【R18】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。―妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい!

夕月

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57 カミルの執着

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 兄の姿が見えなくなってから、ルフィナは思わずため息をついた。どっと疲れて身体が重たくなったような気すらする。
 そんなルフィナを抱き寄せながら、カミルは少しだけ申し訳なさそうに笑った。
「すまない、ルフィナ。もう少し穏便にするつもりだったんだが、顔を見るとやはり苛立ってしまって」
「大丈夫です。でも、お兄様のあんな顔、初めて見ました。何だかちょっと、気持ちがすっきりしてしまいました」
 笑ってそう言いながら、ルフィナの方も申し訳なさに眉を寄せる。
「私の方こそ、カミル様に謝らなければなりません。兄が大変失礼なことを……。本当に申し訳ありません」
「そんなこと、気にしてない。むしろ態度に出してくれていたからこそ、こうして縁を切ることができたんだから」
 ため息をつきながらカミルは、ホロウードでルフィナと初めて会った時にも、隣室でヴァルラムがアルデイルやカミルのことについて色々と言っていたのを聞いたのだと話す。内容までは教えてくれなかったが、聞くに耐えない暴言だったであろうことは想像に難くない。
「ホロウードは王太子が疎んでいた妹姫を追い出せてせいせいする、そして俺は『妖精姫』を手に入れた。両国に損なんてひとつもないだろう?」
 悪戯っぽい笑みを見せるカミルに、ルフィナも思わず小さく笑った。
「まぁ、もしもホロウードがきみを返せと言ってきたら困るけど」
「それはないと思います。兄はプライドの高い人ですもの。自業自得とはいえ、恥をかかされたこの国には二度と手を出してこないと思います」
「なら、安心だな。きみを奪われるくらいなら、俺はあの男の首を取ることにも躊躇いはないからな」
 にっこりと笑うカミルの表情は真剣で、万が一そんなことがあれば、彼は躊躇いなくヴァルラムを討つのだろう。
 それほどまでに強い想いを向けられているのだなと思いながら、ルフィナはカミルに強く抱きついた。
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