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34 思い出だけは
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しばらくぼんやりとソファに座っていたルフィナは、のろのろと立ち上がると窓を開けた。吹き込んでくる風がアルゥの甘い香りをどこかにやってくることを願いながら、風に当たる。
サラハの勝ち誇った顔が頭から離れない。これからは、カミルとサラハが寄り添う様子をそばで見ることになるのだろうか。
カミルに抱いてもらうためにと努力していたはずなのに、こんなことになるなんて。閨教育を受けたいなどと言い出さなければ、サラハのことも知らずに済んだはずなのに。
「最初から、政略結婚だもの。愛されたいと望むこと自体が、無理だったんだわ」
ぽつりとつぶやいて、ルフィナは込み上げた涙を何度も瞬きすることで堪える。一度泣いてしまったら、もう立ち直れないような気がした。
宝石箱の中にしまったネックレスを見つめ、ルフィナは唇を噛む。嬉しかったのに、大切にしていたのに、同じものをサラハに贈るなんて。
「だけど、これをいただいたときの思い出だけは……私のものよ」
記念だと笑ったカミルの笑顔も、自分のことを思い出して欲しいから贈るのだと囁いた言葉も、あの時は嘘ではないと信じられた。思い出に縋って生きていくことになろうとも、このネックレスだけはカミルとの幸せな記憶の記念として大切にしようと決めて、ルフィナはそっとネックレスを首からかけた。
サラハの勝ち誇った顔が頭から離れない。これからは、カミルとサラハが寄り添う様子をそばで見ることになるのだろうか。
カミルに抱いてもらうためにと努力していたはずなのに、こんなことになるなんて。閨教育を受けたいなどと言い出さなければ、サラハのことも知らずに済んだはずなのに。
「最初から、政略結婚だもの。愛されたいと望むこと自体が、無理だったんだわ」
ぽつりとつぶやいて、ルフィナは込み上げた涙を何度も瞬きすることで堪える。一度泣いてしまったら、もう立ち直れないような気がした。
宝石箱の中にしまったネックレスを見つめ、ルフィナは唇を噛む。嬉しかったのに、大切にしていたのに、同じものをサラハに贈るなんて。
「だけど、これをいただいたときの思い出だけは……私のものよ」
記念だと笑ったカミルの笑顔も、自分のことを思い出して欲しいから贈るのだと囁いた言葉も、あの時は嘘ではないと信じられた。思い出に縋って生きていくことになろうとも、このネックレスだけはカミルとの幸せな記憶の記念として大切にしようと決めて、ルフィナはそっとネックレスを首からかけた。
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