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双子の兄弟

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「あぁ、ブランシュ。あまりに遅いから迎えに行こうか迷っていたところだったよ」
 にこやかに出迎えてくれたのは、金の髪を肩まで伸ばした美しい男。神の子の称号を持つ彼は、神の加護を一身に受けた人だ。
 神に愛された証であるルビーのような赤い瞳を優しく細め、彼はブランシュの手を取った。
「……ジスラン、さま」
「震えてるの? ブランシュ。どうか怖がらないで。精一杯優しくすると誓う」
 そっと手を引かれ、ブランシュは寝台の上に座った。ジスランもすぐに、膝が触れ合うほどの近さで腰を下ろす。
 
――きっとジスランさまは優しくしてくださる。大丈夫、この方を愛せるわ。

 そう言い聞かせて、ブランシュは意識して口角を上げた。
 聖女は神の子の妻となり、純潔を捧げることが決まっている。ブランシュは今から、彼に抱かれるのだ。
 
 ブランシュの顔を見て、ジスランが優しく微笑んだ。そして、安心させるように肩を抱く。
「ほら、兄さんもそばにいるからね。ちゃんと、見守っていてもらおうね」
「えっ……?」
 耳元で囁かれた信じられない言葉に、ブランシュは小さく息をのんだ。
 ぎくしゃくとした動きでジスランの視線を追って寝台の足元の方を向けば、そこには一人の男が立っていた。
 まるで影のように無表情で立つ男は、ジスランと同じ顔をしている。違うのは、髪の長さと瞳の色。暗い海の底のような青い瞳が、じっとブランシュを見つめていた。
 彼は、ジスランの双子の兄だ。そして、ブランシュにとって何より愛しい大切な人。

「アルマンさま……」
 思わず漏れたブランシュのつぶやきにも、彼は表情を変えない。隣でジスランが、くすくすと小さく笑った。
「だめだよ、ブランシュ。きみを抱くのはこの僕だ。兄さんの名前なんて、呼んだりしないで」
「……っ」
 ジスランは、そっとブランシュを抱き寄せると腕の中に囲った。
「神殿に報告をする必要があるから、聖女との最初の交わりには立会人が求められるんだ。本来なら神殿長が立ち会うんだけど、よく知らない男に見られるのはブランシュも嫌かなと思って、アルマン兄さんに頼むことにしたんだよ」
 にこにこと笑うジスランには、何の悪意もなさそうだ。気心の知れたアルマンなら、ブランシュも緊張せずに済むだろうと、本気で思っているのだろうか。
 何の感情も宿さずに、ただ黙って見つめるアルマンの視線から逃れるように、ブランシュはぎゅっと目を閉じた。
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