19 / 43
番外編
彼女のドレスを選ぶには 2
しおりを挟む
ローシェは、婚約者のマリウスを訪ねたあと、共にユスティナのもとへと向かった。
結婚式でシフィルが着るドレスの候補をユスティナはあれこれ挙げていて、ローシェの意見も聞かせて欲しいと言われていたのだ。
ユスティナの部屋へ近づくと、中からは何やら言い争うような声が聞こえてきた。部屋の前の護衛らは平然としているので、不穏な事態ではなさそうだけど。
ローシェはマリウスと顔を見合わせると、ユスティナの部屋の中へと足を進めた。
「……だから、何度言えば分かるの。我が王家に伝わるこのティアラを貸してあげると言っているのよ」
「シフィルはそんなことは望まないはずですから、余計な気遣いは結構です」
「余計な、ですって!? わたくしは、シフィルの親友なのよ。親友に大切なティアラを貸してあげることの、何が余計なことなの」
「シフィルは派手に装うことを嫌います。そんな、眩いばかりのものを着けるはずがない」
部屋の中でユスティナと言い争っていたのは、エルヴィンだった。机の上には、ドレスのカタログやアクセサリーなどが雑多に散らばっている。
どうやら、彼ともシフィルに着せるドレスやアクセサリーの相談をしていたようだ。
「まぁ、ローシェ! マリウスも、来てくれたのね。ねぇ、シフィルにこのティアラを貸すのはやっぱりだめかしら。ローシェは、どう思って?」
ユスティナが、ローシェの手を引いて部屋の中へと招き入れる。彼女が指し示したティアラは、大粒のダイヤが散りばめられていて美しいものの、確かにその輝きを身につけるのにはかなりの勇気がいりそうだ。それに、頭に載せるには色々な意味で重たい気がする。
「シフィルには、こんな派手なものは似合わない。ローシェもそう思わないか」
ユスティナとは逆の手を引いて、エルヴィンが訴える。
将来の義姉と義兄に挟まれて、ローシェは戸惑った笑みを浮かべた。今後のことを考えるとどちらとも良好な関係を維持したいところだけど、シフィルのことを思えば、答えは決まっている。
結婚式でシフィルが着るドレスの候補をユスティナはあれこれ挙げていて、ローシェの意見も聞かせて欲しいと言われていたのだ。
ユスティナの部屋へ近づくと、中からは何やら言い争うような声が聞こえてきた。部屋の前の護衛らは平然としているので、不穏な事態ではなさそうだけど。
ローシェはマリウスと顔を見合わせると、ユスティナの部屋の中へと足を進めた。
「……だから、何度言えば分かるの。我が王家に伝わるこのティアラを貸してあげると言っているのよ」
「シフィルはそんなことは望まないはずですから、余計な気遣いは結構です」
「余計な、ですって!? わたくしは、シフィルの親友なのよ。親友に大切なティアラを貸してあげることの、何が余計なことなの」
「シフィルは派手に装うことを嫌います。そんな、眩いばかりのものを着けるはずがない」
部屋の中でユスティナと言い争っていたのは、エルヴィンだった。机の上には、ドレスのカタログやアクセサリーなどが雑多に散らばっている。
どうやら、彼ともシフィルに着せるドレスやアクセサリーの相談をしていたようだ。
「まぁ、ローシェ! マリウスも、来てくれたのね。ねぇ、シフィルにこのティアラを貸すのはやっぱりだめかしら。ローシェは、どう思って?」
ユスティナが、ローシェの手を引いて部屋の中へと招き入れる。彼女が指し示したティアラは、大粒のダイヤが散りばめられていて美しいものの、確かにその輝きを身につけるのにはかなりの勇気がいりそうだ。それに、頭に載せるには色々な意味で重たい気がする。
「シフィルには、こんな派手なものは似合わない。ローシェもそう思わないか」
ユスティナとは逆の手を引いて、エルヴィンが訴える。
将来の義姉と義兄に挟まれて、ローシェは戸惑った笑みを浮かべた。今後のことを考えるとどちらとも良好な関係を維持したいところだけど、シフィルのことを思えば、答えは決まっている。
10
お気に入りに追加
668
あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

〖完結〗私はあなたのせいで死ぬのです。
藍川みいな
恋愛
「シュリル嬢、俺と結婚してくれませんか?」
憧れのレナード・ドリスト侯爵からのプロポーズ。
彼は美しいだけでなく、とても紳士的で頼りがいがあって、何より私を愛してくれていました。
すごく幸せでした……あの日までは。
結婚して1年が過ぎた頃、旦那様は愛人を連れて来ました。次々に愛人を連れて来て、愛人に子供まで出来た。
それでも愛しているのは君だけだと、離婚さえしてくれません。
そして、妹のダリアが旦那様の子を授かった……
もう耐える事は出来ません。
旦那様、私はあなたのせいで死にます。
だから、後悔しながら生きてください。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全15話で完結になります。
この物語は、主人公が8話で登場しなくなります。
感想の返信が出来なくて、申し訳ありません。
たくさんの感想ありがとうございます。
次作の『もう二度とあなたの妻にはなりません!』は、このお話の続編になっております。
このお話はバッドエンドでしたが、次作はただただシュリルが幸せになるお話です。
良かったら読んでください。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。