私のことを嫌いなはずの冷徹騎士に、何故か甘く愛されています ※ただし、目は合わせてくれない

夕月

文字の大きさ
上 下
34 / 43
番外編

エルヴィンの誕生日 4 ★

しおりを挟む
 エルヴィンの指と唇に、幾度となく絶頂へと導かれたシフィルは、荒くなった呼吸を整えながらシーツの上に身体を投げ出した。
 ショーツはすでに意味をなしていないほどにぐっしょりと濡れているけれど、脱がせるのが勿体ないというエルヴィンの主張によりシフィルは未だ下着を身につけたままだ。
「シフィル、疲れた?」
「ん、大丈夫……」
「シフィルが可愛いから、ついやりすぎてしまうな」
 小さく笑ったエルヴィンが、ゆっくりとシフィルを抱き起こした。身を任せて身体を起こせば、エルヴィンと向かい合って座ることとなる。先程までの自分の乱れようや、汗や何やらで濡れて肌に張りつく下着の状況とか、諸々の恥ずかしさでうつむこうとしたシフィルの顔を、エルヴィンの手が止めた。

「シフィル、お願いがあるんだけど」
「な、何……?」
 この状況でエルヴィンからのお願いごとなんて、嫌な予感しかない。くすりと笑った声も少し意地悪な響きをしていて、それはベッドの上でシフィルを追い詰める時と同じ声だ。
「今日は、シフィルが上になって」
「え……」
「この下着を着たシフィルはすごく可愛いから、目に焼きつけておきたい」
「も、もうたくさん見たでしょう……っ」
「まだ足りない。それに、今日は――」
 悪戯っぽい笑みを浮かべながら、エルヴィンがちらりと時計を見た。すでに日付が変わって大分経っている。誕生日のお祝いとしてねだられていることは分かっているし、これ以上抵抗したところで就寝時間が更に遅くなるだけだ。きっとエルヴィンは諦める気はないだろうから。

「……っ、今日だけ、だからね!」
 羞恥心を振り払うように小さく叫ぶと、エルヴィンがうなずいて嬉しそうに笑った。そんな笑顔を見られるのなら、この恥ずかしさも我慢できると思ってしまう自分は、つくづくエルヴィンに夢中だなと考えながら、シフィルはゆっくりとエルヴィンの身体をベッドに押し倒した。

 ◇

「……これは、やばいな」
 うわずったようなエルヴィンの声に満足して、シフィルは笑みを浮かべた。
「気持ち、いい?」
 とはいえ、問いかけるシフィルの声にもあまり余裕はない。いつもと体勢が違うからか、それともこの下着のせいで興奮しているからだろうか。熱く疼いた身体にエルヴィンのものを受け入れただけで、すでに軽い絶頂を迎えそうなほどなのだ。
 震えて崩れ落ちそうだけど、身動きすればその刺激でまた一層高められてしまう。
 快楽を逃すようにゆっくりと呼吸をしながら、シフィルはエルヴィンを見下ろした。
 いつもはシフィルの髪がシーツに広がっているのに、今はエルヴィンの髪がシーツを彩っている。さらりと肩を流れた銀髪が、まるで囲うようにエルヴィンの顔の周りに落ちて、このまま彼を閉じ込めてしまえたらと思う。

「死ぬほど気持ちがいいし、こんなに可愛くて素敵な誕生日プレゼントをもらえて、俺は幸せ者だな」
 本当に幸せそうにエルヴィンが笑うから、シフィルも嬉しくなる。だけど、いつまでもこうしていられるほどの余裕は、今のシフィルにはない。
「それは良かった……けど、私もう、限界……」
「限界っていうのは、こういう意味で?」
 途端に意地悪な表情になったエルヴィンが下から突き上げるから、シフィルは悲鳴をあげた。
「や、待って、動いちゃだめ」
「じゃあ、シフィルが自分で気持ちいいように動いてみて」
「そんな、無理っ」
 首を振って抵抗するものの、エルヴィンの手が腰に添えられて否応なく前後に揺さぶられる。
「だめ、エルヴィン……っ」
 青緑の瞳に浮かんだ涙が、頬を滑ってエルヴィンの胸の上に落ちた。
 悲鳴をあげて襲いくる快楽から逃れようと身体をよじるのに、腰を掴んだ手がそれを許してくれない。更に、手を伸ばしたエルヴィンがシフィルの胸の先を摘むから、その刺激にも身体が跳ねる。
 受け止めきれないほどの感覚に、一瞬頭が白くなったシフィルの身体がぐらりと傾いだ。
「シフィル」
 抱き止めたエルヴィンが、シフィルの背中に腕を回す。密着した身体のぬくもりにうっとりとしたのも束の間、そのまま下から何度も強く穿たれて、シフィルは必死でエルヴィンにしがみついた。
「や、あぁっ……エルヴィ……んんっ!」
 逃れられない快楽に涙をこぼしながら、シフィルは身体の中で弾けるように熱いものが広がっていくのを感じとっていた。

 ◇

 翌朝、いつもより遅い時間だったものの、シフィルは何とか起き上がることができた。
 普段は最低でも一晩で二度は抱かれるのが常だけど、昨夜はシフィルの希望通り一度で終わって寝かせてくれたのだ。とはいえ、その一回がかなり濃厚だったような気はするけれど。

 ちょうど仕事の休みが誕生日にかかっていたこともあり、シフィルは一日中エルヴィンのそばにいて、誕生日を祝った。
 食事も、作ったケーキもプレゼントも、どれもエルヴィンは嬉しいと喜んでくれたし、幸せそうな笑顔をたくさん向けられて、シフィルも幸せな一日となった。

 
「ん? これ、シフィル宛だな」
 家族や友人から届いたプレゼントを仕分けていると、エルヴィンがひとつの箱をシフィルに手渡した。可愛らしいラッピングのその箱の差出人は、友人のアレッタとカリンだ。
「エルヴィンに渡して……ってことかしら」
 首をかしげつつ箱を開くと、やはりそこにはシフィルとエルヴィンに宛てたメッセージカードが入っていた。
「あ、やっぱりエルヴィン宛よ。えぇと、お誕生日の素敵な夜のためにうちの新作を……ってちょっと待ってエルヴィンっ」
 文面に嫌な予感がしたものの、その時にはすでにエルヴィンがシフィルの手から箱を取り上げていた。
 中からあらわれたのは、やっぱりというか予想通りというか、下着だった。今回のものは薄くはないけれど、やたらとリボンが使われている。リボンは可愛いし、まるでエルヴィンの瞳を思わせるような色も素敵だけど、油断はできない。
 警戒するシフィルの前で、エルヴィンが下着をそっと取り上げた。そして、くすりと笑う。
「これは、シフィル自身がプレゼントになれる、というものらしいな」
「私が、プレゼント……?」
 首をかしげると、エルヴィンが笑いながら下着についたタグを指差した。そこには『プレゼントは、私♡』という文字と共に下着を身につけた女性のイラストが描かれていた。確かに全身にリボンを巻いたようなその姿はラッピングされたプレゼントに見えないこともないけれど、身につけるにはやっぱりハードルの高い下着だ。
「今夜はこれを着てくれる? シフィル」
 にっこりと笑ったエルヴィンから逃げようとソファの上で身体をよじるものの、あっという間に腰に回った手に捕まってしまう。
「昨晩も着たのに? そろそろ普通の寝衣で寝たいわ」
 無駄な抵抗と知りつつも小さくつぶやくと、エルヴィンの指先が言葉を封じるようにそっと唇に当てられた。
「だめかな。きっとよく似合うと思う。俺のための可愛いプレゼントになって、シフィル」
「うぅ、じゃあ……今夜、限り……なら」
 結局、シフィルはエルヴィンに弱いのだ。彼が喜ぶのなら、嬉しそうな笑顔が見られるのなら、少しだけ頑張ってみようかなと思ってしまう。
「楽しみにしてる」
 そう言って笑ったエルヴィンが、やっぱり幸せそうな笑顔を向けてくれるから。


 そして、夜。いつもより早い時間にベッドへと連れ込まれたシフィルは、羞恥心に耐えながら新しい下着を身につけた。
 エルヴィンは、それはそれは嬉しそうにシフィルの格好を褒め称え、昨晩セーブした分まできっちりと抱き潰されることとなった。


 
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

〖完結〗私はあなたのせいで死ぬのです。

藍川みいな
恋愛
「シュリル嬢、俺と結婚してくれませんか?」 憧れのレナード・ドリスト侯爵からのプロポーズ。 彼は美しいだけでなく、とても紳士的で頼りがいがあって、何より私を愛してくれていました。 すごく幸せでした……あの日までは。 結婚して1年が過ぎた頃、旦那様は愛人を連れて来ました。次々に愛人を連れて来て、愛人に子供まで出来た。 それでも愛しているのは君だけだと、離婚さえしてくれません。 そして、妹のダリアが旦那様の子を授かった…… もう耐える事は出来ません。 旦那様、私はあなたのせいで死にます。 だから、後悔しながら生きてください。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全15話で完結になります。 この物語は、主人公が8話で登場しなくなります。 感想の返信が出来なくて、申し訳ありません。 たくさんの感想ありがとうございます。 次作の『もう二度とあなたの妻にはなりません!』は、このお話の続編になっております。 このお話はバッドエンドでしたが、次作はただただシュリルが幸せになるお話です。 良かったら読んでください。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。