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41 初体験がまだって、どういうことですか
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ソファに座り、ルフィナはカミルにこれまでのことを説明した。
閨教育を受けたくて、王妃に相談してサラハを付けてもらったこと。サラハに教えられた閨の担当としての仕事、そしてカミルとの関係。
話を聞き終えたカミルは、頭を抱えて大きなため息をついた。
「あいつ……そんな嘘でルフィナを騙して」
「嘘、なんですか」
「当たり前だ、嘘に決まってる。あいつが最近何かと俺の部屋に来ようとしてたのは、それが理由か」
頭痛を堪えるように額を押さえながら、カミルはもう一度深く息を吐く。
さっきサラハがカミルの部屋にいたのも、自分を抱けばいいと言いに来ていたのだそうだ。ずっとルフィナを抱いていないことをどこかで聞きつけたらしい、とカミルはつぶやいた。もちろんその情報の出所はルフィナだろう。
当たり前だけど、断ったからな! と、カミルは身を乗り出すようにしてルフィナに言う。
「そもそも閨の担当なんて、昔の風習だ。うちの両親を見れば分かると思うけど、アルデイルは一夫一妻制だからな。ルフィナがアルデイルのしきたりに詳しくないから騙せると思ったんだろうが……。信じてくれ、俺にはルフィナだけだし、他の誰も抱いたことないし、抱こうと思ったことだってない」
「本当に?」
「神に誓ってもいい、サラハに触れたことなんてないし、もちろん触れさせたこともない。閨の担当なんて、あいつが勝手にでっちあげた出まかせだ。俺は、ルフィナ以外の女性に触れたことなんてない!」
勢いよく顔を上げたカミルは、語気を強めて叫ぶように言うとまっすぐにルフィナを見つめた。その目は真剣で、嘘を言っているようには見えない。
それでもルフィナの疑問はまだ解消したわけではない。
「でも、それならどうしてずっと抱いてくださらないんですか? 私が、初夜の時に色々とやらかしてしまったから……ですか」
サラハに指摘された数々の間違いを思い返して、ルフィナはうつむく。それを見てカミルはそっと手を握ってくれた。
「何ていうかあれは……俺も色々と動揺していて。だってきみはあまりに綺麗で可愛いし、うっかりすると襲いかかってしまいそうな自分が怖くて。それなのにきみは俺を押し倒すどころか慣らしもせずに挿入しようとするし……っ」
あの時のことを思い出したのか、カミルの頬が微かに赤くなる。握られた手を握り返して、ルフィナはカミルを見上げた。
「ずっと、謝罪しなければならないと思っていたんです。カミル様を押し倒してしまったこと、本当に申し訳ありませんでした。あんなはしたない真似は、もう二度としないと誓いますわ」
「え、それは別に構わないけど……むしろちょっと興奮したっていうか。押し倒されるのも悪くないなって思ったし」
「え?」
どこか嬉しそうなカミルの表情からは、押し倒されたことに対する嫌悪感は読み取れない。獅子獣人にとって組み敷かれることは、屈辱的なのではなかったのか。思わず怪訝な表情になったルフィナに気づいたのか、カミルは小さく咳払いをして表情を引き締めた。
「あの、サラハからは獅子獣人は組み敷かれることを嫌うと教えられたんですけど……違うのですか?」
「そのあたりは個人の嗜好によると思うな。獅子獣人だとかは関係ない。あいつは、ルフィナに嘘ばかり教えてたみたいだな。閨教育をするという立場を利用して、俺とルフィナの仲を引き裂こうとしていたということか」
ため息をついて、カミルはサラハに教わった内容を全て話すようにとルフィナに言う。
「それじゃあ、あの……初夜に一度しか抱いてくださらなかったことは? カミル様が肉体的に満足感を得られなかったから、なのでしょう?」
「……っと、それは」
ぐっと低く唸ったカミルは、ぐしゃぐしゃと自らの髪を掻きむしる。しばらく何やら唸ったあと、ちらりとルフィナを見た。
「ルフィナ、体調は?」
「え? あ、おかげさまで大丈夫です。元気になりました」
「それなら良かった。さすがに体調の悪いきみに、こんなことできないから」
そうつぶやいたカミルが、ルフィナの肩を掴むと体重をかけてソファに押しつけた。まるで押し倒されるような体勢に、抵抗も忘れてそのままずるずると身体を横たえてしまう。
「カミル様……?」
「あのな、ルフィナ。俺たちはまだ、ちゃんと性交を終えていない」
「へ?」
思わず間抜けな声が漏れた。だが、カミルはそれに笑うことなく真面目な表情でルフィナを見下ろしている。
「えっとあの、まだって、どういうことですか。だってシーツには確かに血が」
「あれは、ルフィナが慣らしもせずに挿入しようとしたからだ。あんなことをすれば、そりゃ血だって出る」
「慣らす、とは」
戸惑ってぱちぱちと瞬きを繰り返すルフィナを見て、カミルは困ったように眉尻を下げて笑った。
「ずっと言っていただろう、きみに痛い思いをさせたくないと。性交の際は、まず女性の身体を解すことから始めないといけないんだ。でないと、必要以上に苦痛を与えることになるから」
「解すって、何を……。柔軟体操をするということでしょうか」
首をかしげたルフィナを見て、カミルが小さく噴き出した。そして優しく慈しむような手が頬に触れたあと、ゆっくりと腰を撫で上げる。
「きみが俺のものを受け入れる場所は、先に慣らして解しておかないと痛みが強い。あの晩、何もせずに受け入れようとしたきみは、泣くほど痛がっていただろう」
「確かに、ものすごく痛かったですけど」
「だから、途中でやめたんだ。きみがシーツに流れた血を破瓜によるものだと勘違いしたから、それでいいかと思って」
「嘘、そんな……」
目を見開くルフィナを、カミルは苦笑しつつ見下ろすと顔を近づけた。
「だから、俺たちはまだちゃんと成し遂げてない。どうする、ルフィナ? 今から本当の初夜を始める?」
「本当の、初夜」
「とはいえ、俺も初めてだからね。どれくらいルフィナを気持ち良くさせてあげられるかは分からない。努力すると誓うけど」
「わ、私だってカミル様に気持ち良くなっていただけるよう頑張ります」
艶めいたカミルの囁きに負けないよう声をあげると、彼は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、移動しようか」
そう言ってカミルはルフィナの身体を抱き上げる。しっかりと抱きしめられているから怖くはないけれど、急に視界が変わって思わず彼の首に抱きつくと、カミルはもっと嬉しそうに笑った。
「やっぱりここじゃあ落ち着かないからね。俺たちの寝室に行こう」
「……はい」
抱き上げられているのでカミルとの距離が近いことが妙に気恥ずかしい。これから彼に抱かれるというのに、耐えられるだろうか。
「それにね、こんな無防備な格好で、しかも一人で城の廊下を歩くなんて、ありえない。誰かに見られたらどうするんだ」
少し怒ったような口調で、カミルがこつんと額をぶつけてくる。軽くにらんだその表情は、怒っているのに優しい。
「だ、誰にも会わなかったです」
慌てて首を振ると、カミルはにこりと笑った。だけどまだどこか機嫌が悪そうだ。
「それは良かった。誰かにルフィナのこんな姿を見られていたら、俺はそいつを許せなくなる。きみの無防備な姿を見ていいのは、俺だけだ」
「……っ」
執着を感じさせるカミルの言葉に、鼓動がどんどん速くなっていく。真っ赤になっているであろう頬に掠めるようなキスをひとつ落とすと、カミルはゆっくりと歩き出した。
閨教育を受けたくて、王妃に相談してサラハを付けてもらったこと。サラハに教えられた閨の担当としての仕事、そしてカミルとの関係。
話を聞き終えたカミルは、頭を抱えて大きなため息をついた。
「あいつ……そんな嘘でルフィナを騙して」
「嘘、なんですか」
「当たり前だ、嘘に決まってる。あいつが最近何かと俺の部屋に来ようとしてたのは、それが理由か」
頭痛を堪えるように額を押さえながら、カミルはもう一度深く息を吐く。
さっきサラハがカミルの部屋にいたのも、自分を抱けばいいと言いに来ていたのだそうだ。ずっとルフィナを抱いていないことをどこかで聞きつけたらしい、とカミルはつぶやいた。もちろんその情報の出所はルフィナだろう。
当たり前だけど、断ったからな! と、カミルは身を乗り出すようにしてルフィナに言う。
「そもそも閨の担当なんて、昔の風習だ。うちの両親を見れば分かると思うけど、アルデイルは一夫一妻制だからな。ルフィナがアルデイルのしきたりに詳しくないから騙せると思ったんだろうが……。信じてくれ、俺にはルフィナだけだし、他の誰も抱いたことないし、抱こうと思ったことだってない」
「本当に?」
「神に誓ってもいい、サラハに触れたことなんてないし、もちろん触れさせたこともない。閨の担当なんて、あいつが勝手にでっちあげた出まかせだ。俺は、ルフィナ以外の女性に触れたことなんてない!」
勢いよく顔を上げたカミルは、語気を強めて叫ぶように言うとまっすぐにルフィナを見つめた。その目は真剣で、嘘を言っているようには見えない。
それでもルフィナの疑問はまだ解消したわけではない。
「でも、それならどうしてずっと抱いてくださらないんですか? 私が、初夜の時に色々とやらかしてしまったから……ですか」
サラハに指摘された数々の間違いを思い返して、ルフィナはうつむく。それを見てカミルはそっと手を握ってくれた。
「何ていうかあれは……俺も色々と動揺していて。だってきみはあまりに綺麗で可愛いし、うっかりすると襲いかかってしまいそうな自分が怖くて。それなのにきみは俺を押し倒すどころか慣らしもせずに挿入しようとするし……っ」
あの時のことを思い出したのか、カミルの頬が微かに赤くなる。握られた手を握り返して、ルフィナはカミルを見上げた。
「ずっと、謝罪しなければならないと思っていたんです。カミル様を押し倒してしまったこと、本当に申し訳ありませんでした。あんなはしたない真似は、もう二度としないと誓いますわ」
「え、それは別に構わないけど……むしろちょっと興奮したっていうか。押し倒されるのも悪くないなって思ったし」
「え?」
どこか嬉しそうなカミルの表情からは、押し倒されたことに対する嫌悪感は読み取れない。獅子獣人にとって組み敷かれることは、屈辱的なのではなかったのか。思わず怪訝な表情になったルフィナに気づいたのか、カミルは小さく咳払いをして表情を引き締めた。
「あの、サラハからは獅子獣人は組み敷かれることを嫌うと教えられたんですけど……違うのですか?」
「そのあたりは個人の嗜好によると思うな。獅子獣人だとかは関係ない。あいつは、ルフィナに嘘ばかり教えてたみたいだな。閨教育をするという立場を利用して、俺とルフィナの仲を引き裂こうとしていたということか」
ため息をついて、カミルはサラハに教わった内容を全て話すようにとルフィナに言う。
「それじゃあ、あの……初夜に一度しか抱いてくださらなかったことは? カミル様が肉体的に満足感を得られなかったから、なのでしょう?」
「……っと、それは」
ぐっと低く唸ったカミルは、ぐしゃぐしゃと自らの髪を掻きむしる。しばらく何やら唸ったあと、ちらりとルフィナを見た。
「ルフィナ、体調は?」
「え? あ、おかげさまで大丈夫です。元気になりました」
「それなら良かった。さすがに体調の悪いきみに、こんなことできないから」
そうつぶやいたカミルが、ルフィナの肩を掴むと体重をかけてソファに押しつけた。まるで押し倒されるような体勢に、抵抗も忘れてそのままずるずると身体を横たえてしまう。
「カミル様……?」
「あのな、ルフィナ。俺たちはまだ、ちゃんと性交を終えていない」
「へ?」
思わず間抜けな声が漏れた。だが、カミルはそれに笑うことなく真面目な表情でルフィナを見下ろしている。
「えっとあの、まだって、どういうことですか。だってシーツには確かに血が」
「あれは、ルフィナが慣らしもせずに挿入しようとしたからだ。あんなことをすれば、そりゃ血だって出る」
「慣らす、とは」
戸惑ってぱちぱちと瞬きを繰り返すルフィナを見て、カミルは困ったように眉尻を下げて笑った。
「ずっと言っていただろう、きみに痛い思いをさせたくないと。性交の際は、まず女性の身体を解すことから始めないといけないんだ。でないと、必要以上に苦痛を与えることになるから」
「解すって、何を……。柔軟体操をするということでしょうか」
首をかしげたルフィナを見て、カミルが小さく噴き出した。そして優しく慈しむような手が頬に触れたあと、ゆっくりと腰を撫で上げる。
「きみが俺のものを受け入れる場所は、先に慣らして解しておかないと痛みが強い。あの晩、何もせずに受け入れようとしたきみは、泣くほど痛がっていただろう」
「確かに、ものすごく痛かったですけど」
「だから、途中でやめたんだ。きみがシーツに流れた血を破瓜によるものだと勘違いしたから、それでいいかと思って」
「嘘、そんな……」
目を見開くルフィナを、カミルは苦笑しつつ見下ろすと顔を近づけた。
「だから、俺たちはまだちゃんと成し遂げてない。どうする、ルフィナ? 今から本当の初夜を始める?」
「本当の、初夜」
「とはいえ、俺も初めてだからね。どれくらいルフィナを気持ち良くさせてあげられるかは分からない。努力すると誓うけど」
「わ、私だってカミル様に気持ち良くなっていただけるよう頑張ります」
艶めいたカミルの囁きに負けないよう声をあげると、彼は嬉しそうに笑った。
「じゃあ、移動しようか」
そう言ってカミルはルフィナの身体を抱き上げる。しっかりと抱きしめられているから怖くはないけれど、急に視界が変わって思わず彼の首に抱きつくと、カミルはもっと嬉しそうに笑った。
「やっぱりここじゃあ落ち着かないからね。俺たちの寝室に行こう」
「……はい」
抱き上げられているのでカミルとの距離が近いことが妙に気恥ずかしい。これから彼に抱かれるというのに、耐えられるだろうか。
「それにね、こんな無防備な格好で、しかも一人で城の廊下を歩くなんて、ありえない。誰かに見られたらどうするんだ」
少し怒ったような口調で、カミルがこつんと額をぶつけてくる。軽くにらんだその表情は、怒っているのに優しい。
「だ、誰にも会わなかったです」
慌てて首を振ると、カミルはにこりと笑った。だけどまだどこか機嫌が悪そうだ。
「それは良かった。誰かにルフィナのこんな姿を見られていたら、俺はそいつを許せなくなる。きみの無防備な姿を見ていいのは、俺だけだ」
「……っ」
執着を感じさせるカミルの言葉に、鼓動がどんどん速くなっていく。真っ赤になっているであろう頬に掠めるようなキスをひとつ落とすと、カミルはゆっくりと歩き出した。
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