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第2章 幼児期
16 オーバーキル
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サムライゴーレム達が足を肩幅に開き、巨大な弓へこれまた1.5メートルはあろうかという巨大な矢をつがえる。その動作は一糸乱れず、良く訓練された軍隊のようだ。遠くからは「ギャッ! ギャッ!」と笑い声が聞こえてくる。
これが『ゴブリンの笑い声』か。実際には鳴き声なんだそうだが、笑っているように聞こえるため、そう呼ばれるそうだ。
聞いてるだけですっごい不快感だ。それに加えて、顔も醜悪だという。あんまり近づいて欲しくないな。サムライゴーレムに弓を装備させておいて良かった。
「全員、その場で待機! 鈴音殿の指示を待て!」
村民へ声を張り上げる龍一郎じいさん。
村民達は、ゴーレムの10メートル程後で息を詰めるようにして待機している。
「龍一郎、恐らく村民の出番は無いぞ。主がやり過ぎたからな」
「はっはっは。念のためですよ。それに、ここは私たちの村ですから。孫に頼りきりでは申し訳ない」
龍一郎が俺にウィンクをする。お茶目なじいさんだ。
「……来る! バカ弟子構えろ! 一匹たりとも打ち漏らすな!」
「はいです!」
森の奥から火の灯りが複数揺らめくのが見え始める。時刻は午後8時をまわっている。恐らくゴブリン達が持つ松明の光だろう。思ったより知能があるようだ。
ザッ!
ゴーレム達が一斉に矢を引き絞る。
エマニエルさんと千春が魔法を唱え始める。
村民達が緊張で武器を握り直すのが見えた。
全員がじっと森を見つめる。
ゴブリンの笑い声がどんどん大きくなる。
目の前の茂みがガサッと音を立てる。
サムライゴーレムの弓が目一杯に引き絞られる。
「皆、来るぞ!」
鈴音が叫ぶと同時にサボテンのように着飾ったゴブリンが5体躍り出る!
……サボテン?
5体のゴブリンはそのまま地面へ倒れる。よく見れば、頭を中心に体中から矢を生やしたまま絶命していた。
「ギャッ! ギャッ!」
次は20体以上の団体さんだ。先ほどと同じように茂みを飛び越え躍り出る……が、そこまで。機械のように正確なサムライゴーレムの矢に頭を射抜かれて絶命する。
ゴブリンは学習能力が無いのか、次々と現れては同じ場所でサムライゴーレムの矢の餌食となっていくため、まるで土嚢のようにゴブリンの死体が積み重なっていく。
「す、凄いです! 矢が速すぎて目追えないです! それに加えてあの正確さ! まさか身体強化をゴーレムに? そんな事が可能なんです? あーもう、巧魔氏! やり方を教えて下さいです!」
「バカ弟子が! 油断して詠唱を中断するな! ゴーレムの矢は残り少ないぞ!」
ゴーレムは20本用意してあった矢を速くも使い切っていた。これは今回の反省点だ。例えば、始めに躍り出た5体のゴブリンに84体のゴーレムが一斉射撃をしてしまったが、明らかにオーバーキルである。おかげで予想よりも速く矢を使い切ってしまった。行動プログラムを見直す必要がありそうだ。
「は、はいです師匠!」
千春が魔法を唱え始める。
これが『ゴブリンの笑い声』か。実際には鳴き声なんだそうだが、笑っているように聞こえるため、そう呼ばれるそうだ。
聞いてるだけですっごい不快感だ。それに加えて、顔も醜悪だという。あんまり近づいて欲しくないな。サムライゴーレムに弓を装備させておいて良かった。
「全員、その場で待機! 鈴音殿の指示を待て!」
村民へ声を張り上げる龍一郎じいさん。
村民達は、ゴーレムの10メートル程後で息を詰めるようにして待機している。
「龍一郎、恐らく村民の出番は無いぞ。主がやり過ぎたからな」
「はっはっは。念のためですよ。それに、ここは私たちの村ですから。孫に頼りきりでは申し訳ない」
龍一郎が俺にウィンクをする。お茶目なじいさんだ。
「……来る! バカ弟子構えろ! 一匹たりとも打ち漏らすな!」
「はいです!」
森の奥から火の灯りが複数揺らめくのが見え始める。時刻は午後8時をまわっている。恐らくゴブリン達が持つ松明の光だろう。思ったより知能があるようだ。
ザッ!
ゴーレム達が一斉に矢を引き絞る。
エマニエルさんと千春が魔法を唱え始める。
村民達が緊張で武器を握り直すのが見えた。
全員がじっと森を見つめる。
ゴブリンの笑い声がどんどん大きくなる。
目の前の茂みがガサッと音を立てる。
サムライゴーレムの弓が目一杯に引き絞られる。
「皆、来るぞ!」
鈴音が叫ぶと同時にサボテンのように着飾ったゴブリンが5体躍り出る!
……サボテン?
5体のゴブリンはそのまま地面へ倒れる。よく見れば、頭を中心に体中から矢を生やしたまま絶命していた。
「ギャッ! ギャッ!」
次は20体以上の団体さんだ。先ほどと同じように茂みを飛び越え躍り出る……が、そこまで。機械のように正確なサムライゴーレムの矢に頭を射抜かれて絶命する。
ゴブリンは学習能力が無いのか、次々と現れては同じ場所でサムライゴーレムの矢の餌食となっていくため、まるで土嚢のようにゴブリンの死体が積み重なっていく。
「す、凄いです! 矢が速すぎて目追えないです! それに加えてあの正確さ! まさか身体強化をゴーレムに? そんな事が可能なんです? あーもう、巧魔氏! やり方を教えて下さいです!」
「バカ弟子が! 油断して詠唱を中断するな! ゴーレムの矢は残り少ないぞ!」
ゴーレムは20本用意してあった矢を速くも使い切っていた。これは今回の反省点だ。例えば、始めに躍り出た5体のゴブリンに84体のゴーレムが一斉射撃をしてしまったが、明らかにオーバーキルである。おかげで予想よりも速く矢を使い切ってしまった。行動プログラムを見直す必要がありそうだ。
「は、はいです師匠!」
千春が魔法を唱え始める。
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