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48 カミルの不在
しおりを挟む身も心も結ばれてから、カミルの甘さには更に拍車がかかった。
それまでも何かと構ってくれてはいたが、最近は人目をはばからずルフィナに触れることが増えた。それは恐らく、カミルがルフィナを大切にし、愛していると周囲に印象づけるためでもあるのだろう。あれ以来サラハはルフィナの前にもカミルの前にも姿を見せないが、他にも似たようなことを考えて二人の間を裂こうとする者があらわれるかもしれないから。
「行ってらっしゃいませ、カミル様」
「うん。ルフィナは無理せず、ゆっくり休むように」
くしゃりと頭を撫でられて、ルフィナは微笑みながらうなずいた。
今日からカミルは隣国に行くことになっている。軍事演習を見学するのだそうで、さすがにそんな場への同伴は無理だろうとのカミルの配慮で、ルフィナはアルデイルで待つことになったのだ。
隣国に向かうのは国王夫妻とカミルで、アイーシャは城に残るという。ちなみに国王夫妻はどこに行くでも一緒なので、軍事演習のような荒っぽい場であっても王は妻を伴うらしい。
不在の期間は三日と聞いているが、カミルはそれでも離れ離れの期間が長すぎると不満げだ。おかげで昨晩は寝かせてもらえないほどに何度も抱かれ、ルフィナはベッドの上でカミルを見送ることになってしまった。
「部屋から出る時は、なるべくアイーシャと一緒に過ごすようにして。きみがひとりになると知って、サラハがまた何か企んでいるとも限らないから」
「分かりました」
「本当は一緒に連れて行きたいくらいだけど……」
名残惜しそうにルフィナの髪に口づけたカミルは、大きなため息をつくと立ち上がった。
「じゃあ、行ってくる。……あと一度だけキスしても?」
ドアの前まで行ったのに、やっぱりと言って戻ってきたカミルに笑いながら触れるだけのキスをして、ルフィナは彼を送り出した。
笑って見送ったものの、カミルが不在だと思うと途端に寂しくなってくる。ルフィナは服の下からネックレスを取り出してそっと口づけた。表に出して見せるようにすることはまだできていないけれど、最近は毎日身につけている。カミルの代わりに、このネックレスが常にそばにいてくれると思おうと考えて、指先でリリベルの花をなぞった。
カミルの言いつけ通り、ルフィナは基本的に部屋から出ずに彼の帰還を待とうと決めていた。寂しいだろうからと、アイーシャがお茶会に誘ってくれているので、そこに出かけることだけがここ数日の予定だ。
王家の面々にもカミルがサラハのことを伝えたので、アイーシャはカミル不在の間、ルフィナは自分が守ると約束してくれた。王妃に至っては、自分がサラハを紹介したせいだと、酷く気に病んでいたくらいだ。
もっとも、閨教育は代々兎獣人の一族が担っているので、どちらにしても年の近いサラハが担当することになっただろうが。
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