【R18】偽りの夜 聖女は最愛の人の目の前で、同じ顔をした別の男に抱かれる

覚悟の夜

　ブランシュは、鏡の中の自分をじっと見つめた。緑の瞳に涙を溜めた女が、こちらを見つめ返している。
　真っ白な髪と同じくらいに顔色は悪く、唇の赤さだけが際立って見える。
　シルクのガウンの下に纏うのは、まるで花嫁衣装のような真っ白のミニドレス。デザインは美しいが、肌が透けるほどに薄い素材でできている。胸元のリボンを解けばすぐに脱げてしまうそれは、今夜のために用意された下着だ。

――わたしは、これからあの方に抱かれる……。
　　
　今は夏なのに、部屋は快温に保たれているのに、身体の震えが止まらない。まるで寒さを堪えるように、ブランシュはガウンの胸元を掻き合わせた。
　目を伏せれば、ぽろりと涙の粒が頬を滑り落ちていく。それをそっと拭い、ブランシュは固く唇を引き結んだ。

――仕方のないことよ。これが、聖女であるわたしの使命なのだから。

　諦めて受け入れると決めたのだ。もう逃げることなんて、できない。そんなことが、許されるはずもないけれど。
　ブランシュは、こくりと唾を飲み込むと、震える手で寝室へと続く扉をゆっくりと開けた。