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18 アルデイルの街で
しおりを挟む食事を終えたあと、カミルに手を引かれて王都を見て回る。
アルデイルは煉瓦造りの建物が多く、街並みは色鮮やかだ。白と黒で統一されていたホロウードの街並みも整然としていて美しかったけれど、ルフィナは賑やかなアルデイルの雰囲気の方が好きだなと思った。
「あれ、カミル様だ!」
「花嫁様も一緒!」
「うちの店にも寄って行ってよ、カミル様」
少し街を歩くだけで、カミルは色々な人に声をかけられる。彼が国民に慕われていることがよく分かって微笑ましいし、同時にルフィナにも皆が笑顔で声をかけてくれるのが嬉しい。しかも彼らは皆、ふわふわの耳や尻尾がついているのだ。特に小さな子供の愛らしさといったら格別で、ルフィナは思わず零れる笑みを堪えきれずにいた。
アルデイルに来てからは、誰もがルフィナに笑顔を向けてくれる。ホロウードではほとんど人前に出ることはなかったし、王宮内でもひっそりと息を潜めて暮らしていたから、気兼ねなく外を出歩けるこの環境が楽しくて仕方がない。
「今日は、ルフィナと初めてのデートなんだ。だから邪魔しないでくれ」
そんなことをカミルが言うと、周囲を取り囲んでいた国民たちはくすくすと笑いながらうなずいた。
「そりゃあ邪魔しちゃ悪いね。カミル様、花嫁様、楽しんで」
「花嫁様がアルデイルを気に入ってくれますように」
「カミル様、しっかりね! デートの時にはお花を贈るのがいいのよ。最後は夕日の綺麗な場所でキスをするの!」
小さな子供にまでアドバイスをされるのを見て、ルフィナは思わず肩を震わせてしまう。
とはいえ、結局少し歩くだけでカミルが誰かに声をかけられてしまうので、二人は相談して変装をすることにした。
昼食を食べた店の個室には、時々カミルがお忍びで出かける時の変装用の衣装が用意されているという。
「普段は気ままに街も歩くんだが、ああやって延々と話しかけられることも多くてな。だから時々は、こうして顔を隠して出かけるんだ」
「ふふ、それだけカミル様が皆さんに慕われている証拠ですね」
「というか、王子だとは思われてない気がするんだが……」
そんなことをつぶやきながら、カミルは帽子を深くかぶって金の髪を隠す。何か細工がされているのか、帽子から飛び出た耳は、黒い色に変わっていた。確かにこれならカミルだと気づかれることもないだろう。
ルフィナも髪色が目立つので、ショールを頭から羽織ることで顔と髪を隠すことになった。アルデイルの女性は日除けとしてショールを羽織ることが多いそうなので、ルフィナの変装も目立たないだろう。
鏡の前に並んで立ってみても、カミルとルフィナだと気づく人はいなさそうだ。
「これでゆっくりと見て回れるな」
そう言って手を差し出したカミルに、ルフィナは笑顔でうなずいた。
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