする。帰り道はたぶんわかる。着替えがまだだけど、そこは5歳児、許されるだろう。
「あ! アンジェリカ……っ」
誰かが私の名を呼んだけど無視して、私は部屋を飛び出した。これ以上あの部屋にいてあの光景を見ていたら、いらぬ扉が開きそうで恐ろしいわ。
そうして辿り着いた部屋では、すでに両親が身支度を終えていた。メイドもつれずに戻ってきた私に驚いた素振りだったが、何も言わずに身支度を手伝ってくれた。このあと朝食を部屋でいただき、ダスティン領から迎えに来てくれた御者と一緒に帰る手はずになっている。よかった、部屋で朝食、万歳!
そんなわけで長い長い滞在が終わり、ようやく帰途につくことになった。ちなみに汚された私のドレスはシミなど跡形もなく消え去り、昨日いただいたウェディングドレスのような美しいドレスとともに衣装箱に収められた。伯爵夫人の温情でティアラやパールのアクセサリ、靴までもらってしまって、我が家は一生アッシュバーン家に足を向けて寝られないことになってしまった。いや、今までもできなかったんだけどね。
見送りにはアッシュバーン伯爵、伯爵老、それにミシェルとギルフォードも出てきてくれた。殿下はさすがに身分的に難しいので部屋で待機らしい。「ものすごくふくれっつらでしたよ」とはミシェルの談だ。
「殿下が、ぜひ王宮にも遊びにきてほしいとおっしゃっておられました」
「……社交辞令として受け止めておきます」
私の身分でおいそれと王宮に伺候などできない。父ですら複雑な手続きがいる。ミシェルは側近候補として特例が認められ側にいるが、本来は子どもが伺うには難しい場所だ。それをお互いわかっているから、必要以上の会話は交わさない。
この人も大変だなぁ、と頭ひとつ分背が高い少年を見上げる。私のような完全部外者の小娘に言われても辛いだけだろうから、敢えて口にはしなかったけれど、彼は何かを察したのか、「私自身としても、叶うならあなたに王宮に来てもらいたいところです」と絞り出すように呟いた。うん、行かないよ?
「次はおまえの家で勝負だな」
「……いろいろ突っ込みどころがあるというか、突っ込みどころしかない見送りのセリフをありがとうございます。未来のために全部潰しておきたいのですが、まず“次”はありませんし、“おまえの家”、すなわち“私の家”にギルフォード様がおいでになる事実もありませんし、“勝負”もありえませんから。今のセリフで採用されるのは助詞の使用だけですから」
「難しいこと言われても俺はよくわからん!」
「わかろうよ! お勉強の時間も大事だよ!!」
そんな子どもたちのやりとりの隣で、大人たちも次の段取りを決めていたようだ。伯爵老の訪問は二週間後。7月の頭になる。
見送りの方々に別れを告げて、私たちはアッシュバーン伯爵家を後にした。
「今回の訪問はいい機会になったね」
ご満悦の父に継母も相槌を打つ。
「えぇ、アンジェリカも伯爵家のおぼっちゃまたちと仲良くなれてみたいで、頼もしいですわ」
「確かに、初対面の人たちとも仲良くできて、アンジェリカの社交力は素晴らしかったよ。何人かおまえに夢中になった男の子もいたからね。子爵家の方にも、婚約の予定はあるのかと打診されたよ」
「まぁ、アンジェリカにはまだ早いですわ」
父の発言に継母が驚いたが、私も驚いた。え、ちょっと待って、まだ5歳だよ?
「あぁ、いささか早すぎるし、それにアンジェリカはうちの後継だからね。適当にはぐらかしておいたが……それにしてもこの手の話題はまだまだ先の話だと思っていたのだけどね。婚約を遠回しに打診されたり、アンジェリカが殿下方と仲良くしているところを見ると、ね」
父がしんみりとしながら私の頭を撫でた。
「おとうさま、私はお嫁にはいきませんよ?」
私にはダスティン領を継がねばならないという使命がある。それに当主は、継ぎさえすればいいというものでもない。その土地に住まわなくてはならない。そうでなければ聖霊の加護を失ってしまうのだ。もちろん、社交シーズンに一時的に王都などへ移り住むことはあれど、生活の基盤は一生涯、領地に置くことになる。
「あなた、まだ先の話ですよ。アンジェリカとの生活は始まったばかりですもの。今はこの幸せを楽しみましょう」
「そうだね」
父は言いながら私を抱き上げ、膝に座らせた。なんだか目頭が熱くなるのをごまかしたくて、私は流れる車窓の風景に夢中になるふりをした。
91
お気に入りに追加
2,298
あなたにおすすめの小説
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
嫌われ者の側妃はのんびり暮らしたい
風見ゆうみ
恋愛
「オレのタイプじゃないんだよ。地味過ぎて顔も見たくない。だから、お前は側妃だ」
顔だけは良い皇帝陛下は、自らが正妃にしたいと希望した私を側妃にして別宮に送り、正妃は私の妹にすると言う。
裏表のあるの妹のお世話はもううんざり!
側妃は私以外にもいるし、面倒なことは任せて、私はのんびり自由に暮らすわ!
そう思っていたのに、別宮には皇帝陛下の腹違いの弟や、他の側妃とのトラブルはあるし、それだけでなく皇帝陛下は私を妹の毒見役に指定してきて――
それって側妃がやることじゃないでしょう!?
※のんびり暮らしたかった側妃がなんだかんだあって、のんびりできなかったけれど幸せにはなるお話です。
悪役令嬢が死んだ後
ぐう
恋愛
王立学園で殺人事件が起きた。
被害者は公爵令嬢 加害者は男爵令嬢
男爵令嬢は王立学園で多くの高位貴族令息を侍らせていたと言う。
公爵令嬢は婚約者の第二王子に常に邪険にされていた。
殺害理由はなんなのか?
視察に訪れていた第一王子の目の前で事件は起きた。第一王子が事件を調査する目的は?
*一話に流血・残虐な表現が有ります。話はわかる様になっていますのでお嫌いな方は二話からお読み下さい。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる