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22 閨の指導係
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王妃に閨教育を受けたいと申し出てから数日後、ルフィナのもとに訪問者があった。
「はじめまして、ルフィナ様。サラハと申します。本日より、ルフィナ様の閨の指導係としてお勤めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」
そう言って微笑んだのは、兎獣人の女性だった。くるくるとしたピンク色の巻き毛に、白い垂れ耳が愛らしい。動くたびにふわりと甘い果実のような香りがして、同性であるルフィナから見てもとても可愛らしい人だった。
閨の教育係という役職のせいだろうか、そこまで露出は多くないのに匂い立つような色気を感じる。豊満な胸のふくらみに、思わず目が吸い寄せられてしまいそうだ。
「どうぞよろしくね。あまりアルデイルのことを学ばずに嫁いできたので、もっとお勉強をしたいと思っているの」
「わたくしにできることであれば、何でもいたします。早速ですが、本日の講義に移りましょう」
ソファに座ったところで、サラハはそばに控えるイライーダを見て微かに眉を顰めた。
「閨教育は非常に繊細な内容を含みます。恐れ入りますが、ルフィナ様とわたくし、二人きりにしていただけますか」
ホロウードでの閨教育の際はイライーダも同席していることが多かったが、ここはアルデイル。この国の流儀に従うべきだろう。隣室で控えているよう命じると、イライーダはうなずいて退室した。
「それではあらためまして。ルフィナ様は具体的にどのようなことをお知りになりたいとお考えですか?」
サラハの問いに、ルフィナは小さく首をかしげて考え込む。
「そうね……。私、アルデイルに来るまで獣人族のことをよく知らなかったの。だから、まずは一般的な性行為の仕方について一から学びたいわ」
「えぇと、ルフィナ様はカミル殿下とその……初夜を終えられているのでは?」
「それはそうなんだけど、あのね……、実はそれ以降、まだカミル様に抱いていただいていないの」
恥を忍んで声をひそめて打ち明けたルフィナを見て、サラハは大きな黒い目を見開いた。驚いたように何度かぱちぱちと瞬きをしたあと、彼女はにっこりと笑みを浮かべる。
「では、再びカミル様に抱いていただきたいと、そういうことですね」
「えぇ、そうね。そうなるかしら」
「かしこまりました。では、初夜の場でお二人がどのようなことをなさったのか、お聞かせくださいますか?」
「え……っと、それは」
ルフィナは思わず言葉に詰まる。だって、初夜のことは二人きりの秘密にしようとカミルと約束したのだ。勝手に他人に話すことなんてできない。
「ごめんなさい、初夜でのことは……あの、誰にも口外しないようにとカミル様に言われているの」
「ですが、閨での悩み事を解決するのもわたくしの仕事です。お聞かせいただかないとルフィナ様がどのようなことで悩まれているか、助言のしようもありませんわ」
身を乗り出したサラハは、ルフィナの手を優しく握りしめた。その瞬間、ふわりと甘い香りが漂う。
「ご心配なく、わたくしには守秘義務がございます。職務上知りえたことは、決して口外いたしません。もちろん、カミル様にわたくしの方から何か申し上げるようなことはないとお約束します。ですから、お聞かせくださいませ」
まっすぐに見つめる瞳は、真摯にルフィナの悩みと向き合おうとしてくれているようだ。
しばらく逡巡したあと、ルフィナはゆっくりとうなずいた。
「分かったわ。じゃあ、聞いてくれる?」
「はじめまして、ルフィナ様。サラハと申します。本日より、ルフィナ様の閨の指導係としてお勤めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」
そう言って微笑んだのは、兎獣人の女性だった。くるくるとしたピンク色の巻き毛に、白い垂れ耳が愛らしい。動くたびにふわりと甘い果実のような香りがして、同性であるルフィナから見てもとても可愛らしい人だった。
閨の教育係という役職のせいだろうか、そこまで露出は多くないのに匂い立つような色気を感じる。豊満な胸のふくらみに、思わず目が吸い寄せられてしまいそうだ。
「どうぞよろしくね。あまりアルデイルのことを学ばずに嫁いできたので、もっとお勉強をしたいと思っているの」
「わたくしにできることであれば、何でもいたします。早速ですが、本日の講義に移りましょう」
ソファに座ったところで、サラハはそばに控えるイライーダを見て微かに眉を顰めた。
「閨教育は非常に繊細な内容を含みます。恐れ入りますが、ルフィナ様とわたくし、二人きりにしていただけますか」
ホロウードでの閨教育の際はイライーダも同席していることが多かったが、ここはアルデイル。この国の流儀に従うべきだろう。隣室で控えているよう命じると、イライーダはうなずいて退室した。
「それではあらためまして。ルフィナ様は具体的にどのようなことをお知りになりたいとお考えですか?」
サラハの問いに、ルフィナは小さく首をかしげて考え込む。
「そうね……。私、アルデイルに来るまで獣人族のことをよく知らなかったの。だから、まずは一般的な性行為の仕方について一から学びたいわ」
「えぇと、ルフィナ様はカミル殿下とその……初夜を終えられているのでは?」
「それはそうなんだけど、あのね……、実はそれ以降、まだカミル様に抱いていただいていないの」
恥を忍んで声をひそめて打ち明けたルフィナを見て、サラハは大きな黒い目を見開いた。驚いたように何度かぱちぱちと瞬きをしたあと、彼女はにっこりと笑みを浮かべる。
「では、再びカミル様に抱いていただきたいと、そういうことですね」
「えぇ、そうね。そうなるかしら」
「かしこまりました。では、初夜の場でお二人がどのようなことをなさったのか、お聞かせくださいますか?」
「え……っと、それは」
ルフィナは思わず言葉に詰まる。だって、初夜のことは二人きりの秘密にしようとカミルと約束したのだ。勝手に他人に話すことなんてできない。
「ごめんなさい、初夜でのことは……あの、誰にも口外しないようにとカミル様に言われているの」
「ですが、閨での悩み事を解決するのもわたくしの仕事です。お聞かせいただかないとルフィナ様がどのようなことで悩まれているか、助言のしようもありませんわ」
身を乗り出したサラハは、ルフィナの手を優しく握りしめた。その瞬間、ふわりと甘い香りが漂う。
「ご心配なく、わたくしには守秘義務がございます。職務上知りえたことは、決して口外いたしません。もちろん、カミル様にわたくしの方から何か申し上げるようなことはないとお約束します。ですから、お聞かせくださいませ」
まっすぐに見つめる瞳は、真摯にルフィナの悩みと向き合おうとしてくれているようだ。
しばらく逡巡したあと、ルフィナはゆっくりとうなずいた。
「分かったわ。じゃあ、聞いてくれる?」
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