上 下
24 / 67

24 閨の担当者の役目

しおりを挟む
「ですから、それまでの間はわたくしが殿下のお相手を務めさせていただきますね」
「え?」
 聞き間違いかと眉を顰めるものの、サラハはにこにこと笑みを崩さない。
「あの、サラハ。もう一度……いいかしら。今、何て?」
「えぇ、殿下がルフィナ様を抱きたいと口にされるまでは、わたくしが殿下のことをお慰めいたします」
「どういう、こと?」
「あら、ホロウードにはない習慣ですか? アルデイルでは、閨の担当者が王家の方々をお慰めすることになっているのです。獅子獣人はとても性欲が強いですから。特にルフィナ様は人族でらっしゃるし、体力的にも獣人に劣るでしょう」
「でも、そんなのって……」
「あぁ、ご安心ください。殿下が望まれない限りは、口でのご奉仕にて務めさせていただきますから。万が一、殿下の子種をいただくようなことになったら、お世継ぎ問題にも発展しかねませんもの」
 にこやかに告げるサラハの表情に一切の曇りはなく、当然のことと考えているようだ。カミルが他の女性を抱くよりはいいと、受け入れるべきなのだろうか。
 そういえば、初夜に口淫を拒否されたことをルフィナは思い出す。
「そうそう、ルフィナ様が口での奉仕を申し出られたことも、間違いのひとつですわ」
 まるでルフィナの頭の中を読んだように、サラハが指をまた立てた。
「そう、なの?」
「基本的には、閨の担当がお慰めする際の方法ですもの。ホロウードからいらした大切な花嫁様に、そのような真似をさせられませんわ。殿下も、そうお考えになってルフィナ様をお止めになったのだと思います」
「あぁ、私ったら本当に色々とやらかしてしまったのね……。やっぱりもっとちゃんと閨のことをお勉強してきたら良かったわ」
 頭を抱えるルフィナの肩を、サラハは優しく抱いてくれた。甘い香りがいっそう濃くなる。
「わたくしの方からも、ルフィナ様のことをそれとなくお話しするようにいたしましょう。殿下も、ルフィナ様を嫌っているわけではないのですから」
「そうね。どうかお願いね、サラハ」
「もちろんです。わたくしは、ルフィナ様の閨の指導係であり、殿下の閨の担当ですもの。殿下とルフィナ様がうまくいくようにと祈っております」
 ルフィナの手を握って力強くそう言ってくれるサラハは、心からルフィナのことを心配してくれているようだ。優しく可愛らしいこの人になら、カミルのことを託してもいいのかもしれないと思い、ルフィナはうなずいた。少し胸の奥が疼くことには、気づかないふりをした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】国王陛下はずっとご執心です〜我慢して何も得られないのなら、どんな手を使ってでも愛する人を手に入れよう〜

まさかの
恋愛
濃厚な甘々えっちシーンばかりですので閲覧注意してください! 題名の☆マークがえっちシーンありです。 王位を内乱勝ち取った国王ジルダールは護衛騎士のクラリスのことを愛していた。 しかし彼女はその気持ちに気付きながらも、自分にはその資格が無いとジルダールの愛を拒み続ける。 肌を重ねても去ってしまう彼女の居ない日々を過ごしていたが、実の兄のクーデターによって命の危険に晒される。 彼はやっと理解した。 我慢した先に何もないことを。 ジルダールは彼女の愛を手に入れるために我慢しないことにした。 小説家になろう、アルファポリスで投稿しています。

冷酷な兄が連れてきたのは竜人の王子でした

能登原あめ
恋愛
* 幸せな竜人のつがいものです。R18は本編終了後となります。 レナの兄は残酷なことを好む性格で、カードゲームで負けた相手を連れてきて鞭で打つ。 翌日こっそり怪我の手当てをするのがレナの日常。 ある日、褐色の肌を持ち、金色の髪と瞳の顔の綺麗な男が連れられてきた。 ほの暗いスタートとなりますが、終盤に向けてほのぼのです。 * 本編6話+R含む2話予定。 (Rシーンには※印がつきます) * コメ欄にネタバレ配慮しておりませんので、ご注意下さい。 * Canvaさまで作成した画像を使用しております。

【R18】青き竜の溺愛花嫁 ー竜族に生贄として捧げられたと思っていたのに、旦那様が甘すぎるー

夕月
恋愛
聖女の力を持たずに生まれてきたシェイラは、竜族の生贄となるべく育てられた。 成人を迎えたその日、生贄として捧げられたシェイラの前にあらわれたのは、大きく美しい青い竜。 そのまま喰われると思っていたのに、彼は人の姿となり、シェイラを花嫁だと言った――。 虐げられていたヒロイン(本人に自覚無し)が、竜族の国で本当の幸せを掴むまで。 ヒーローは竜の姿になることもありますが、Rシーンは人型のみです。 大人描写のある回には★をつけます。

【R18】素直になれない私が、得体の知れない薬のおかげで幼馴染との距離を強引に縮めた話。

夕月
恋愛
薬師のメルヴィナは、かつてないほどに焦っていた。ちょっとした正義感を発揮した結果、催淫剤を飲んでしまったのだ。 優秀な自分なら、すぐに解毒剤を調合できると思っていたのに、思った以上に身体に薬が回るのが早い。 どんどん熱くなる身体と、ぼんやりとしていく思考。 快楽を求めて誰彼構わず押し倒しそうなほどに追い詰められていく中、幼馴染のフィンリーがあらわれてメルヴィナは更に焦る。 顔を合わせれば口喧嘩ばかりしているけれど、本当はずっと好きな人なのに。 想いを告げるどころか、発情したメルヴィナを見てきっとドン引きされるはずだ。 ……そう思っていたのに、フィンリーは優しい笑みを浮かべている。 「手伝うよ」 ってそれは、解毒剤の調合を? それとも快楽を得るお手伝い!? 素直になれない意地っ張りヒロインが、催淫剤のおかげで大好きな人との距離を縮めた話。 大人描写のある回には★をつけます。

【完結済み】湖のほとりの小屋で、女は昼夜問わない休暇中。<R-18>

BBやっこ
恋愛
『[R18] オレ達と番の女は、巣篭もりで愛欲に溺れる。』 の女視点で短く、短いお話。 休暇に湖のほとり 貴族の屋敷から離れたボート小屋<といっても平民から見ると1軒屋> 3人が、いや2人と1匹が休暇中。 1人休めていない模様を描く。エロ展開。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

狼王のつがい

吉野 那生
恋愛
2020.4.12修正 私は「この世界」を何も知らなかった。 迷い込んだ世界で出会い、傷つき、迷い、そして手に入れたもの…。  * 一部、残酷であったり暴力的、性的な表現があります。 そのような話のタイトルには★がつきますので、苦手な方は飛ばしてお読みください。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

処理中です...