【R18】魔女の悪戯に巻き込まれた2人の、とある夜の話

5 魔法を解くのは愛の口づけ

「大丈夫です、私がその魔法を解いてあげます！」
「む、無理……っ」
　にっこり笑ってフィニアスの頬に手を伸ばそうとすると、涙目で激しく首を振られてしまった。怯えた様子の美少女を目の前にすると、何だかエレノアも新しい扉を開いてしまいそうになる。
「だって、私が口づけをすれば、その魔法はすぐ解けるって、魔女リーザに聞いたわ。フィニアス様だって、いつまでもその姿でいるわけにはいかないでしょう？」
　エレノアの本音としては、この姿をもう少し愛でていたいところではあるけれど、婚約者が可憐な美少女のままではさすがに不味いだろう。

「い、嫌……っ、こんな、女同士での口づけなんて、無理……っ！」
　涙目でぷるぷると震えながら、ガウンに顔を埋める姿は、エレノアの嗜虐心を煽る。
「そんな我儘言わないで、フィン」
　久しく使っていなかった愛称で呼びかけると、フィニアスは身体をぴくりと震わせて、おずおずとエレノアを見上げた。うるうるとした瞳の上目遣いが可愛すぎて、またエレノアは悶えそうになる。
　
「私がフィンに口づけをしたら、魔法は解けるのよ。フィンは、魔法を解きたくないの？」
「そんなことないけど……、でも俺は」
「え、その声と顔で俺とか言うのやめてください」
　思わず突っ込んだエレノアを見て、フィニアスは微妙な表情を浮かべる。

「エリーは、俺がこの姿のままの方が良さそうに聞こえるな」
「……外見と口調と声が合ってなさすぎて混乱しそうだけど、もちろん元に戻って欲しいと思ってますよ。そのために来たんだし。まぁ、元に戻る前に、しっかりとその姿は目に焼きつけておきたいけど」
　写真、撮っておきたいなぁとつぶやくと、フィニアスは青い顔をして首を振った。

「とりあえず、キスをしましょう。そうしたら、元の姿に戻れますよ」
「いや、でもほら、女同士の姿だと何か違うっていうか、その」
「大丈夫。誰も見てないし、私だって気にしないから」
「いやあぁぁ……っ」
「ちょっと、その顔で涙目で叫ばないで！新しい扉開いちゃいそうになるわ」
「や、だめだってば、エリー……っ」
「んもう、抵抗しないでくださいってば」
　逃げようとするフィニアスを捕まえようと、揉み合っていた時、フィニアスの腕がエレノアの唇を掠めた。
　その瞬間、フィニアスの身体がぼわんと白い煙に包まれる。