私のことを嫌いなはずの冷徹騎士に、何故か甘く愛されています ※ただし、目は合わせてくれない

夕月

文字の大きさ
上 下
26 / 43
番外編

シフィルの愛読書 3 ⭐︎

しおりを挟む

ちょっとだけ、R風味。



「これいいな。脱がせやすい」
 楽しそうな声と共に、パチリと小さな音がして胸元が緩む。胸の中央にホックのあるその下着は、アレッタの店で最近流行りのもの。ぎゅっと左右から寄せることで胸を大きく見せる効果があるのと、ホックを外すとこぼれ出る胸が良いと男性人気も高いのだという。シフィルの胸は、こぼれ出るほどないのが切ないけれど。
 
「すごく可愛い」
 吐息混じりに囁かれて、ぞくりと身体を震わせた瞬間、指先が胸の先をきゅっと摘むから、シフィルは思わず小さな悲鳴をあげた。
「まだ何もしてないのに、こんなに固くなってる」
 期待してた? と笑みを含んだ声が耳元で意地悪に響く。固く尖った胸の先を爪の先で引っかくようにされて、シフィルは快楽から逃れるように首を振った。
「違、そんなことっ」
「ふぅん、でもこっちもすでにすごく濡れているみたいだし」
「や、ぁんっ……」
 エルヴィンの指先が腰を撫でたと思った瞬間、はらりと下着のリボンを解かれてしまう。慌てて両脚をぎゅうっと閉じようとしたものの、脚の間に滑り込んできた手がそれを拒む。
 目隠しのせいか、濡れた音が響くのがいつもより大きく感じられて、シフィルは更に強く唇を噛みしめる。
「ほら、分かる? シフィル」
 わざと大きな水音をたてるように指を動かされて、シフィルは唇を震わせた。
「も……、やだぁ……っ」
 思わず漏れた声は泣きそうに歪んでいて、それに気づいたエルヴィンの指先が慌てたように離れていく。

「シフィル、ごめん。泣かないで」
 焦った声と共に、目元を覆っていたタイが取り除かれる。眩しさに目を細めた拍子に、ぽろりと涙がこぼれ落ちた。
 それを見たエルヴィンは、むしろ彼の方が泣きそうなほどに動揺した表情を浮かべる。
 涙がこぼれたのは多分眩しさのせいであって、決して本心から嫌だったわけではないのだけど、泣きたいほどに恥ずかしかったのは事実なので、シフィルは唇を尖らせてエルヴィンの胸元に顔を埋める。
「エルヴィン意地悪だし、すごく恥ずかしかった。それに顔が見えないのは、酷いことをされないと分かっていても、やっぱり不安だわ」
「うん、ごめん。少し調子に乗った」
 しゅんと萎れた様子のエルヴィンの声に少しだけ笑いながら、シフィルはぎゅうっと抱きつく腕に力を込めた。
「それから、ネタバレされたし。まだ読んでなかったのに」
「……ごめん」
「怒ってるから、優しくして。たくさん甘やかしてくれる?」
 そう言って見上げると、エルヴィンの表情が少し安心したように緩んだ。
「もちろん」
「じゃあ、ベッドに連れて行って? ソファだとやっぱり、落ち着かない」
 腕を広げて、抱き上げてとねだってみると、エルヴィンが優しく笑ってうなずいた。
「了解、俺のお姫様」
 シフィルをそっと抱き上げたエルヴィンは、小さく囁くとゆっくりと誓うように額に口づけた。押し当てられた唇の柔らかなぬくもりに目を細めて、シフィルは微笑んだ。

 
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く

ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。 逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。 「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」 誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。 「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」 だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。 妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。 ご都合主義満載です!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。