【R18】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。―妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい!

夕月

文字の大きさ
上 下
23 / 67

23 初夜でやらかしたこと

しおりを挟む
 言葉を選びつつ、ルフィナはサラハに初夜での出来事を話した。聞き終えると、彼女はふうっと長いため息をつく。それに合わせて白い垂れ耳がふるふると揺れるのが可愛らしい。
「事情は、分かりました」
 しばらく黙ったあと、サラハは重々しくうなずいた。その口調に、ルフィナはやはり何か問題があったのだろうかと胸が騒ぐのを感じた。
「大変恐れながら、ルフィナ様は初夜にて致命的な間違いをいくつか犯してしまわれたようです」
「致命的な間違い……」
 やらかしたことに少し心当たりはあるが、致命的と言われるほどに酷いものだったのだろうか。
 眉を顰めたルフィナを見て、サラハは困ったような笑みを浮かべると指を一本立てた。
「まずひとつ。恐らくカミル殿下は、初夜の場において肉体的な満足感を充分に得られていなかったと推測されます」
「満足感……」
「ルフィナ様が仰るように、短時間で終えられたということは、一刻も早く終わらせたかったという思いのあらわれかと」
 サラハの言葉に、ルフィナはうなだれた。一方的に、ルフィナから抱いてもらったことに礼を言って終わらせた自覚はある。本来ならば、一度で満足できなければ二度三度と行為に及ぶというが、カミルは一度で終わらせると仕事に戻ってしまった。きっと、複数回抱きたいと思うほどにルフィナの身体に満足できなかったのだろう。
 自分の痛みに必死になりすぎて、カミルの快楽を考えなかったルフィナのミスだ。
 うつむくルフィナを気遣いながらも、サラハはすらりとした細い指をもう一本立てる。
「そして二つ目。これが特に致命的なのですが、ルフィナ様がカミル殿下を押し倒されたことです」
「だ、だめだった……?」
 うかがうようにサラハを見上げると、彼女は眉を下げつつうなずいた。
「獅子獣人は高貴でプライドが高いのです。組み敷かれることを屈辱と捉えます。人族の間ではそういった体位が存在することも存じておりますが、ルフィナ様は受け身で殿下の行動にお任せするべきでしたね」
「……っ私、とんでもないことをしてしまったのね。カミル様が気分を害されるのは当然だわ」
 これ以上ないほどに落ち込んで、ルフィナは再びうつむく。思い返してみれば、カミルがルフィナに何度も制止の声をあげていた。本来ならその場で不敬だと切り捨てられていたかもしれないのに、そうしなかったのはきっとカミルの優しさだ。
「どうすればいいの、今から私にできることはあるのかしら。まずはカミル様にちゃんと謝罪しなければならないわね」
 落ち込みつつもできることからしていこうと考えて、ルフィナは顔を上げる。落ち込んで後悔ばかりしていても、何も生まれない。少しでも状況を改善するために、何をすればいいか考えなければ。
 そんなルフィナを見て、サラハはゆっくりと首を振った。
「謝罪は、やめておいたほうがいいでしょう」
 その言葉に、ルフィナは首をかしげる。彼女は困ったように頬に手を当てつつ、ゆっくりと口を開く。
「組み敷かれたという事実は、カミル殿下にとって辱められたという記憶です。謝罪することで、その忌まわしい記憶を再び蘇らせることになってしまいますから」
「そう……ね、カミル様にとっては思い出したくもない出来事だもの。これからの行動で挽回するしかないということね」
 ため息をつきつつ、ルフィナはうなずいた。
「それでも、とんでもない失礼をした私に変わらず接してくれるなんて、カミル様はやっぱりお優しい方だわ」
「えぇ、ルフィナ様はホロウードからいらした大切な花嫁様ですもの。閨のことはともかく、大切にしてくださるでしょう」
「今でも充分良くしていただいているのに、抱いていただきたいなんて申し出るのは過ぎた願いかしら」
 考え込むルフィナを見て、サラハは優しい微笑みを浮かべた。
「ひとまず、ルフィナ様の方から抱いていただきたいと殿下に申し出るのは控えておいた方が良いかと。殿下のお気持ちがルフィナ様に向くまで、しばし待ちの姿勢が大事ですわ」
「そうよね、私ったらつい前のめりになってしまうところがあるから気をつけなくちゃ。待ちの姿勢ね……」
 いずれ子を成す必要があるのだから、カミルが二度とルフィナに触れないということはないだろう。その日が来るまで、ルフィナは待つべきなのだろう。
 ふむふむとうなずいたルフィナに、サラハはそれでいいのだというように微笑んだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...